産業衛生学会に行ってきました ― 2014年06月04日 13:00

 岡山で開催された第87回産業衛生学会に行ってきました。産業衛生学会は、産業医や産業保健師・看護師などの医療専門家や、職場の衛生管理者、企業の安全衛生担当者などが参加して、化学物質や公衆衛生など労働衛生問題について様々な視点からスキルアップを目指すもので、十をこえる各種のシンポジウムや研究会が開催されます。

 「これからの職場改善」のシンポジウムでは、POSITIVEプログラムでおなじみの労働科学研究所の吉川徹副所長が、「人間工学チェックポイント第二版」を題材に、職場視察に使う「アクションチェックリスト(以下ACL)」について、「人間工学の六領域で作成されており、しかも身近な改善事例をもとに実施可能な低コスト改善を目指している。誰でも、どこでも巡思に役立つもの」と紹介しました。「要は、職場で取り組んできて、自慢したいこと」の集大成であるのがACL。福岡徳州会病院の坂田知子検査部長は、「職場のトップが改善の必要性を認め号令を掛ければ必ずできる」と。また、日立製作所水戸健康管理センターの中谷敦センター長は「高コスト改善と低コスト改善の両方を考案し、みんなで決めるときには当然低コスト改善を優先することになり、則実行することになる」。ILOの川上剛上級専門家は「世界中で様々な業種の「改善プログラム」が開発されており、しかもその研修にはほとんどお金がかからないので、普及が進んでいる」などの報告がありました。
 会場とのやりとりでは、「継続するためにはどうしたらよいか」、「グループワークはどのように進めたらよいか」、「トップの関わり方は」などの質問が出され、パネリストから「ほめることが大切で、賞を設定してみては」、「核になる人材がしっかりしていたら、GWもしっかり進められる」、「トップは“やる”という方向性を示せばあとは担当者が細部を実行するのみ」などの応答がありました。座長からまとめとして、「職場の改善はみんなが議論してヒントがまとまれば、従来からも、いろいろ実行されてきていること。職場の能力を信じて改善を進めるべきだ。自宅をいろいろ模様替えしたり使いやすくすることと、職場で工夫を重ね、仕事をしやすくすることは同じ」と今後も職場改善の取り組みを広げていくよう促されました。会場は、予想以上に多くの参加者であふれ、とてもおもしろかった分科会でした。

 スキルアップで生きやすく 発達の“アンバランス” (発達障害)

 「職場における発達障害への対応・支援」では、まず川崎医療福祉大学の寺尾孝士教授が、発達障害者の特性について、「明日は明日の風が吹く」と言っても、頭の中に風がゴーゴー吹いている情景しか浮かばない、「メモをとれ」と注意してもメモを取ったら音が聞こえなくなる、「(忙しいから)手を貸して・・」というと、手は外れないから貸せないという反応になるなど、詳しく解説されました。その結果、他人との意識のすれ違いや、ルールが身につかない、仲間はずれにされやすいことになり、二次的に精神疾患を起こすことが多いとされています。
 EAP(就労支援プログラム)を運営している谷原弘之副部長は、会社のルールを教えることからはじめており、本人が自分を変えるという自覚が大事と。例として、上司から「今日の天気はいいね」と言われたときに、空のことか気温のことか湿度のことか迷うことを上げていました。発達障害者への指示やルールの説明はメモにすることと、職場を混乱させる行為がある場合は、「・・・してはいけません」と明確に誓約させることが必要と話していました。
 宇都宮大学の梅永雄二教授は、発達障害者が生きづらいのは世間の常識を覚えることなく成長してきたからで、それを教えれば生きやすくなる。人間の生活スキル(ライフ・スキル)はハードスキルとソフトスキルに分けられるが、自閉症スペクトラムに位置づけられる人は対人関係が希薄であるために、ライフスキルが十分でなく、したがって自立力も弱くなって、就職が難しくなっている。ただし、ライフ・スキルは再教育によって修正することが可能だと。
 ハードスキルとは仕事そのものの能力で、作業能力でもあり、これはその職場に入ってから身につけるもの。一方、ソフトスキルは、ジョブマッチングや感情の制御など日常のなかで形成されるもの。
 例えば、ハードスキルを小売業で考えると、職業能力として商品のパッキングや値段付け、品出しなどとなりますが、「簡単な作業ができなかった」、「仕事が遅くて向かなかった」などがハードスキルの問題点となる。一方、ソフトスキルは「自分のペースでできなかった」、「仕事がつまらなかった」、「期待に応えようとがんばったが疲れた」などや、「障がいなど関係ない努力して治せと言われた」、「普通の人と同じ感覚を身につけろと言われ精神的ダメージを受けた」、「人間関係が複雑でパニックを起こした」などが発達のアンバラを持つ人の職業に対するスキルの現状である。
 これを修正するためには、ライフスキルから順次修正することが必要で、「朝決まった時間に起きることができる」、「家に鍵をかけて外出する」などからはじまり、「職場に着いたら挨拶ができる」、「昼休みに適切な休憩を取ることができる」、「タイムレコーダーを押すことができる」などの職場での基本的なことや、「必要のない品物の勧誘を断ることができる」、「給料を適切に分けて使い、貯金ができる」、「爪を切るなど身ぎれいにできる」、「自分の部屋を掃除できる」などなど、社会的に生きるルールを周り(家族や同僚)が教えていくことが必要となる、ということでした。
 発達のアンバラを抱える人は、小中学校で12%程度、大人で4~6%程度といわれています。ほぼどの職場でも「ユニークな人」や「変わっている人」がいることになります。そのような人も一緒に快適に仕事を進めていくためには、その特性を理解し、少し面倒でも欠けるところを補完する作業をしていく必要があります。例えば、「五感が鋭すぎる」特性に対しては、派手な色のタックシールを使わないことや、注意欠陥のある場合は、業務上の「伝達」に本人と周囲が工夫を加える(上記写真の様なメモ)ことが必要となります。

 いわゆる発達障害については、「脳の発達度合がアンバランスであること」と定義され、大きくわけて三つのグループに分けられます。①LD(学習障害)は一般的な職場にはあまりいないが、識字率の低い時代には普通に暮らせた。②AD/HD(注意欠陥・多動性障害)は10秒もじっとしていられない人のこと。③PDD(広汎性発達障害)のグループとして、自閉症と高機能自閉症はIQ(知能指数)の違いによる。アスペルガー症候群(AS)は目から上では決して笑わない自己中心的な人が特徴であるなど、それぞれ微妙な違いです。特に軽度の発達障害者は「不器用」といわれてきたのですが、集中力が高いため、「職人」として大きな功績を挙げる人もいます。

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