あなたは、ガンを知っていますか? その22014年12月26日 10:27

長生きするようになって増えたガン

ガンは増えている

 ガンが増えています。日本人は毎年およそ100万人が死亡していますが、そのうち32万人くらい、つまり3人に1人がガンで亡くなっています。65歳以上では、2人に1人がガンで亡くなるのです。
 実は、「ガン登録」(ガンが診断されると、そのタイプや進行度の他、治療方法とその結果を詳しく登録して、ガン対策に活用する仕組み)が行われてこなかったわが国には、何人に1人がガンになるかについて、正確なデータがありませんが、おおざっぱに言って、日本人の「2人に1人」がガンになると言えるのです。

ガン増加の原因は長寿

 国民の半数がかかり、3人に1人が命を落とす、こんな病気は他にありません。まさにガンは国民病で、世界でも類を見ません。
 では、なぜこれほどガンが増えているのでしょうか?
 日本人が長生きするようになったからです。

 ガンは、人間の細胞の設計図であるDNAに、徐々にキズがついたために生まれる異常な細胞です。簡単にいえばガンは細胞の老化です。
 そして、DNAのキズが積み重なるには、時聞がかかる。たった1つのガン細胞が検査でわかるほど大きくなるには、10年から20年の時間が必要です。つまり、長く生きなければガンを作るいとまがないのです。
 日本人は長生きになりました。日本人の平均寿命は現在世界一ですが、明治元年の平均寿命は30歳、大正元年で40歳ほど。ちなみに、縄文時代では15歳程度だったと言われます。
 織田信長は、「人間五十年、下天のうちをくらぶれば夢幻の如くなり」と謡いましたが、その当時の平均寿命は20数歳。子供のころにバタバタ死ぬから、平均寿命は短い。大人になるまで生きれば、安土桃山時代でも50歳まで生きたというわけです。

 日本人は第二次世界大戦後、急速に長生きになったのですが、乳幼児の死亡率減少が最大の理由です。現代の日本女性の平均寿命は86歳で、これは子供の死亡までを含んだものですから、65歳に達した方々は90歳まで生きることになる。日本は前人未踏の長寿国家なのです。

世界一のガン大国

 こうして日本は「世界一の長寿国」になり、その結果、「世界一のガン大国」になりました。「ガン大国」は恥ずべきことかもしれませんが、「世界一の長寿国」となった結果です。日本の衛生環境や医療がよくなって、みんながガンになるまで長生きするようになったのです。
 日本人の寿命は今後さらに延びますから、ガンはいっそう増えるはずです。
 仮に平均寿命が100歳を超えるようなことになれば、ガンにならない人の方が珍しくなる。もはや、ガンは日本人と切っても切れない関係にある「業病」なのです。

「人は死んでも生き返ると思いますか?」

 しかし、今の日本社会には、死を認めないムードがあります。高齢者が自宅で亡くなるケースが減り、死は一般に病院に閉じこめられ、生活や意識から排除されているのです。死が見えなくなっている。
 最近ある小学校のアンケート結果を見て驚いたことがあります。「人は死んでも生き返ると思いますか。」と先生が尋ねたところ、なんと三分の一が「生き返る」と答え、三分の一が「わからない」と回答したというのです。正解はわずかに3人に1人(宇都宮直子『「死」を子どもに教える』中央公論新社)。死はリセットできるものと感じられていることがわかります。

 末期まで懸命に生きる患者さんの闘病記はテレピなどで人々を感動させる一方、死そのものは日常からきれいに拭い去られているのです。日本人の大半は、死なないつもりで生きているのではないでしょうか。あるいは、死の感覚を喪失しているのではないか。

 ガン治療の進歩によって、ガンの半数は治癒できる時代になりました。しかし、「ガン=死」というイメージはまだまだ根強い。憲法で戦争を放棄し、徴兵制もない今の日本で、死に直接結びつくのは、ガンくらいでしょう。ですから、多くの日本人にとって、ガンは「縁起でもない」存在です。最低限の知識も耳に入らなくなってしまっているのです。
 実際、高い喫煙率、動物性脂肪ばかりが増えている食生活、低い検診率と必要性の乏しい高額の検査、あまりの手術偏重、軽視される放射線治療、不適切なそして使われすぎの抗ガン剤治療、放置される患者の苦しみ、根拠がなく法外に高い健康食品や民間療法、心が通わない医師と患者の関係など。日本のガン医療には、問題が山積しています。

 でも、こうした問題を解決していくには、専門家ではなく、日本人の一人ひとりが、まず「ガンを知ること」です。知らなければ立ち向かうこともできません。国民病なのだから、私は小学校から教科書で教えるべきだとすら思っています。

 ガンは他の病気とちがって、患者さんの人生の縮図ともいうべき病気です。人生の時計の針が多少早く回っている、と言えるかもしれない。ガンの患者さんは、人生はだれにとっても、いつでも下り坂であることを身に染みてご存知です。
 ガンが治っても人はかならず死にます。人間の死亡率は100%です。ガンを通して人生を考えることが、「よく生き、よく死ぬ」ことにつながると確信しています。

DNAが傷ついて起きる病気

 人のカラダは、60兆個の細胞からできています。1つ1つの細胞のまんなかには核があり、そのなかに細胞の設計図といわれる遺伝子(DNA)が入っています。ガンは、このDNAが傷ついて起こる病気です。
 60兆個の細胞の出発点は、たった1つの受精卵です。この受精卵が、細胞分裂を少なくとも50回は繰り返して、脳、肺、胃腸などの臓器をかたち作る。
 臓器ができあがると、それぞれの細胞はまわりの仲間の細胞と協調しながら、自分の役目を果たします。そして、必要なときだけ分裂し、必要な分だけ増えると分裂を止めて、寿命がくると死滅します。
 この細胞の「入れ替え」は、カラダの老化をおさえるのに必要で、新しい細胞は、毎日8000億個も作られます。一生涯で臓器の細胞は、数千回入れ替わると言われているほどです。
 それぞれの個体は、成熟したら子孫を残し、寿命がきたら自分は死ね。この「個の役割」と「世代間のバトンタッチ」こそ、私たち人間を含む生き物の営みです。

ガンは暴走機関車

 しかし、ガン細胞は、コントロールを失った暴走機関車のようなもので、猛烈な速さで分裂・増殖を繰り返し、生まれた臓器から勝手に離れて、他の場所に転移します。
 ガン細胞は正常な細胞の何倍も栄養が必要で、患者さんのカラダから栄養を奪い取ってしまうのです。進行したガンの患者さんが痩せていくのはこのためです。
 ガンが進行すると、栄養不足を起こすだけでなく、塊となったガンによって圧迫を受けたり、ガンが原因の炎症が起こったりします。
 たとえば、背骨に転移したガンは骨を溶かし、自分が住むスペースを作りながら大きくなっていくので、激しい痛みをもたらします。さらに、ガン、が大きくなって背骨の中を走る脊髄(神経の束)を圧迫すると麻痺の原因にもなります。

 というわけで、2回目を終わります。
 全部で5回ですが、だんだんと背筋が寒くなります。
 じゃんじゃん。

 良いお年を!

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