シリーズ 労働安全衛生とは その5 安全衛生委員会の22015年08月04日 10:18

 さあ次は、構成員について。
 前回にある通り、「何人にするか」は決まっていませんが、法令によると、最低7人必要です。

● まず、「総括安全衛生管理者」です。
 これは安全委員会の構成要件ですので、業種や従業員数により「又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するものもしくはそれに準ずる者のうちから事業者が指名したもの」がその任に当たりますが、会議を主宰します。
 「当該事業場において、その事業の実施を実質的統括管理する権限及び責任を有する者(工場長など)」と言うことで、その事業場の決定権を持つものがあたることになります。

● 次が、安全管理者。
  労働安全衛生法第11条では、一定の業種及び規模の事業場ごとに「安全管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、安全に係る技術的事項を管理させることとなっています。
 選任・非選任は業種と事業場の規模でちがいます。

 安全管理者の資格は、
 (1) 厚生労働大臣の定める研修を修了した者で、次のいずれかに該当する者。
ア 大学の理科系の課程を卒業し、その後2年以上産業安全の実務を経験した者
イ 高等学校等の理科系の課程を卒業し、その後4年以上産業安全の実務を経験した者
ウ その他厚生労働大臣が定める者
(理科系統以外の大学を卒業後4年以上、同高等学校を卒業後6年以上産業安全の実務を経験した者、7年以上産業安全の実務を経験した者等)
(2) 労働安全コンサルタント

 また、安全管理者は、主に次の業務を行うことになっています。
ア 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
イ 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備
ウ 作業の安全についての教育及び訓練
エ 発生した災害原因の調査及び対策の検討
オ 消防及び避難の訓練
カ 作業主任者その他安全に関する補助者の監督
キ 安全に関する資料の作成、収集及び重要事項の記録
ク その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行なわれる場合における安全に関し、必要な措置

● そして衛生管理者。
 労働安全衛生法第12条では、一定の規模及び業種の区分に応じ「衛生管理者」を選任し、その者に安全衛生業務のうち、衛生に係る技術的事項を管理させることとなっています。
 常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任することとなっています。
 ただし、事業場の規模ごとに選任しなければならない衛生管理者の数は50~200人が1名、201~500人が2名など細かく決まっています。
 また、業種により、第1種か衛生工学衛生管理者、医師などと決められているものもあります。

 衛生管理者(第一種・第二種)は国家資格です。
・衛生管理者免許試験(第一種・第二種)に合格した者
・保健師、薬剤師など

 衛生工学衛生管理者
・大学または高等専門学校において、工学または理学に関する課程を修めて卒業した者等で、一定の講習を修了した者など

 衛生管理者の職務は以下の通り。

(1)衛生管理者の職務
ア 健康に異常のある者の発見及び処置
イ 作業環境の衛生上の調査
ウ 作業条件、施設等の衛生上の改善
エ 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
オ 衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
カ 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
キ その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し必要な措置
ク その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等

(2)定期巡視
 少なくとも毎週1回作業場を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときに、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。

● 産業医
 労働安全衛生法第13条では、一定規模以上の事業場について、一定の医師のうちから「産業医」を選任し、専門家として労働者の健康管理等に当たらせることとなっています。
 産業医の選任は、「常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場」で選任することとなっています。
 ただし、常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では、2人以上の産業医を選任することとなっています。
 なお、次に該当する事業場にあっては、「専属」の産業医を選任することとなっています。
ア 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
イ 一定の有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場

 ただし、医師なら誰でも言い訳ではありません。

  医師であって、次のいずれかの要件を備えた者
ア 厚生労働大臣の定める研修(日本医師会の産業医学基礎研修、産業医科大学の産業医学基本講座)の修了者
イ 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生であるもの
ウ 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、助教授または常勤講師の経験のある者
エ 平成10年9月末時点において、産業医としての経験が3年以上である者(経過措置)

 そして、産業医の職務は以下のようになっています。

(1)産業医は、主に次の事項を行うこととされています。
ア 健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
イ 作業環境の維持管理に関すること
ウ 作業の管理に関すること
エ 労働者の健康管理に関すること
オ 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
カ 衛生教育に関すること
キ 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること
(2)勧告等
 労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができます。
 また、労働者の健康障害の防止に関して、総括安全衛生管理者に対する勧告または衛生管理者に対する指導、助言をすることができます。
(3)定期巡視
 少なくとも毎月1回作業場を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときに、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。

 しかし、実態は、近くの内科医に「産業医」になってもらい、月1回程度開催した安全衛生委員会の議事録に「ハンコ」をもらう程度。報酬は、年に数万円というところではないでしょうか。

 今回の「ストレスチェック」にしても、産業医が大きな役割を果たさなければできやしません。産業医との関係をきちんと見直した方がいいでしょう。
 ただし、北海道では、周りに産業医が居ればの話になりますけど。
 
 じゃんじゃん。

お寺とお葬式の大問題 東洋経済2015年08月17日 15:38

 安全衛生委員会のシリーズは、あまりにも面白くないことと、最近は暑くて仕方がないので、少し安全衛生を離れて、ちがう話題にします。

 ということで、最近「これはおもしろい」と思ったのが、表題の東洋経済特集でした。
 読みましたか?もう店頭にはないかもしれませんね。もしどうしても読んでみたい方は、連絡ください。

 それで、何が面白いかというと、おそらく他の国でもそうなんだろうと予想はできますが、いわゆる「宗教離れ」というか、「無宗教化」というか、とにかく、日常に「宗教」がないのが現実でしょうが、その結果、全国の「お寺さん」がどんどん「無住化」していて、おそらくこのままでは、地方のお寺は3割が消滅するだろうと言うことです。
 理由の一つは、後継者がいないと言うこと。もう一つは、お寺の収入は300万円以下が4割~5割だからだそうです。
 
 しかし、墓地収入などでうまくやっているお寺さんは、1億近くのところもあるとか。とにかく、大都市の宗教施設は比較的うまくいっているようです。
 これも理由があって、いわゆる戒名や法名などのお布施や葬儀の取扱などが大都市ではまだ頻繁にあるからなのだそうです。

 それで、一番の興味は、葬式っていくらかかる?ということでしたが、何せ、親が高齢なモンで、長生きしてくれることにこしたことはないのですが、やはり気になりますよね。

 この特集から読み取ると、6割は「家族葬」で、9割は参列者が30人以下だそうです。
 その費用は、関東の数字ですが、100~110万円くらい。
 このほか、お寺さんの布施があるし、親族への配慮もあるとすれば、家族葬でも200万くらいかかることになるようです。

 さらに、先祖伝来のお墓がなければ、新たに用意すると、納骨堂で、100~150万円、霊園に墓石をたてると、200万円。
 ん~ん。無理かもしれませんね。
 第一そんな立派なお墓を用意して、誰が面倒を見てくれるのかと言うことになりませんか?

 もしかすると、今の宗教離れというのは、経済問題であるのかもしれませんね。

 むむむ・・・で、じゃんじゃん。

女性活動推進法が成立2015年08月28日 13:08

 本日、標記の法律が成立したようです。施行はH28年4月とか。

 法の概要には、以下の通りの記述があります。

「 豊かで活力ある社会の実現を図るためには、自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性の個性と能力が十分に発揮されることが一層重要である。 そのため、以下を基本原則として、女性の職業生活における活躍を推進する。」
1.女性に対する採用、昇進等の機会の積極的な提供及びその活用が行われること
2.職業生活と家庭生活との両立を図るために必要な環境の整備により、職業生活と家庭生活との円滑かつ継続的な両立を可能にすること
3.女性の職業生活と家庭生活との両立に関し、本人の意思が尊重されるべきこと

 この法律は確かにその通りですが、その裏に、労働人口の減少があり、高齢者の動員が終わった産業界にとって、次のターゲットは女性の動員であることについて、「当然である」と考えるか、「イヤちょっと待ってくれる?」とするかで、受け取りが大きくちがってきます。

 そこで、また余計なことだろうとは思いますが、女性の皆さんの猛抗議を予想しつつ、「子と親の愛着」の前にあることを提起してみたいと思います。

 それは、「愛が育てる赤ちゃんの脳」というナショナルジオグラフィックの記事です。
 シリーズで、1~3になります。
 次回から、ということでじゃんじゃん。

愛がそだてる赤ちゃんの脳 その12015年08月31日 09:33

 以前「愛着」の問題について何回か提起しました。
 2013年6月に8回シリーズでした
 「愛着障害というもの その1」から始まるシリーズで、欄の右にある「カテゴリー」の「愛着の問題」から見ることができます。
 要は、1歳半までの親、特に母親との愛着度がその後の人生に大きく影響するという提起であったと思います。

 それで、今回は、それはなぜなのかということの一つの証しをご紹介したいと思ったことから、このシリーズを始めます。


 1980年代に、米国の都市部で「クラック」と呼ばれる安価なコカインが流行し、深刻な社会問題となった。ペンシルベニア州フイラデルフイアの新生児学者は当時、妊婦のクラック依存が胎児に及ぼす影響を懸念し、調査を実施した。

 調査対象となったのは、低所得の家庭で育った4歳の子どもたち。母親がクラック依存症だったグループとそうでないグループのIQ(知能指数)を比較した。
 二つのグループに有意な差はなかったが、調査を通じて予想外の事実が判明した。どちらのグループも、4歳児の平均よりも大幅にIQが低かったのだ。
 「見た目は普通のかわいらしい子たちでしたが、IQは82か83程度でした。平均は100です。衝撃的な結果でした」と。

 調査チームは両グループの違いではなく、共通点に目を向けた。つまり貧しい家庭で育ったということだ。そこで家庭への訪問調査を行った。たとえば、家に子ども向けの本が10冊以上あるか、子ども向けのCDやレコードと音楽プレーヤーがあるか、数字を覚えるための知育玩具があるかといった項目をチェックし、子どもたちの養育環境を調べたのだ。
 すると、養育者が子どもに関心を向け、接する時間を多くもつ家庭ほど、子どものIQが高い傾向にあることがわかった。 認知能力に関わる刺激を受ける機会が多い子どもは、より高い言語能力を示し、愛情深く育てられた子どもは、記憶力がより優れていた。

 その後、10代になった子どもたちに対し、追跡調査を行った。 MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の活動を調べ、4歳と8歳のときの養育環境と脳機能の関連性を探るためだ。
 すると、4歳のときの養育環境と、記憶をつかさどる海馬の大きさに強い相関性があることが確認された。だが一方で、8歳のときの環境と海馬の大きさには関連性は認められなかった。

 この結果が示すのは、子ともの脳の発達には幼児期の愛情豊かな養育環境が非常に重要だということだ。

 幼児期の子どもたちが言語や数字を覚え、感情を理解するようになる・・そうした成長過程の研究が進むにつれ、赤ちゃんの脳が驚異的な学習能力を備えていることがわかってきた。だが脳がどれだけ成長できるかは、周囲の大人の接し方に大きく左右される。

 人類ははるか昔から子育てをしてきたが、認知、言語、推論、計画などの能力が飛躍的に向上するプロセスについてはまだ謎が多い。

 乳幼児の脳の機能が急速に発達する時期には、膨大な数の神経回路が形成される。新生児のニューロン(神経細胞)の数はおよそ1000億個程度で、成人とほとんど差がない。だが成長の過程で外部から大量の感覚刺激を受けると、ニューロン同士が結びついて新しい神経回路が形成されていく。その結果、3歳までに数百兆ものシナプス(ニューロン間の結合部)をもつようになるのだ。

 子守歌を聞く、おもちゃに手を伸ばすなど、さまざまな刺激や課題が与えられると、それに対応した神経回路が形成される。さらに、繰り返し活動する回路は結合が強化される。
 ニューロン上で信号の伝達を担う軸索(神経線維)は髄鞘と呼ばれる絶縁体で包まれていて、何度も使われる回路ではこの髄鞘が厚くなり、電気信号の伝達がより速くなるのだ。逆に、使用頻度の低い回路はやがて結合が断ち切られる。

 爆発的に増えたシナプスのうち、使用頻度の高い結合が強化され、残りが消えていく作用は「シナプスの剪定」と呼ばれる。人間の場合、1歳から5歳までと思春期の初めにシナプスの剪定が進行し、この時期の体験はその後の神経回路網の形成に大きな影響を及ぼす。

 もって生まれた機能に外部環境からの影響が加わって、脳はさまざまな能力を獲得していく。このプロセスが最も顕著に見られるのが、言語能力の発達だ。言語の習得には、生まれつきの能力がどの程度関与し、それ以外の部分はどうやって獲得されるのだろう。

 つづく。じゃんじゃん。