シリーズ 睡眠について その3 ― 2015年09月15日 10:00
◎ 男と女の眠りの違い
男性と違って、女性にはホルモン分泌のサイクルがあります。約一ヶ月の周期で、ホルモンのバランスが原因で睡眠時間や眠りの深さが大きく変化します。より正確にいうと、月経は一般的に28日周期です。月経が終わった日から数えて14日間(28日サイクルの前半)は女性は心身ともに活動的になり、睡眠時間は自然と減ります。28日サイクルの後半(次の月経に近づく14日間)になると、体がだんだんだるくなってきて、昼間から強烈な睡魔に襲われることになります。また、精神状態は不安定となり、睡眠の質が下がって睡眠時間も不規則になります。
一般的に、男女の眠りの性質は以下のように、さまざまな点で違いがあります。
■女性のほうが男性よりも睡眠時間は短い傾向にある。特に乳幼児がいる場合は、男性よりも1時間近く短くなる。
■女性のほうが睡眠と覚醒のサイクルが短い。また深い眠り(ノンレム睡眠)の時間が男性より短い。自分の赤ん坊の泣き声に敏感に反応し、朝型が多い。
■女性のほうが不眠になりやすく、特に年配の女性は睡眠に関する悩みを持つ人が多い。更年期障害が原因で睡眠不足になると、落ち込んだり気分の変化が激しくなる。
■女性のほうが、恐い夢を見ることが多い。
■女性のほうが、眠りは深く、短く、効率的。女性ホルモンは睡眠物質のセロトニンの分泌を助けるため、男性よりも深く眠ることができる。短いけれども深い睡眠によって効率的に脳の疲労回復を行っていることも、女性のほうが寿命が長い要因のひとつだと考えられています。
■女性のほうが、寝言を言うことが多い。
男女別の睡眠時間の統計を見ると、女性のほうが30分ほど短くなっています。これは家事をするのが、いまだに主に女性であることが多いことが原因と言われています。しかし、そうした社会的役割の違いが原因で男女の睡眠に差があるのだとすれば、現代社会では女性の活躍の場も増えていますから、こうした睡眠の男女差は将来的に縮んでいくのかもしれません。
◎ 本当は人間の一日は25時間
規則的な生活を送っている人は、だいたい毎晩決まった時間になると自然と眠くなってきます。また、朝は目覚まし時計がなくても、ほとんど同じ時間にすっきりと自然に起きることができます。これは人間の体には体内時計があるからです。
この体内時計は当然24時間周期で時間を刻んでいると考えがちですが、実はそのサイクルは24時間ではありません。温度や湿度が一定で、日光が完全に遮断された、外の様子や時間がまったくわからない洞窟や地下壕あるいは地下室のような場所でしばらく生活すると、人間は約25時間の周期で生活を送るようになることが実験の結果わかっています。
つまり、地球の一日は24時間でも、人体の一日は約25時間なのです。しかし1時間ずれたままでは、当然生活に支障をきたすため、われわれは朝起きて太陽の光を浴びることにより、自分の体内時計を毎日リセットして地球時間に適応しています。
昼夜の区別がはっきりしない都市部の人工的な環境の中で生活していると、洞窟で暮らしているのと同じように、一日のサイクルが24時間でなくなってしまうことがあります。夜中でもコンビニやレストランは営業していますし、携帯電話やパソコンの明るい画面がいつでも目に飛び込んでくるからです。こうした不自然な明るさのサイクルから一歩引いて、正常な生活サイクルを取り戻すためには、朝まず日光を思い切り浴びることが大切です。朝起きて日光を浴び、夜には強い光を目に入れないようにすることで体内時計を正常なレベルに整えましょう。
このように脳内にある時計によって管理されている周期のことをサーカディアンリズムといいます。(生体リズム、概日リズム、生物リズムとも呼ばれます)「サーカ」は「およそ」という意味で、「ディアン」とは「一日」を意味します。つまり、「およそ一日のリズム」というわけです。このサーカディアンリズムという人間の基本的行動サイクルが崩れると、昼間に強烈な眠気に襲われたり夜にぐっすり眠れなくなったりと、不眠症を引き起こす原因となります。
◎ レム睡眠とノンレム睡眠
睡眠はその深さと特徴によって、レム睡眠とノンレム睡眠に分類することができます。眠りに落ちると、まずレム睡眠が始まり、しばらくすると深いノンレム睡眠のステージに入ります。レム睡眠とノンレム睡眠はセットで発生し、平均的には約90分サイクルで繰り返します。ベッドに入ってから目覚めるまでの間、個人差はありますがおおよそ約80分~110分のサイクルで、レム睡眠とノンレム睡眠は交互に規則的に4~5回繰り返します。6時間睡眠の人の場合、約90分サイクルを4回繰り返しているわけです。この90分サイクルは、5歳~10歳程度の子どもの時期に形成されることがわかっています。
なお、最初の約3時間はノンレム睡眠の占める割合が高く、その後はレム睡眠とノンレム睡眠は交互に発生し、起床が近づくにつれてレム睡眠の時間が長くなってきます。
なぜこのように、人はレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返す睡眠サイクルを守っているのでしょうか。眠りに落ちてから目が覚めるまで、深い眠りのまま眠ったほうがぐっすり熟睡できるようにも思えます。もし最初から最後までノンレム睡眠だけだとすると、長時間にわたって脳の活動レベルが休息状態となり脳の温度も下がってしまい、起きたときに正常な活動レベルまで戻すのが難しくなってしまうのです。途中に適度にレム睡眠をはさむことにより脳の温度が下がりすぎることを上手に防いでいるわけです。この仕組みがあるため、朝起きたとき、大脳がスムーズに活動を再開し一日を始めることができるのです。
◎ レム睡眠とは
身体は休息状態なのに、脳は覚醒に近い状態で活動している睡眠のことをレム睡眠といいます。「カラダの眠り」と考えるとわかりやすいでしょう。こうした睡眠状態においては、顔の筋肉が軽く痙攣したり、眼球が非常に速くグルグルと回り、それは閉じたまぶたの上からも確認することができます。この特徴的な速い眼球の動き(Rapid Eye Movements)の頭文字をとって、REM(レム)睡眠といいます。眼球が動くということは、脳が活動している証拠です。
レム睡眠時は、脳は深い休息状態に入っていないため、夢を見ることが多いようです。明確な夢を見て、夢の中で何かを目で追いかけているから、眼球が動いているとも言われています。レム睡眠の最中に起こされると、夢を見ていたことをハッキリと認識できる傾向があります。ノンレム睡眠の最中にも夢を見ることがないとは言えませんが、仮に見たとしてもそれを本人が覚えていることはありません。
ベッドに入って眠りに入ると、眠りはどんどん深いノンレム睡眠の状態に入っていきます。1時間ほどたつ頃には、逆に眠りは少しずつ浅くなり始め、入眠から約90分後にはレム睡眠に入ります。この最初のレム睡眠は約10分間持続します。こうしたレム睡眠は約90分周期でくり返し発生し、明け方に近づくほど長くなり、最大20分程度になります。通常睡眠中に発生するレム睡眠の時間を合計すると、一晩に映画一本分の2時間ほどになります。レム睡眠は一夜の睡眠のうち後半部分により多く、睡眠全体に占める割合は約20%です。
レム睡眠の間は、自律神経系の活動が非常に不安定となるため、血圧の変化が激しくなったり、心拍や呼吸は不規則かつ速くなります。睡眠中に原因不明の突然死を遂げるケースがありますが、こうしたレム睡眠中の自律神経の乱れが原因となって心筋梗塞などを引き起こしていることがあるといわれています。
◎ ノンレム睡眠とは
レム睡眠以外の比較的深い眠りの状態をノンレム睡眠(レム睡眠ではない、という意味)といいます。細胞の新陳代謝を高めたり、免疫力を強化する活動がノンレム睡眠の時間に行われているといわれています。筋肉の活動は休止していませんが、脳は休息状態になります。体温は少し低くなり、呼吸や脈拍は非常に穏かになってきて血圧も下がります。
大脳の活動が休息状態に入るため、こちらは「脳の眠り」であるとも言えます。いわゆるぐっすり寝ている状態ですので、多少の物音がしたり、軽くゆさぶられても目が覚めることはありません。もしノンレム睡眠の最中に強制的に起こされたとすると、人体はすぐさま活動を開始することができません。脳の中でも最も大きい大脳が休止状態から活動を開始するまではしばらく時間が必要で、それまでの間はいわゆる「寝ぼけた」ような行動をしてしまうことになります。ノンレム睡眠の間も夢を見ることがありますが、レム睡眠中に見る夢ほどはっきりした内容ではなく、多くの場合本人は覚えていません。
眠りに落ちた直後の3時間の間に深いノンレム睡眠は集中的に発生します。最初の3時間にぐっすり熟睡し、深いノンレム睡眠をしっかりとれば、起きたときに「熟睡できた」という満足感が高くなります。実はほとんどの場合、居眠りはノンレム睡眠です。短時間でも昼寝や居眠りをすると、頭がすっきりするのはノンレム睡眠によって脳が休息できたからです。
深い眠りであるノンレム睡眠を体験することができるのは、実は大脳が発達した哺乳類と鳥類だけです。大脳が未発達の魚類、両生類、爬虫類などはノンレム睡眠がありません。
第3回でした、じゃんじゃん。
男性と違って、女性にはホルモン分泌のサイクルがあります。約一ヶ月の周期で、ホルモンのバランスが原因で睡眠時間や眠りの深さが大きく変化します。より正確にいうと、月経は一般的に28日周期です。月経が終わった日から数えて14日間(28日サイクルの前半)は女性は心身ともに活動的になり、睡眠時間は自然と減ります。28日サイクルの後半(次の月経に近づく14日間)になると、体がだんだんだるくなってきて、昼間から強烈な睡魔に襲われることになります。また、精神状態は不安定となり、睡眠の質が下がって睡眠時間も不規則になります。
一般的に、男女の眠りの性質は以下のように、さまざまな点で違いがあります。
■女性のほうが男性よりも睡眠時間は短い傾向にある。特に乳幼児がいる場合は、男性よりも1時間近く短くなる。
■女性のほうが睡眠と覚醒のサイクルが短い。また深い眠り(ノンレム睡眠)の時間が男性より短い。自分の赤ん坊の泣き声に敏感に反応し、朝型が多い。
■女性のほうが不眠になりやすく、特に年配の女性は睡眠に関する悩みを持つ人が多い。更年期障害が原因で睡眠不足になると、落ち込んだり気分の変化が激しくなる。
■女性のほうが、恐い夢を見ることが多い。
■女性のほうが、眠りは深く、短く、効率的。女性ホルモンは睡眠物質のセロトニンの分泌を助けるため、男性よりも深く眠ることができる。短いけれども深い睡眠によって効率的に脳の疲労回復を行っていることも、女性のほうが寿命が長い要因のひとつだと考えられています。
■女性のほうが、寝言を言うことが多い。
男女別の睡眠時間の統計を見ると、女性のほうが30分ほど短くなっています。これは家事をするのが、いまだに主に女性であることが多いことが原因と言われています。しかし、そうした社会的役割の違いが原因で男女の睡眠に差があるのだとすれば、現代社会では女性の活躍の場も増えていますから、こうした睡眠の男女差は将来的に縮んでいくのかもしれません。
◎ 本当は人間の一日は25時間
規則的な生活を送っている人は、だいたい毎晩決まった時間になると自然と眠くなってきます。また、朝は目覚まし時計がなくても、ほとんど同じ時間にすっきりと自然に起きることができます。これは人間の体には体内時計があるからです。
この体内時計は当然24時間周期で時間を刻んでいると考えがちですが、実はそのサイクルは24時間ではありません。温度や湿度が一定で、日光が完全に遮断された、外の様子や時間がまったくわからない洞窟や地下壕あるいは地下室のような場所でしばらく生活すると、人間は約25時間の周期で生活を送るようになることが実験の結果わかっています。
つまり、地球の一日は24時間でも、人体の一日は約25時間なのです。しかし1時間ずれたままでは、当然生活に支障をきたすため、われわれは朝起きて太陽の光を浴びることにより、自分の体内時計を毎日リセットして地球時間に適応しています。
昼夜の区別がはっきりしない都市部の人工的な環境の中で生活していると、洞窟で暮らしているのと同じように、一日のサイクルが24時間でなくなってしまうことがあります。夜中でもコンビニやレストランは営業していますし、携帯電話やパソコンの明るい画面がいつでも目に飛び込んでくるからです。こうした不自然な明るさのサイクルから一歩引いて、正常な生活サイクルを取り戻すためには、朝まず日光を思い切り浴びることが大切です。朝起きて日光を浴び、夜には強い光を目に入れないようにすることで体内時計を正常なレベルに整えましょう。
このように脳内にある時計によって管理されている周期のことをサーカディアンリズムといいます。(生体リズム、概日リズム、生物リズムとも呼ばれます)「サーカ」は「およそ」という意味で、「ディアン」とは「一日」を意味します。つまり、「およそ一日のリズム」というわけです。このサーカディアンリズムという人間の基本的行動サイクルが崩れると、昼間に強烈な眠気に襲われたり夜にぐっすり眠れなくなったりと、不眠症を引き起こす原因となります。
◎ レム睡眠とノンレム睡眠
睡眠はその深さと特徴によって、レム睡眠とノンレム睡眠に分類することができます。眠りに落ちると、まずレム睡眠が始まり、しばらくすると深いノンレム睡眠のステージに入ります。レム睡眠とノンレム睡眠はセットで発生し、平均的には約90分サイクルで繰り返します。ベッドに入ってから目覚めるまでの間、個人差はありますがおおよそ約80分~110分のサイクルで、レム睡眠とノンレム睡眠は交互に規則的に4~5回繰り返します。6時間睡眠の人の場合、約90分サイクルを4回繰り返しているわけです。この90分サイクルは、5歳~10歳程度の子どもの時期に形成されることがわかっています。
なお、最初の約3時間はノンレム睡眠の占める割合が高く、その後はレム睡眠とノンレム睡眠は交互に発生し、起床が近づくにつれてレム睡眠の時間が長くなってきます。
なぜこのように、人はレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返す睡眠サイクルを守っているのでしょうか。眠りに落ちてから目が覚めるまで、深い眠りのまま眠ったほうがぐっすり熟睡できるようにも思えます。もし最初から最後までノンレム睡眠だけだとすると、長時間にわたって脳の活動レベルが休息状態となり脳の温度も下がってしまい、起きたときに正常な活動レベルまで戻すのが難しくなってしまうのです。途中に適度にレム睡眠をはさむことにより脳の温度が下がりすぎることを上手に防いでいるわけです。この仕組みがあるため、朝起きたとき、大脳がスムーズに活動を再開し一日を始めることができるのです。
◎ レム睡眠とは
身体は休息状態なのに、脳は覚醒に近い状態で活動している睡眠のことをレム睡眠といいます。「カラダの眠り」と考えるとわかりやすいでしょう。こうした睡眠状態においては、顔の筋肉が軽く痙攣したり、眼球が非常に速くグルグルと回り、それは閉じたまぶたの上からも確認することができます。この特徴的な速い眼球の動き(Rapid Eye Movements)の頭文字をとって、REM(レム)睡眠といいます。眼球が動くということは、脳が活動している証拠です。
レム睡眠時は、脳は深い休息状態に入っていないため、夢を見ることが多いようです。明確な夢を見て、夢の中で何かを目で追いかけているから、眼球が動いているとも言われています。レム睡眠の最中に起こされると、夢を見ていたことをハッキリと認識できる傾向があります。ノンレム睡眠の最中にも夢を見ることがないとは言えませんが、仮に見たとしてもそれを本人が覚えていることはありません。
ベッドに入って眠りに入ると、眠りはどんどん深いノンレム睡眠の状態に入っていきます。1時間ほどたつ頃には、逆に眠りは少しずつ浅くなり始め、入眠から約90分後にはレム睡眠に入ります。この最初のレム睡眠は約10分間持続します。こうしたレム睡眠は約90分周期でくり返し発生し、明け方に近づくほど長くなり、最大20分程度になります。通常睡眠中に発生するレム睡眠の時間を合計すると、一晩に映画一本分の2時間ほどになります。レム睡眠は一夜の睡眠のうち後半部分により多く、睡眠全体に占める割合は約20%です。
レム睡眠の間は、自律神経系の活動が非常に不安定となるため、血圧の変化が激しくなったり、心拍や呼吸は不規則かつ速くなります。睡眠中に原因不明の突然死を遂げるケースがありますが、こうしたレム睡眠中の自律神経の乱れが原因となって心筋梗塞などを引き起こしていることがあるといわれています。
◎ ノンレム睡眠とは
レム睡眠以外の比較的深い眠りの状態をノンレム睡眠(レム睡眠ではない、という意味)といいます。細胞の新陳代謝を高めたり、免疫力を強化する活動がノンレム睡眠の時間に行われているといわれています。筋肉の活動は休止していませんが、脳は休息状態になります。体温は少し低くなり、呼吸や脈拍は非常に穏かになってきて血圧も下がります。
大脳の活動が休息状態に入るため、こちらは「脳の眠り」であるとも言えます。いわゆるぐっすり寝ている状態ですので、多少の物音がしたり、軽くゆさぶられても目が覚めることはありません。もしノンレム睡眠の最中に強制的に起こされたとすると、人体はすぐさま活動を開始することができません。脳の中でも最も大きい大脳が休止状態から活動を開始するまではしばらく時間が必要で、それまでの間はいわゆる「寝ぼけた」ような行動をしてしまうことになります。ノンレム睡眠の間も夢を見ることがありますが、レム睡眠中に見る夢ほどはっきりした内容ではなく、多くの場合本人は覚えていません。
眠りに落ちた直後の3時間の間に深いノンレム睡眠は集中的に発生します。最初の3時間にぐっすり熟睡し、深いノンレム睡眠をしっかりとれば、起きたときに「熟睡できた」という満足感が高くなります。実はほとんどの場合、居眠りはノンレム睡眠です。短時間でも昼寝や居眠りをすると、頭がすっきりするのはノンレム睡眠によって脳が休息できたからです。
深い眠りであるノンレム睡眠を体験することができるのは、実は大脳が発達した哺乳類と鳥類だけです。大脳が未発達の魚類、両生類、爬虫類などはノンレム睡眠がありません。
第3回でした、じゃんじゃん。

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