大人のための研修デザイン その12016年09月06日 13:31

 お久しぶりです。
 別に病気などをしていたわけではありませんが、テンションが下がっていまして、書く気にならなかっただけです。

 今回は、日頃私たちが企画する「研修」について、なるほどと思わせる記事がありましたので、要約してお知らせします。
 労働安全衛生分野に限らず、労働運動のなかで、研修会や学習会を企画することはいろいろありますし、「どうしようか」といつも悩むもんです。
 ただ、労働安全衛生で言うと、マンネリということはありません。なぜなら、人は「忘れる」ものだからです。大事なことや手順を伝えても二日あればその7割は忘れています。
 だから機会ある毎に同じ内容のものでも実施しなければならないのですが、参加する方は、「また同じ内容かよ」とか、「前に聞いたから今回はパス」などの反応になりますし、企画する方は、「前にやったから・・・」、「同じことをやると参加者が少なくなるかも」、「努力が足りないと思われるんじゃぁないか」などと思い悩みます。
 私も、どちらかというと、そっちの方ですが、よく考えると、聞く方も人が代わっているし、話す方も、例えばメンタルヘスのことで話すとすれば、ほんの一部しか話していなかったはずですよね。全部を丁寧にお話ししたらおそらく2日はかかるはずですから。そんなに時間をいただいたことは一度もありません。
 なのに、マンネリという言葉が恐ろしいというのは、案外被害妄想的なのかもしれません。

 それで、「大人のための研修デザイン」なわけです。以下はあるHPからの要約です。

第1回「あなたの研修は、どこがダメなのか?」

○「この研修、時間のムダ……? 」と思ったことはありませんか

 職場では、毎日のように、いろいろな研修が行われています。業務に直結する内容のほかにも、ハラスメント研修、コンプライアンス研修、メンタルヘルス研修、情報セキュリティの研修、管理職研修など、実にさまざまです。
 しかし、正直なところ、そうした研修を受ける時間がもったいないとか、面倒くさいと感じたことがある人も多いのではないでしょうか。また、研修中もずっとをPCを開いて別の仕事をしている人や、居眠りをしている人を見たことはありませんか。

○「研修なんて、無難にやりすごせばいい」って、本当?

 もしかして、多くの人が「研修なんて、適当にやり過ごせば良い」と、思っているのかもしれません。とりあえず無難に課題をこなし、アンケート用紙に、よかった、やや満足などと、あたりさわりのない回答を書き込んでおけば良いのだと、実際、多くの人がそう考えているのではないかと思います。

○研修後のアンケートが示す「満足度」のワナ

 研修の効果をはかる方法として、研修後にアンケート調査を行うのが一般的です。回収した結果を集計して「今回の研修は満足、または、やや満足と回答した人がを超えており、とても好評でした」などという報告したりします。
 しかし、この満足度という数字は、小手先のテクニックでいくらでも操作できるのです。たとえば、参加者が自分のことを話す時間を多く取ったり、グループワークを盛り上げるような工夫をしたり、飽きがこないよう楽しめる工夫をしたり、研修の最後をうまく盛り上げたりすると、参加者に「大切なことを学んだ」「ためになった」「楽しかった」と感じさせることができ、研修の満足度がぐんと高まります。

 また、こうした満足度の高さと、研修の目的が達成できたかどうかは、全く別であることが知られています。
 例えば、メンタルヘルス研修の目的は、参加者が自分自身のストレス対策をうまく行えるようにすることや、部下のメンタルヘルスケアをうまく行えるようになることです。いくら研修の満足度が高くても、そうした職場の問題解決に役立たなければ、研修の本来の目的は達成できないのです。

○なぜか研修の効果よりも満足度が重視される、本末転倒ぶり

 研修の効果を本当に正しく把握するためには、研修後の参加者の行動の変化を追跡調査する必要があり、とても手間がかかります。また、多くの人が「研修なんて、そんなに役に立たないものだ」と考えています。
 そのため、わざわざ時間と労力をかけて本来の効果を検証したりせず、満足度という、手軽に集計ができて、そこそこ良い結果が得られる指標が重宝されているのです。

○効果的な研修を実施するための「インストラクショナル・デザイン」

 企業の研修には、参加者全員分の人件費という大きなコストがかかっています。また、労働組合の主催する研修や学習会でも、諸経費がかかっていますから、そうしたコストに見合うだけの成果を出すためには、どんな工夫が必要なのでしょうか。これから6回の記事ではインストラクショナル・デザインという研究分野から、効果的な研修を行うヒントをいくつかご紹介します。研修を企画、作成するときの参考にしてもらえればと思います。

大人のための研修デザイン その22016年09月08日 09:51

第2回「理解浸透のための研修は失敗する」

 研修を行う目的は、知識やスキル、考え方、態度、あるいは行動や技術などを身につけてもらうことです。そうした目的を達成するために、講義、実技、ディスカッションや問題演習など、さまざまな活動を実施します。
 研修の目的が達成できたかどうかを確認するためには、何らかの確認テストを行います。例えば、学校教育では、授業の前後で小テストを行ったり、宿題を出したり、定期テストを行ったりして、生徒の理解度や到達度を測定しています。

○明確な到達目標と、評価基準を決めておくことが大前提

 大人の研修も、本来は、参加者が目標を達成したかどうかを確認する必要があります。その際には、誰でも同じように評価できるよう、到達目標と評価基準を具体的に決めておかなければなりません。
 到達目標と評価基準が決まると、研修にどのような学習内容を盛り込めばよいかが、だんだん明確になってきます。逆に言うと、到達目標と評価基準があいまいな研修は、目的がはっきりしない、ぼんやりした内容のものになってしまうのです。

○現場では「理解するだけ」では不十分

 よく「○○を理解すること」を目的に掲げた研修が行われます。しかし、実際には、そうした研修はあまり現場の役に立ちません。○○について知っていることと、ある状況で、適切な考え方ができて、適切な行動がとれるということは別物だからです。
 たとえば、長時間労働は健康に良くないと理解することと、実際に仕事が忙しいときに、長時間労働にならないような工夫ができることは、全く別のことです。もうひとつ例を挙げると、ハラスメントは良くないと理解することと、ハラスメントに発展しないよう、注意して適切に行動できることは、まったく別の目標なのです。

○具体的な行動についての目標を設定する

 研修の目標を設定するときには、なるべく、具体的に、行動についての目標を立てます。そのためには、○○を理解した上で、何ができるようになればよいかを考えるようにします。また、より現実的で、職場で役立つ目標にするためには、研修参加者の上司に、職場で問題になっていることや、この研修を通じて、部下にどんな行動を取れるようになって欲しいかをヒアリングしておきます。
 研修の目標が具体的になっていると、何を、どの順番で、どのように教えればよいかが明確になってきます。例えば、マニュアルを参照しながら作業することが求められている職場と、手順を暗記し、マニュアルなどを見ないで10分以内に作業を終えることが求められている職場とでは、実施する研修の内容が大きく変わってきます。

○到達目標がぼんやりしている研修は失敗する

 何かを理解してもらうための研修を行うこと、それ自体は悪いことではありません。しかし、何をどのように理解すればよいのか、また、理解した上で、参加者にどのような行動をとって欲しいのかという具体的な目標が明確になっていないと、研修の成果が職場で発揮されることはありません。到達目標が、行動レベルで具体的になっていない研修は、そもそも企画の段階で失敗しているも同然なのです。

大人のための研修デザイン その32016年09月09日 09:50

第3回「職場のニーズにこたえられない研修は無駄に終わる」

 いくらすばらしい講師を招いても、いくら内容が優れていても、参加者のニーズにこたえられていない研修は「現場では役に立たない」とか「時間の無駄だ」などと、冷ややかな目を向けられることがあります。今回は、職場のニーズにこたえるということについて説明していきます。

○研修を実施する側の都合を押しつけていないか

 現在、研修の多くは、研修を企画する部署のニーズに基づいて行われています。 例えば、ハラスメントの問題について理解をさせるとか、コンプライアンスの重要性を理解させるとか、新しい購買や調達のルールを浸透させる、労働組合で言うと、賃上げ(春闘)の考え方の説明、政策や制度要求の周知などというものです。
 しかし、こうした研修の多くは、研修を受けることで、参加者にどんなメリットがあるのかを、十分に説明できていません。大人の学習者は「実利的」であるという特徴があります。つまり、自分たちにどう役立つのかを十分に理解していないと、学習への動機づけが不足してしまうのです。

○最も重要な「参加者のニーズ(職場のニーズ)」がおざなりになっている

 研修を企画する側にも、いろいろな事情があります。例えば、年1回、このテーマで研修をすることが決まっているとか、あるいは、いつまでに研修を実施しなければならないとか、そういう状況があるのかもしれません。テーマを決め、講師を探し、日時と会場を決め、参加者に案内をするという一連の作業も、なかなか大変です。
 しかし、そうした準備作業で頭がいっぱいになってしまうと、研修で最も大切なはずの、参加者にとってこの研修がなぜ必要なのか、研修で学んだことが職場や運動にどう役立つのかという部分が、すっぽりと抜け落ちてしまうのです。

○効果的な研修を行うために、職場のニーズを把握しよう

 研修について、多くの人が誤解していることがあります。それは「良い研修を実施すれば、良い結果が出るはずだ」という思い込みです。良い研修が良い結果を生むのではありません。名講師による素晴らしい研修をいくら行っても、会場が盛り上がる楽しい研修をいくら行っても、それだけでは研修の効果は得られません。
 実際には、職場や働く人のニーズにこたえる研修を行うから、良い結果が出るのです。研修の担当者は、良い研修講師や良い研修コンテンツを探そうとする前に、ニーズは何かということを、しっかりと調査するべきなのです。

○ 具体的なニーズを聞き出す

 職場のニーズを把握するためには、研修に参加する従業員の上司や労働組合職場役員にヒアリングします。話を聞くときには「どんなことを研修に期待しますか?」「どんなことを(部下に)学んで欲しいですか?」などと質問するのではなく、「(職場・運動の)目標達成について、どんなことで困っていますか?」「(部下や組合員に)どんな場面で、どんな行動をとって欲しいのですか?」とたずねるようにします。
 職場の課題をたずねたとき、職場の管理者や組合員から「もっと(部下に)自立して欲しい」とか「積極的になって欲しい」「協調性を持って欲しい」「一体感のある組織にしたい」「風通しを良くしたい」など、漠然とした言葉が返ってくることがあります。
 そんなときには、なるべく具体的に、どんな行動をとって欲しいのかを聞き出すようにします。例えば「もっと自立して欲しい、とおっしゃっていましたが、具体的には、どんな状況のときに、例えばAさんにどのような行動をとって欲しいのですか?」と、個人名を挙げて聞き出すようにするとよいでしょう。

 すると、上司や組合員からは「若手のAさんには、もっと積極的になってほしい。業務でわからないことがあったときには、物怖じせずに、先輩に自分からたずねるようになって欲しい」とか、「先輩のBさんには、もっとAさんにいろいろ任せて欲しい。Aさんの仕事を、あれこれ先回りしてやってしまうのではなく、まずAさんのやり方でやらせてみて欲しい」など、かなり具体的な話が聞けるようになります。

○さらに深掘りして、本質的なニーズを聞き出す

 しかし、これではまだ、表面的なニーズを把握したにすぎません。職場のニーズを把握するためには、さらに、その奥にある本質的なニーズまで深掘りしていく必要があります。
 表面的なニーズとは、今、目の前で問題になっていることを指しています。しかし、その問題が解決したとしても、効果は一時的で、またすぐに別の問題が発生してしまいます。また、表面的なニーズは対立しやすく、ある人のニーズを優先すると、別の人には我慢を強いるようなことになりがちです。
 これに対して、本質的なニーズとは、そうした表面的なニーズを発生させている根本となっているものです。本質的なニーズは何かと考えていくことで、いろいろな問題を一度に解決できる方法が見つかるのです。

○本質的なニーズの例

 先ほどの例では、「若手のAさんはもっと積極的になって欲しい」「先輩のBさんは、もっとAさんにいろいろ任せて欲しい」と考えています。しかし、Aさんはまだ仕事に自信が無く、そういう様子を見かねて先輩のBさんがいろいろ手を出したり口を出したりしている可能性もあります。
 そんな状況で「Aさんは、Bさんに頼らず自分でやるように」、「BさんはAさんに任せるように」と上司がいくら指示しても、なかなか問題は解決しないでしょう。無理にやらせてしまうと、Aさんは、失敗してしまうのではないかと不安になるあまり、ますます慎重に、消極的になってしまうかもしれません。また、先輩のBさんは、そんな様子にがまんができず、Aさんとの関係がぎくしゃくするかもしれません。
 ここで言う本質的なニーズとは「Aさんが、○○の業務を、自信をもって、ひとりで完結してできるようになること」、なおかつ、「Bさんは、Aさんが○月までに、○○の業務をひとりで完結してできるよう、手助けをすること」です。その両方を同時に満たせるような方法を考えることが、解決策につながります。
 ニーズを把握するときには、より具体的で、本質的なニーズを聞き出すようにしましょう。そして、そのニーズを満たすために、研修がどのように役に立つのか、あるいは、研修でどんな工夫をすればよいかを考えます。

○研修の内容が変更できない場合には

 すでに研修の中身ができあがっていて、大きく変更することが難しいこともあります。そんなときは、研修の導入の説明や、事例の説明などのときに、職場の状況や職場のニーズを盛り込む、というやり方を試してみましょう。
 研修の導入では、参加者に「皆さんも、こんな事で困っていませんか?」「こんなふうになったらいいなと思いませんか?」と職場で問題になっていることを例に挙げて問いかけたり、「今日の研修を受けると、こんなことができるようになります」と、職場のニーズにあった研修の目標を示したりします。こうすると、この研修は役に立ちそうだと参加者に感じてもらうことができます。
 また、研修の中で、職場で起きている架空の事例をもとにしてディスカッションを行ったり、今後の行動計画を立てたりすることがあります。そのときに、職場で起きている問題に近い事例を提示したり、上司が「こうあって欲しい」と思っている姿を行動計画の見本として示したりすると、職場のニーズを研修にうまく取り入れることができます。

○労使が参加できる課題は職場の管理者も参加を求めて

 研修で学んだことを職場で実践してもらうためには、職場の管理者のサポートが不可欠です。部下の実践に対して前向きなフィードバックを与えてもらうなど、行動を実践しやすく、また継続しやすい環境を作ってもらうのです。
 また、上司が「この研修は、私たちの職場の問題解決に役立つ重要な内容だ。しっかりと取り組んで欲しい」と声をかけてくれたとしたら、きっと、あなたは熱心に研修に参加し、研修で学んだことを職場で生かそうと努力するはずです。参加者の上司を味方につけると、研修の効果は何倍にも高まるのです。

大人のための研修デザイン その42016年09月12日 14:25

第4回「すっきり腹落ちさせる経験学習モデル」

 私たちはみんな、子供のときに学校教育を受けています。大人数の生徒が教室に集まり、みんな前を向いて席につき、黒板の前には先生がいて、教科書を見ながら一斉に授業を受けるという、おなじみの風景です。
 こうした経験から、企業や労働組合で研修を行うときにも、つい、同じような一斉講義形式のスタイルを思い浮かべてしまいます。しかし、効果的な研修を行うためには、大人と子供とで、学習の特徴が異なっていることに気をつけなければいけません。

○大人には大人に適した学習スタイルがある

 大人は、経験に価値を置き、経験や体験から学ぼうとするという特徴があります。そのため、経験や体験を通じた学習方法が適しています。
 例えば、仕事の場面では、業務に必要な知識や技術をOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)という、現場での実践を通じて習得するやり方が行われています。あるいは、事例をもとにしたケース・スタディーやシミュレーションなどを行い、擬似的な体験を通じて学ぶという方法もあります。

○経験から学ぶ「経験学習」とは?

 このように、経験や体験から学習する方法を「経験学習」と言います。経験学習とは、次のように① 経験→ ② 振り返り→③ 気づき→ ④ 新しい試み、というプロセスで進んでいきます。PDCAと同じです。

① まず、学習者は、研修中、様々な状況を経験します。研修の中だけでなく、実際の現場の経験なども、これに含まれます。
② その経験を振り返り、何が起こったのか、どうしてそれが起こったのか、ということを整理します。さらに、そこからどんなことがわかったか、それを、どのように応用するかということを考えます。
③ 振り返りの作業を通じて、今後、現場で役立ちそうなことは何か、そのような問題に遭遇したらどうすれば良いか、などについて、新たな気づきを得ます。新たに学んだことや経験したことから、自分なりの理論をかたちづくっていくわけです。
④ その気づきを現場で生かすためと計画を立てます。さらに、新たな試みを経験し、その経験を振り返り、さらなる気づきを得て、また新たな計画を立てます。

 経験学習では、経験、振り返り、気づき、新しい試み、を繰り返しながら学習が進んでいきます。特に重要なのは、「振り返り」と「気づき」のプロセスです。経験を振り返って、何が成功のもとだったか、何が失敗のもとになったかを考え、それを自分なりの理論を整理します。
 研修では、グループ討議などを行って他の人の体験や意見を参考にしたり、問題を整理するための新たな理論やモデルなどを学んだりしながら、経験学習のプロセスをうまく回せるようにしていきます。

○実際の事例と架空の事例、どちらが学習に適しているか

 経験学習を用いた学習方法のひとつがケーススタディー(事例検討)です。事例検討には、参加者が実際に経験した事例を題材にする場合と、架空の事例を用いる場合とがあります。
 実際に経験した事例を用いる場合には、学習がうまくいくと、現場の問題解決にすぐ応用できるというメリットがあります。しかし、大勢の前で自分の経験を話したり、自らの経験を第三者的な視点で冷静に振り返ったりすることが難しいという問題もあります。
 架空の事例を用いる方法は、研修に取り入れやすいため、多くの研修で用いられています。現場で参加者が抱えている問題に近い事例を用いると、より学習効果が高まります。しかし、あくまでも架空の事例であるため、あたりさわりのない意見や、優等生的な回答にとどまってしまい、そこで得られた学びを現場の問題に応用しようとしても、なかなかうまくいかない、という問題もあります。

○研修の目的や職場のニーズにあった事例を選ぶ

 事例検討を行うときは、研修の目的に応じて、適切な事例を選ばなければなりません。一般的に、事例検討では登場人物が失敗するストーリーが用いられます。登場人物がいくつかの場面でミスをおかし、業務をうまく遂行できなくなってしまうという状況を、事例検討を通じて疑似体験し、なぜ失敗したのか、自分だったらどうするかを学んでいきます。
 学習の効果を高めるためには、学習者を引き込むストーリー性があり、登場人物の体験する苦境やドラマがリアルに描写されている事例を用います。また、営業の現場と工場の生産現場では状況が全く異なるため、同じテーマの研修を行う際にも、参加者の職場の状況に近い事例を使うようにします。

○事例を用いた学習の結果を、現場で生かすために

 研修中は議論が盛り上がるのに、研修が終わって職場に戻ってみると、何も変わっていない、というのは、よくある光景のひとつです。頭で理解しているからといって、職場に戻った後で、適切な行動ができるとは限らないのです。
 例えば、食べ過ぎや飲み過ぎは体に悪いと頭ではわかっていても、実際には、疲れているから、甘い物が欲しいからなどという理由で、つい、食べ過ぎたり飲み過ぎたりしてしまいます。実際の場面では、感情に動かされたり、職場の複雑な問題に影響されたりして、理屈どおりには行動できないのです。
 研修で学んだことを現場で生かせないというのは、多くの人が経験する切実な問題であり、また、解決法もひとつではありません。まさに、事例検討にぴったりの題材だといえます。そこで「研修で学んでいるときには実行できるのに、現場に戻ると実行できない」という事例を用いてケース・スタディーを行うと、解決策が見つかるかもしれません。

 この方法論は、当センターの「POSIOTIVEプログラム」と似ています。POSITIVEプログラムの場合は、事例研究よりも、現場視察と、その視察の視点の研鑽、そして職場改善という具体的な取り組みにつなげていこうとするものです。
 興味のある方は、当センターのHPをご覧ください。

大人のための研修デザイン その52016年09月13日 14:29

第5回「集中力が続くのは15分! アクティブ・ラーニングのすすめ」

 これまで、研修中に眠くなったことはありませんか? 一方的に知識を伝えるだけの研修や授業を受動的学習と言います。受動的学習では15~20分程度で注意力が低下し、学習効率が落ちてしまうことが知られています。
 これに対して、書く・話す・発表するなど、何らかの積極的な活動を取り入れた学習法を能動的学習(アクティブ・ラーニング)と言います。受講者の集中力を保ち、効果的な学習を行うためには、研修にアクティブ・ラーニングを取り入れることが有効です。

○アクティブ・ラーニングを研修に取り入れる方法

 ひとことでアクティブ・ラーニングといっても、例えば、2人で意見交換をするペア討議、数名で意見交換をするグループディスカッション、レポート発表やポスター発表、ディベート、実験、実地での体験など、さまざまな方法があります。
 その中から、研修の目的や学習の目標を達成するために、最も適切なものを選ぶということが重要です。アクティブ・ラーニングを、単なる退屈しのぎや眠気覚ましとして用いるのではなく、学習の効果を高めるための手段として用いるようにします。

○ペア討議を用いた研修の工夫

 従来の一斉講義形式に慣れていると、参加者が主体的・積極的に活動しなければならないアクティブ・ラーニングに、戸惑いを感じる人もいるようです。
 そのような場面では、ペア討議という手法を試してみるとよいでしょう。ペア討議とは、隣あった2人1組で意見交換を行う方法です。端数が出た場所では3人のグループを作るようにします。ピア・インストラクションや、ペアワークなどとも呼ばれています。
 ペア討議は、研修の参加人数、部屋の大きさ、机のレイアウトなどに関わらず、どんな研修にも取り入れることができます。ぜひ、試していただければと思います。例えば、次のような構成で研修を行います。

 研修の冒頭の導入部分では、学習する内容をおおまかに紹介した後で、さっそく3~5分のペア討議を行います。ペア討議のテーマは「講義テーマについて知っていること」です。「(講義テーマに関して)ふだん困っていること」「ふだん工夫していること」などとしても良いでしょう。冒頭のペア討議の目的は、既に知っていることを頭の中で整理し、新しく学ぶ内容を理解しやすくすることです。

 講義のパートでは、参加者の集中力が途切れないよう、説明の時間は10~15分にとどめます。その後で、学習内容をより深く理解するための問題を出します。参加者はまず一人で問題を解き、次にペア討議を行って、お互いの回答や考え方などについて話し合います(3~6分)。最後に、いくつかの意見を発表してもらい、全体共有などを行います。
 続けて、別の内容について講義を行います。同じように10~15分の講義と、ペア討議、全体発表を組み合わせて行います。研修全体の時間にもよりますが、これを2~3回繰り返します。
 研修の最後に、学んだことを振り返るペア討議を5分程度行います。学んだことを職場でどう応用するか、といったテーマで話しあってもらうとよいでしょう。

○簡単にできる「3択クイズ」の工夫

 もうひとつ、アクティブ・ラーニングを研修に取り入れるための簡単な方法があります。クリッカーという装置をご存じでしょうか。クリッカーとは、参加者が応答するためのリモコン装置のことです。リモコンには1、2、3、4~と番号のついたボタンがあり、参加者は問題やアンケートにあわせてボタンを押し、集計結果はすぐにパソコンの画面に表示されます。
 専用のクリッカー装置が無くても、例えば、用紙に、1、2、3などと大きく印刷した紙を配布して、TVのクイズ番組のように掲げてもらう、という方法であれば、どんな研修でも取り入れられます。

 クリッカーを使うと、100人以上の参加者がいるような場合でも、研修中に簡単に双方向のやりとりを行えます。アンケートを実施したり、全体の理解度を確認したり、ペア討議やグループディスカッションの導入となる問題を出したりといった使い方をするとよいでしょう。
 ただし、問題の難易度には注意が必要です。どんな問題を出しても、ある人には難しすぎると感じられ、別の人にはやさしすぎると感じられるものです。また、間違えると恥ずかしいからと、回答に消極的になる人もいます。
 クリッカーを使うときには、研修中は間違えることが学びにつながるのだと説明し、参加者が安心して回答できるような環境を作ることが大切です。また、参加者の意見が分かれることを前提にした、いくつも答えがあるような問題を出して、その後の解説やディスカッションにつなげたりする方法もあります。

ん~ん、10月1日の道南ナースアクションでもやってみましょうかね。