第22回産業ストレス学会の報告 22014年12月04日 12:01

<就労者における発達障害の傾向とインターネット依存>

[背景] 近年、就労者のメンタlレヘルスにおいては、発達障害とその傾向についての理解が重要な要素とみなされつつある。一方で、インターネット依存頃向は、アルコール、薬物への依存傾向、ギャンブルや買い物への依存と並び、人々の心理的健康および、生産的能力に関わる重要な要素として近年注目を集めている。
 これまで、インターネットへの依存傾向に関連する要因として、様々な心理社会的要因、および生物学的要因が報告されてきた。その中で、発達障害の傾向とインターネットへの依存傾向の関連についても一定の知見が集積されつつある。
 今回、就労者の精神的健康に、発達障害の傾向およびインターネットへの依存傾向が与える影響を明らかにする事を目的として、適応障害の診断を受け治療中の就労者を対象に、予備的調査研究を行った。就労者の精神的健康度の低さが発達障害の傾向とネット依存傾向の双方に関連する事が予想された。

[方法] 一般診療所外来受診中で、適応障害の診断を受けている就労者を対象に調査票への記入を求めた。調査票はAQ(自閉症スペクトラム指数尺度) GUIP、GHQ-28およびECR_GO等からなり、提出をもって同意を得た。
 得られた結果について、SPSSを用いて統計解析を行った。なお、本研究は京都大学医の倫理委員会の承認を得て行った。

[結果]AQ総得点とインターネット依存傾向の間に有意な相関は認めなかった。AQ注意転換下位項目とインターネット依存傾向には相関を認めた。インターネット依存傾向と、GHQの不安項目とに有意な相関を認めた。

[考察]本研究においては、自閉症スペクトラム指数で評価される発達障害頃向のうち、特に注意転換(切り替え)の難しさと、インターネット依存との傾向が強く示唆された。また、精神的健康のうち不安の強さがインターネット依存に関連しており、就労者におけるインタ←ネット依存傾向と特性としての傾向および心理的健康に関連する傾向が明らかとなった。

2.ネット依存と精神症状の併存

AD/HD(注意欠陥・多動性障害)は100%
抑うつ症状 75%
敵意・攻撃性 66%
強迫症状 60%
不安症状 57%
にそれぞれの障害が見られた

3.尺度

AQ-J(自閉症傾向)
GPIUS2(ネット依存傾向)
GHQ-28(精神健康度)
を使用した。

4.結果

・注意転換困難は自閉症傾向における見通しの持ちにくさやこだわりの傾向、没頭性に関連する。
・注意転換困難はADHDにおける衝動性とも関連しており嗜癖行動の本質に関わる要素でもある。
・不安症状とネット依存との関連は広く報告されている。
・適応障害にある就労者においては、注意転換の困難さが不安症状とともにネット依存に影響を与えている。注意困難に視点をあてることは就労者のネット依存及び不安症状、不適応状態に改善につながるかもしれない。

※注意とは、特定の事象に気を向ける、気を付ける心的活動のことです。
 注意には、ある特定のものに注意を集中する「注意の集中機能」、あるものから他のものに注意を移す「注意の転換機能(こだわり)」、あるものに注意を向け続ける「注意の持続機能」、一度に2 つ以上のものに注意を向ける「注意の分配機能」、これらの機能を総合的に調整する「注意の総合調整機能」があります。
 注意の各機能を働かせるためには、一定以上の意識レベルが保たれている必要があります。
 したがって、ネット依存が疑われる場合には、「極度のこだわり」が強く見られることになります。

 また、一時話題になった「ゲーム脳」についても、特にファイティング系のゲームは、前頭前野に悪影響があるという研究もあり、すくなくとも10歳まではさせない方がよいといわれていますが、これも、若者の「キレやすい」ことに影響しているかもしれません。

 ということで、じゃんじゃん。