メタボから身を守ろう 札幌医科大学 島本和明 学長 ― 2013年11月14日 11:26
昨日の第4回北海道労働福祉講座の要約です。
1.平均寿命と健康寿命 人は血管とともに老いる(Dr.オスラー)
男性79.64才、女性86.39才が平均寿命。男性は世界4位、女性は世界1位。75才以上(後期高齢者)に至る比率は、男性72%、女性84%とますます高齢化します。
一方、自立できていることを表す「健康寿命」は、男性70.42才、女性73.62才で、平均寿命との格差で考えると、男性は9年間、女性は13年間の要介護です。
北海道の健康寿命は男性70.03才、女性73.19才と、47都道府県では32位、34位で、憂慮すべき位置にあります。
「人は血管とともに老いる」は医学では有名なウイリアム・オスラー博士(米国近代医学の父)の言葉です。老化を考えるポイントは血管に集約され、特に動脈硬化です。人は血管に全く問題が起きなければ老衰で死亡するまでの寿命は140才といわれています。
日本人の死因の1位はガン(30%)ですが、心臓疾患と脳血管疾患を合わせた血管疾患は29%になり、ほぼ同率です。
これを65才以上でみると、ガンが29%、脳心臓疾患が30%となります。要介護の原因も26.7%が脳血管疾患です。
ガンは5年生存率を目安にします。5年たって再発しなければ治癒と言うことです。一方、脳心臓疾患は生涯にわたって影響しますから、社会的影響では脳心臓疾患を重視すべきです。
2.飽食の時代とメタボ
動脈硬化の原因は「高コレステロール血症」「喫煙」「メタボリックシンドローム」です。高血圧はメタボに含まれます。メタボは糖尿病、高血圧、肥満、高脂血症を総称します。どれか一つでは数値が境界程度でも、二つ以上揃うとメタボといいます。
その原因は、食事の西洋化です。「沖縄クライシス」という言葉があります。沖縄には1950年代からファストフード店ができて、食事が変わりました。全国的には1970年代からです。
もともと和食文化は、「一汁三菜」で魚が主菜でした。魚はEPAやDHAという身体によい脂肪酸をたくさん含んでいます。また、和食は豆腐や油揚げなど大豆製品に含まれる「イソフラボン」でタンパク質を摂取していました。それが今は、肉が中心となり、しかも、一人前ずつではなく、大皿を多人数で食べるため、過食になりがちです。
北海道は、肥満度が全国5位、野菜の摂取量は全国40位くらい、歩く量は全国35位と、メタボになりやすい数値がそろっています。また、女性の喫煙率が36年間全国1位(21%)となってもいます。
実は脳卒中の原因が、従来の血栓ができる原因(凝固能)から、糖尿病や肥満、高脂血症へと変わってきてもいます。これは、血管内壁を傷害する原因が変わってきていることを示します。実際に血栓や動脈硬化の症状が出るのは、実は、原因となるメタボが影響を始めてから20年ほどかかります。「静かなる殺人(サイレント・キラー)」といわれています。しかし、手遅れと言うことはありません。薬を服用してコントロールすることができます。また、この薬は飲み始めたら一生涯という誤解がありますが、改善によりメタボを脱却したらやめることもできます。
3.なぜ肥満になるのか
古代人は病院も救急車もなかったので、けがをした人の中で血液の凝固能が高い人や血圧維持能力の高い人が生き残ってきました。
また、食料も十分には摂取できないため、エネルギーの蓄積、特に糖分や脂肪分、塩分をためる能力を身につけてきました。これを後世の人は「倹約遺伝子」と呼びます。
しかし、いま、ここ50年ほどのことですが、技術革新で食料が豊富に手に入るという「飽食の時代」を迎え、また、自動車の普及という運動不足を招く時代になり、この倹約遺伝子を敵に回していると言うことができます。これがメタボリックシンドロームです。自動車の普及比率と肉食の進む比率、そしてメタボ化する比率は時系列で一致します。
男性は内臓型肥満が多く、俗にリンゴ型といいます。女性は皮下脂肪型で洋なし型です。体重を減らすいろんなものがありますが、体重減少はまず筋肉から落ちますので、運動を同時並行にしないと大変なことになります。特にリバウンドは内臓脂肪にリバウンドしますから、運動せずに体重を落とし、失敗してリバウンドを繰り返すことは結果的に内臓脂肪だけを増やすことになります。
メタボは、血圧130~139/85~89、血糖110~125mg/dl、中性脂肪150mg/dl、HDL40mg/dlを境界とします。
特に糖尿病はこの50年で50倍になりました。糖尿病は血管病です。網膜の毛細血管(失明)や糖尿病性腎症(透析)、足の血行障害(壊死)や神経障害(痛み)などを招きます。
また、高血圧の原因は、食塩(6g以下を目標)や肥満、ストレスの他に遺伝もあります。糖尿もそうですが、6割は遺伝によります。減塩では最近「スプレー醤油」というのも出てきました。食べるとこにだけ醤油をつけておいしく食べようとしますが、結果的に減塩になります。
肥満は、体重を3キロ減らすとメタボの数値の全てが減少します。特定健診の受診率を上げることも重要です。特にサラリーマンのつれ合いの受診率です。
4.今日からすべきこと
まず、バランスの取れた食事と運動です。運動はランニングやジョギング、散歩など、どの方法でも、自分にあった方法で長続きできるものを探してください。
次に、毎朝体重を量ることです。食事制限より成功率は高いです。はかった数値を手帳当に書いて秘密にするか、カレンダーに書いて公開するかは自由ですが、必ず記録してください。
三つ目は「特定健診」の受診促進です。
これらは自分で選択できる方法です。しかも、「明日から」でなく、「今日・いまから」取り組んでください。
ということでした。私は、BMI(肥満度指数)でいうと22.59ですから、男性のほぼ標準です。しかし、「リンゴ型」でもあります。
内臓脂肪を減らすことが必要ですね。じゃんじゃん。
1.平均寿命と健康寿命 人は血管とともに老いる(Dr.オスラー)
男性79.64才、女性86.39才が平均寿命。男性は世界4位、女性は世界1位。75才以上(後期高齢者)に至る比率は、男性72%、女性84%とますます高齢化します。
一方、自立できていることを表す「健康寿命」は、男性70.42才、女性73.62才で、平均寿命との格差で考えると、男性は9年間、女性は13年間の要介護です。
北海道の健康寿命は男性70.03才、女性73.19才と、47都道府県では32位、34位で、憂慮すべき位置にあります。
「人は血管とともに老いる」は医学では有名なウイリアム・オスラー博士(米国近代医学の父)の言葉です。老化を考えるポイントは血管に集約され、特に動脈硬化です。人は血管に全く問題が起きなければ老衰で死亡するまでの寿命は140才といわれています。
日本人の死因の1位はガン(30%)ですが、心臓疾患と脳血管疾患を合わせた血管疾患は29%になり、ほぼ同率です。
これを65才以上でみると、ガンが29%、脳心臓疾患が30%となります。要介護の原因も26.7%が脳血管疾患です。
ガンは5年生存率を目安にします。5年たって再発しなければ治癒と言うことです。一方、脳心臓疾患は生涯にわたって影響しますから、社会的影響では脳心臓疾患を重視すべきです。
2.飽食の時代とメタボ
動脈硬化の原因は「高コレステロール血症」「喫煙」「メタボリックシンドローム」です。高血圧はメタボに含まれます。メタボは糖尿病、高血圧、肥満、高脂血症を総称します。どれか一つでは数値が境界程度でも、二つ以上揃うとメタボといいます。
その原因は、食事の西洋化です。「沖縄クライシス」という言葉があります。沖縄には1950年代からファストフード店ができて、食事が変わりました。全国的には1970年代からです。
もともと和食文化は、「一汁三菜」で魚が主菜でした。魚はEPAやDHAという身体によい脂肪酸をたくさん含んでいます。また、和食は豆腐や油揚げなど大豆製品に含まれる「イソフラボン」でタンパク質を摂取していました。それが今は、肉が中心となり、しかも、一人前ずつではなく、大皿を多人数で食べるため、過食になりがちです。
北海道は、肥満度が全国5位、野菜の摂取量は全国40位くらい、歩く量は全国35位と、メタボになりやすい数値がそろっています。また、女性の喫煙率が36年間全国1位(21%)となってもいます。
実は脳卒中の原因が、従来の血栓ができる原因(凝固能)から、糖尿病や肥満、高脂血症へと変わってきてもいます。これは、血管内壁を傷害する原因が変わってきていることを示します。実際に血栓や動脈硬化の症状が出るのは、実は、原因となるメタボが影響を始めてから20年ほどかかります。「静かなる殺人(サイレント・キラー)」といわれています。しかし、手遅れと言うことはありません。薬を服用してコントロールすることができます。また、この薬は飲み始めたら一生涯という誤解がありますが、改善によりメタボを脱却したらやめることもできます。
3.なぜ肥満になるのか
古代人は病院も救急車もなかったので、けがをした人の中で血液の凝固能が高い人や血圧維持能力の高い人が生き残ってきました。
また、食料も十分には摂取できないため、エネルギーの蓄積、特に糖分や脂肪分、塩分をためる能力を身につけてきました。これを後世の人は「倹約遺伝子」と呼びます。
しかし、いま、ここ50年ほどのことですが、技術革新で食料が豊富に手に入るという「飽食の時代」を迎え、また、自動車の普及という運動不足を招く時代になり、この倹約遺伝子を敵に回していると言うことができます。これがメタボリックシンドロームです。自動車の普及比率と肉食の進む比率、そしてメタボ化する比率は時系列で一致します。
男性は内臓型肥満が多く、俗にリンゴ型といいます。女性は皮下脂肪型で洋なし型です。体重を減らすいろんなものがありますが、体重減少はまず筋肉から落ちますので、運動を同時並行にしないと大変なことになります。特にリバウンドは内臓脂肪にリバウンドしますから、運動せずに体重を落とし、失敗してリバウンドを繰り返すことは結果的に内臓脂肪だけを増やすことになります。
メタボは、血圧130~139/85~89、血糖110~125mg/dl、中性脂肪150mg/dl、HDL40mg/dlを境界とします。
特に糖尿病はこの50年で50倍になりました。糖尿病は血管病です。網膜の毛細血管(失明)や糖尿病性腎症(透析)、足の血行障害(壊死)や神経障害(痛み)などを招きます。
また、高血圧の原因は、食塩(6g以下を目標)や肥満、ストレスの他に遺伝もあります。糖尿もそうですが、6割は遺伝によります。減塩では最近「スプレー醤油」というのも出てきました。食べるとこにだけ醤油をつけておいしく食べようとしますが、結果的に減塩になります。
肥満は、体重を3キロ減らすとメタボの数値の全てが減少します。特定健診の受診率を上げることも重要です。特にサラリーマンのつれ合いの受診率です。
4.今日からすべきこと
まず、バランスの取れた食事と運動です。運動はランニングやジョギング、散歩など、どの方法でも、自分にあった方法で長続きできるものを探してください。
次に、毎朝体重を量ることです。食事制限より成功率は高いです。はかった数値を手帳当に書いて秘密にするか、カレンダーに書いて公開するかは自由ですが、必ず記録してください。
三つ目は「特定健診」の受診促進です。
これらは自分で選択できる方法です。しかも、「明日から」でなく、「今日・いまから」取り組んでください。
ということでした。私は、BMI(肥満度指数)でいうと22.59ですから、男性のほぼ標準です。しかし、「リンゴ型」でもあります。
内臓脂肪を減らすことが必要ですね。じゃんじゃん。
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