産業衛生学会の報告 その22015年06月12日 10:31

 さて、日本産業衛生学会の報告です。

 次に参加したのは、シンポ10「夜勤交替勤務の新しい課題」でした。

 産業医大の推計によると、「労働者健康調査」などから、H24年度の雇用労働者の21.8%、1,200万人が深夜業に従事しており、11.6%が何らかのシフト労働に従事しているとされています。
 これから分かるのは、シフト労働でない10%も深夜労働していると言うことです。550万人になります。

 それで、このシンポは、
①労働者の高齢化に対応した夜勤交替勤務による健康障害の予防
②若年者の交替勤務への就業初期での健康影響について
③勤務形態と口腔保健状況の関連性
④夜勤交代制勤務者の健康づくり活動~現状と課題
の四つの柱でした。口腔保健がちょっと変わった柱ですね。

①労働者の高齢化に対応した夜勤交替勤務による健康障害の予防では、まず、高齢化とはということで、55才以上の労働者を産業人口の高齢と考えることにしましたが、60歳以上の高齢者の労働力人口は、平成12年は約919万人でしたが、平成25年には1,250万人に増加しており、今後とも徐々に増加すると予想されています。
 平成25年の60~64歳の労働力率(年齢階級別の人口に占める労働力人口の割合)をみると男76.0%、女47.4%となっています。65才を過ぎるとさすがに男性でも30%以下になりますが。
 この高齢労働者のうち、深夜業に関わっているのは男性20%、女性30%といってました。
 また、これに関わって、ILO178号勧告(夜業)についても触れていました。詳しくは触れませんが、昼間の労働者と同じ労働であれば夜業では短縮するべきだとか、時間外労働はさせるべきでない、休息・食事時間を確保する、交替勤務では高齢者に特別な考慮、ベテラン労働者は昼間に移すべきなどなどです。

 高齢労働者と交替勤務を考えるときには、イ)不適応、ロ)疾病の重症化の二つの視点で考えることが必要で、年代では、若年者は朝が苦手で、夜勤でも眠気が多いという特徴があり、一方高齢者は、夜が苦手で、眠気を感じなくてもミスが多くなることが、作業能力を測定するPVTという検査法で分かっているそうです。
 ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)によると、日勤から夜勤に変わるときが一番睡眠不足になり、男性で40代、女性は30~40代で睡眠不足を感じています。
 これらの結果、寝酒をするのは3交代制呪う同社が一番多く、量も多くなってくる傾向にあります。
 今後の労働社会を考えると、「ルーティンフランツの9原則(次の勤務まで10時間以上あけるなど)」を意識する必要があると言うことでした。

②若年者の交替勤務への就業初期での健康影響について、では、3年以内の就業初期において、まず睡眠と生活リズムに変調があり、次に友人や家族関係が変化する。さらに生活習慣などの疾患が増大すると言うことが分かってきているようです。
 それは、運動する機会が少なくなる、飲酒量が多くなることが原因で、体重も5%以上増加するようです。食事がコンビニ食が多くなったり、野菜不足や高カロリーになるためです。
 これらは、ストレス状態にも影響し、交代制への不適応より、職場不適応が前面に出てくるという調査結果でした。
 ただ、男女でけっこう違いが出て、男性の9%が朝方なのに、女性では33%が朝方と言うことで、交替勤務で影響を受けやすいのは、男性若年労働者と言うことでした。

③勤務形態と口腔保健状況の関連性では、歯科健診の実施率が、20%以下で、歯科の問題は個人の問題と取られがちなのが一番問題とまず指摘しました。
 40代以降は特に歯周病や歯の喪失が多くなりますが、これは、環境因子が大きく影響しており、不規則な生活やストレスという意味で、勤務形態と関連するということでした。

 特徴的には外勤者に口内炎が多く、時間外が多くなると口渇がおきるため、口腔内の清潔が保たれない。特に50代以上は、プラークがたまっており、自浄作用も弱くなるため、歯周病になりやすく、歯周病菌は全身疾患やメタボに影響するのだから歯の健診も広げるべきだというのが趣旨でした。

④夜勤交代制勤務者の健康づくり活動~現状と課題は、東芝四日市工場の保健師の話で、活動量計で、睡眠もはかれるので、活用すべきだというような、一種の宣伝でしたが、女性の交替勤務者も増えているようで、交替勤務が当たり前の環境に産業保健がどうか変わるかでは、初期教育が重要とされました。
 また、交代制を労働者が除く要因には、金銭的なものもあるようで、その兼ね合いも視点としてみなければならないといってました。

 全体として、社会の24時間化に産業保健がどうか変わるかということだけで、24時間化はしかたのないことだと言うことには、一概に賛成できません。

 どうも、その1につづいて、産業衛生学会、とるにたらんか?という気持ちになってきました。
 じゃんじゃん。