自殺予防ゲートキーパーって?2014年05月09日 15:07

19回になりますが、「北海道ブロックセイフティネットワーク集会」をしました。
 今年のテーマは、自殺問題としました。昨年は15年ぶりに全国の自殺者数が3万人を下回りましたが、それでも、2万7千人を超え、深刻な問題であることに変わりありません。年齢別では、60才以上が40%を越え、また、60%は無職者です。原因としては、精神疾患を含む健康問題が半分を占めます。北海道では、やはり若干減少しましたけれど、全国で6位の1,246人が亡くなっています。男女比はほぼ2:1です。メンタル対策の最優先事項は、この自殺をなんとかして予防することであると、誰もが思いますが、一方で、「気持ちがわからない」「しかたがない」と言うことがないでしょうか。今回のテーマである「自殺予防ゲ-トキーパー」は、職場や働く仲間に起きる最大の不幸に、対処する心構えと方法を学びました。

「絶望」の氷は、気付いて、聴いて溶かす
 講師は、北海道医療大学心理科学部教授の坂野雄二先生にお願いしました。坂野先生は、「少し減ったと言ってもまだまだ安心できる状況にはない。この15年間で50万人が自殺している」と警告し、背景として気分障害100万人、不安障害60万人の患者がいることや、「労働者健康調査」で6割が強い不安を感じていることなどを上げられました。うつ病は生涯で見ると7~8人に1人がかかるという今や一般的な病気であり、その病状のなかで自殺念慮が高まるということです。しかし、基本的に周りが気づけば自殺は予防が可能なことです。その「気づく」とは、自殺未遂はもちろん、メンタル不調者の精神・身体疾患の病歴、性格や行動傾向を把握し、孤立させないということです。特に近親者の死や離職したなどの喪失感が強いときや、アルコール・薬物への依存が見られるときに、周囲の人が十分サポートすることができれば、予防することが可能です。

心の「すれ違い」をしないように
 「やる気が出ない」 に 「しっかりしろ」
 「なんかイライラする」 に 「がまんしなさい」
 「どうしていいかわからない」 に 「いろいろ考えてごらん」
 「誰も認めてくれない」 に 「誰かが見ているものだよ」
 「死ぬしかない」 に「 馬鹿なこと言うな!」
 これらは、悩める人の心と、サポートすべき人の心がすれ違っています。
 まずできることは、「聴く」ことです。なぜその人がそんなことを考えるのかという原因解明や、人生を語るような説得は後回しでも十分です。まず命をつなぐためには、今の気持ちをしっかり聴くことからはじめなければなりません。そして、自殺以外の解決手段を一緒に探すことです。坂野先生は、「問題を理解することではなく、問題を抱えた人間を理解する」と表現されました。
 聴き方にはもちろん気をつけます。「はい」か「いいえ」で答える問いかけでは次の会話に繋がりません。例えば、顔色のさえない人に「どうしたの?調子が悪いの?」と聴けば、心配していることは伝わっても、「べつにどうということは・・・(いいえ)」で終わってしまうかもしれませんが、「どうしたの?体調はどんな感じ?」と聴いたら、いろいろ説明してくれるかもしれません。さらに「名前を呼ぶ」、「笑顔とうなずき」で相手に関心を持っていることを伝えます。
 うまく話し出してくれたら、相手の話のペースを大切にし、たとえそれが自殺をほのめかすことでも 「あわてない」ことが重要です。「なぜ?」「どうして」とは聴かないで、今どんな気持ちかをたずねます。
 悩む人は、話すことで、まず自分の心を整理しようとします。聞き役の人に分かってもらえたと感じたら、それだけで安心します。自信を少し回復できるかもしれません。自殺以外の解決方法に気づくかもしれません。したがって、聴く側は、推測や思い込み、偏見があってはなりません。いきなり説得しようとしても無理なことが多いと言います。

ゲートキーパーの役割
 悩める人に気づいたら、まず聴くことと覚えました。しかしそれが全てではありません。安心してもらい、ゆっくりと話を聴き、心配していることを伝え、問題解決を一緒に考えていきます。これはいっぺんにはできないことです。信頼関係を築き高めていくことが必要です。しかし、もし悩める人の状態がとても危険であれば、精神科医などの専門家の手を借りることが絶対に必要です。それが結果として「杞憂」であったら、その方がいいのですから。もし、その恐れがある人が見えなくなってしまったら、ちゅうちょ無く警察に連絡することです。

 もし、万一、「死にたい」という人が自分の前にいたら、次のことに気をつけましょう。
① 驚かない、批判しない、善悪判断はしない。
② 危険性の度合いを心の中で評価する。(専門家に向かう必要度)
③ ゆっくりと話し、心配していることを伝える。
④ しばらく目を離さない。(仲間どうしの連携も必要)
⑤ 少し落ち着いたら、問題解決を一緒に考えていく。

 「ゲートキーパー」が悩み多い人に、例えば労働組合が、何をしたらよいかというと、「適切な支援をまず提供するための準備をする」ことになります。それは、悩んでいる人が「誰もわかってくれない」とか「心配してくれない」と考えやすい一方で、自分ではなかなか解決方法が見い出せないことがあり、ゲートキーパーは、悩める人に寄り添いながら、その解決方法を一緒に考えて、示すことが必要だからです。

 講座のⅡは「北海道いのちの電話」の南理事長におこしいただき、365日24時間の活動について、事例を交えてお話しいただきました。
 電話してくるたいていの人は、話すことで安心が増えるという感想を持つようです。その中には「常連」さんもいるようですが、道内だけでも2013年に約2万件、一日平均50件ほどの対応は大変であることがよく分かります。自殺念慮が感じられるのはその1割ほどと言うことですが、いのちの電話の活動が「思いとどまる」ことにつながっていると、強く感じました。
 北海道いのちの電話の運用で、今問題になっていることは相談員が足りないことだそうです。相談員になるには1年半から2年の研修が必要だそうですが、全くのボランティアでありながら365日24時間の体制を維持していくために、相談員になってくれる方の募集をされています。
 また、運営経費は大部分が個人や団体の寄付だそうで、労働組合には各種の会議やイベントなどで周知を依頼し、寄付をお願いしたいと言うことでした。当日の資料にも郵便振替用紙が配られました。

 道内で年間1千2百人。どこの職場でも、自殺の例があるはずです。しかし、多くが「個人的なこと」とされています。
 本当にそうでしょうか。
 今の世の中では、「危ない」と知って(予見)いて、放置すると、社会的責任が発生します。くれぐれもおこたりなく。
 じゃんじゃん。

くだらない集団的自衛権論争2014年05月16日 10:35

 安倍晋三が調子に乗って、集団的自衛権を憲法解釈変更で乗り切ろうとしている。実にくだらない行為であり、それに異を唱えない(支持率が下がらない)国民にもあきれたモンだ。

 そもそも、国連憲章は以下のようになっている。

 「第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」において、第42条〔軍事的措置〕では「安全保障理事会は、第41条に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。」と規定し、第51条〔自衛権〕では「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国が措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。」としている。
 つまり、国際的な枠組みでは、国際紛争を安保理がコントロ-ルすることを原則とし、「急迫不正の侵害があること(急迫性、違法性)」、「他にこれを排除して、国を防衛する手段がないこと(必要性)」、「必要な限度にとどめること(相当性、均衡性)」がある場合に、すでに明確な攻撃が認められる場合に限って、個別的・集団的自衛権を認めており、行使後は速やかに安保理に報告することになっている。

 これは国連に加盟する以上、守るべき枠組みであり、はみ出してはならないものだと理解する。ただし、「拒否権」問題で、安保理が有効に機能しているかどうかと言うことは、別にある。

 一方、日本国憲法は、第9条で「国の交戦権はこれを認めない」と宣言しているのだから、仮に日本を他国が攻撃する事態になっても、反撃しないで、国連安保理の始動を待つことになる。
 ただ、現状は、自衛隊が存在して、抑止力を誇示しているが、実際行動では、専守防衛を基本に、日本の領土・領海・領空を侵犯するものに対しては、「排除行動」を取ることになり、さらに日米安保が発動されれば、それに米軍が参加することになる。日米安保を国民が否定しない限り、現状ではそのように機能するはずである。
 この状況である限り、日本国自衛隊の「排除行動」は個別的自衛権の範囲であり、米国が集団的自衛権を行使することになるから、今更特別に憲法解釈の変更など必要ない。

 ではなぜ今安倍晋三が集団的自衛権問題を持ち出したか。
 昨年秋に日米と米韓は個別に「先制的自衛権」の議論をはじめた。これは北朝鮮がミサイルによる核攻撃を企図したと明確になった場合に、「先制的自衛権」をもって、事前に先制攻撃を行い発射を阻止するというもので、極めて危険な枠組みであるが、あまり報道では騒がれなかった。
 つまり、今の自衛権論争は、具体的に北朝鮮をターゲットにした先制自衛権論争となっているのである。
 もしそうでないというのであれば反論してほしいが、集団的自衛権行使のみを議論しているとすれば、これほどばかばかしい議論はなく、米国民さえも、「いつから日本はこんなに右翼的になったのか?」と感ずるほど、空虚な、誇大妄想議論だと思う。
 集団的自衛権行使というならば、どの国がどこの国を侵略しようとしているのか、北朝鮮なのか、中国なのか、あるいは韓国なのか。実際にその能力(脅威)が存在するのか。それをまず国の情勢分析として確立してから、「じゃあその際にどのように対処するのか」のなかで、解釈改憲などと言う姑息な手段ではなく、交戦権を規定する憲法改正に進むのが筋ではないか。

 今のところ、国民にその意思はないと思うが、どうだろう。
 じゃんじゃん。