Pak Dzhun Gyu (朴 俊奎)さんのこと2012年01月17日 11:05

 ロシア語通訳のパクさんと言っても、もう知る人もいないと思います。
 2003年1月18日になくなりました。享年83歳でした。

 パクさんにはじめてお目にかかったのは、全道労協が当時のソ連にピオニールキャンプ交流団を派遣した1985年頃だと思います。全道労協と北教組がタイアップして、30人くらいの子供をサハリンのオリンピアというピオニールキャンプに連れて行きました。
 当時は直接サハリンに入れなかったので、千歳から新潟に飛び、ハバロフスクに一泊してから、経由でユジノサハリンスクに行きました。帰りも同じルートでした。あわせて10日くらいの日程だと思います。
 覚えていることは、トイレが詰まったことと、生ぬるいビールを飲んだことと、帰りのハバロフスクで外国人専用の売店(名前を忘れた)でハイネケンの冷たいビールを飲んだときのうまかったことと、子供のお土産に何を間違ったか、赤ん坊用の起き上がりこぼし人形が一人一つ持たされたことぐらいですが、ピオニールキャンプはソ連の子供たちが2ヶ月くらい年齢に関係なく過ごすところで、プログラムなどもとてもよかったというのがぼんやりと印象としてあります。よく考えたら、親たちは1ヶ月以上避暑地で過ごすので、その都合もあったのかもしれませんが。
 そのとき、当時の全ソ労評・サハリン労評の議長であったゾートフさんが今でもサハリン・北海道交流協会の代表をしているのだから、なんと長生きなことか。
 パクさんは当時サハリン労評の議長専属通訳として、交流団の世話に当たってくれました。

 その後、連合北海道の時代になり、定期交流で来るときも、こちらの団が行くときも、常に通訳としてだけでなく、お世話にほんとになりました。
 そのパクさんが、1992年に菅野美知子さんと結婚され、北海道に永住されてからも、日ロ交流のたびにお世話になっていました。
 パクさんは、そのほか、日ロ(ソ)交流団体や行政からも信頼が厚く、全国のロシア語通訳の一流と言われている人でパクさんの名前を知らない人はいないほど、日ロの交流に尽力されてきました。
 私は、こんにち、日ロの交流がギクシャクしているのはこのような人材が、つまり、ソ連・ロシア側の事情に精通し、信頼が高い人で、日本側にも陰ひなたで活躍してくれる人がいないことも大きな要因と考えています。
 サハリンやクリル墓参しかり、日ソ極東会議しかり、北海道・ロシア極東実務者会議しかり、日ロ労組交流しかりです。
 その極東会議では、準備のため、私とパクさんと当時の道議会副議長の3人が、ウラジオストク経由でモスクワとサンクトペテルブルグに行きました。1月のほんとに寒いときで、モスクワでは帽子(例の毛皮のロシア帽子)をかぶっていないと、道行く人が「おまえはどうしてそんな格好で歩いているのか」とずいぶん注意されたものでした。
 モスクワで当時のソ連外務省次官と会談の後、サンクトペテルブルグへ「赤い矢号」で行き、確かトルストイやチャイコフスキーの墓を見たり、当然イサク寺院や、ほれほれあの有名な美術館、そうそう、エルミタージュにいき、壮大な美術館をほんの半日で見てまわりました。何とか一生のうち、あとそう長くはないけど、もう一度行きたいと思います。

 そんな元気なパクさんでしたが、2001年頃から体調を崩し、幌南病院や緑愛病院に入院されることが増え、心配していましたが、残念ながら2003年に亡くなりました。今でも里塚の火葬場で待っている間、涙が止まらなかったことを思い出します。

 パクさんの家系はいわゆる日本軍の強制連行ではありませんでした。パクさん自身もウラジオストクで生まれ、樺太時代の恵須取尋常小学校を卒業していますが、ソ連時代にウラジオの極東工科大学を卒業して、サハリンの炭鉱に就職して副炭鉱長をつとめています。1968年から通訳として日ソ交流に活躍し、当時のKGBなどについて、私たちによく解説などしてくれました。
 前にも書いたかもしれませんが、ショッキングだったのは、当時のソ連軍の中尉で、それは北海道占領の際の通訳としての位置づけだったと、ご本人の口から聞かされ、もしそうなっていたら、今の私たちの暮らしはどうなっていたか、もしかしたら私の存在はなかったかも、など、びっくりしました。

 そんなこんなで、菅野美知子ばあちゃんも入院しているようですが、パクさんが亡くなってから9年たち、思い出していました。
 今年はサハリンに墓参りに行ってこようかと思っています。
 しんみり、じゃんじゃん。

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