愛がそだてる赤ちゃんの脳 その2 ― 2015年09月01日 09:11
言語習得はすべて同時進行
産婦人科病棟の病室に、最初の被験者が運ばれてきた。 研究アシスタントが、ボタンのようなセンサーがたくさんついた装置を赤ちゃんの頭にかぶせた。この実験では、さまざまな音の連なりを聞かせて、脳の活動を調べる。
同様の方法で、新生児が異なる音のパターンをどの程度識別で、きるか探ってきた。赤ちゃんに音の連なりを聞かせ、体内の血流変化を計測する近赤外分光法を用いて、脳の活動状態を調べるのだ。
その結果、「ム・パ・パ」のように2番目と3番目に同じ音が続くABBパターンと、「ム・パ・ゲ」のようにすべての音が異なるABCパターンを聞かせた実験では、ABBパターンのほうが発語と聴覚処理を担う脳の領域が活発に働くことがわかった。
その後の研究で、新生児にはAABパターンとABBパターンの違いを聞き分ける能力があることも確認された。
こうした発見に大いに興奮している。音の順番は、単語と文法が成り立つ土台になるからだ。「音の位置に関する情報は、言語にとって非常に重要なんです」と。
新生児が音の順番に反応するということは、言語習得の基礎となる神経回路網は出生時にすでに形成されていることを意味する。これは重要な知見だと。
「言語の習得は一定の順序に従って進むと、長年考えられてきました。まず音を聞きとれるようになり、次に単語の意味を理解し、さらに複数の単語の連なりがわかるといったように。しかし最近の実験で、最初からほぼすべての機能が同時進行で、発達することがわかってきました。赤ちゃんは生まれた直後から文法の規則を習得し始めるのです」
ドイツのライプチヒにあるマックス・ブランク認知脳科学研究所では、生後4カ月のドイツ人の赤ちゃんに耳慣れない言語を聞かせる実験で、こうした言語習得プロセスを裏づける結果を得た。
まず、「兄は歌えます」と「姉は歌っています」を意味するイタリア語の文を聞かせる。3分後にまた別の文をいくつか聞かせるが、そのなかには文法的に間違った文も入れてある。
赤ちゃんの頭に小さな電極をつけてイタリア語の文を聞かせたときの脳の活動を調べた。赤ちゃんの脳は、最初はどの文にも同じような反応を示す。だが何回か繰り返すうちに、文法的に間違った文には明らかに違った反応を示すようになった。
わずか15分ほどで、赤ちゃんはどの文が文法的に正しいかを理解したようだった。「文の意味はわからなくても、文法的に正しいかどうかは判別できるようでした。この段階では、構文規則ではなく、音の並びの規則性で判断するのでしょう」と。
これまでの研究で、2歳半ぐらいの子どもは人形劇の人形が文法的に間違ったせりふを言うと誤りを訂正できることがわかっている。3歳までには、大半の子どもがかなりの数の文法の規則を習得しているようだ。この頃を境に語彙が急速に増え始める。こうした言語能力の開花を支える土台となるのが、神経回路網の形成だ。それにより、耳にした文を音としてだけでなく、意味や構文などさまざまなレベルで処理できるようになる。
子どもが言語を習得するまでの脳の発達過程はまだ完全には解明されていないが、確実に言えることがある。「脳という“器”だけでは不十分で、情報のインプットが必要だということです」
つづく。じゃんじゃん。
産婦人科病棟の病室に、最初の被験者が運ばれてきた。 研究アシスタントが、ボタンのようなセンサーがたくさんついた装置を赤ちゃんの頭にかぶせた。この実験では、さまざまな音の連なりを聞かせて、脳の活動を調べる。
同様の方法で、新生児が異なる音のパターンをどの程度識別で、きるか探ってきた。赤ちゃんに音の連なりを聞かせ、体内の血流変化を計測する近赤外分光法を用いて、脳の活動状態を調べるのだ。
その結果、「ム・パ・パ」のように2番目と3番目に同じ音が続くABBパターンと、「ム・パ・ゲ」のようにすべての音が異なるABCパターンを聞かせた実験では、ABBパターンのほうが発語と聴覚処理を担う脳の領域が活発に働くことがわかった。
その後の研究で、新生児にはAABパターンとABBパターンの違いを聞き分ける能力があることも確認された。
こうした発見に大いに興奮している。音の順番は、単語と文法が成り立つ土台になるからだ。「音の位置に関する情報は、言語にとって非常に重要なんです」と。
新生児が音の順番に反応するということは、言語習得の基礎となる神経回路網は出生時にすでに形成されていることを意味する。これは重要な知見だと。
「言語の習得は一定の順序に従って進むと、長年考えられてきました。まず音を聞きとれるようになり、次に単語の意味を理解し、さらに複数の単語の連なりがわかるといったように。しかし最近の実験で、最初からほぼすべての機能が同時進行で、発達することがわかってきました。赤ちゃんは生まれた直後から文法の規則を習得し始めるのです」
ドイツのライプチヒにあるマックス・ブランク認知脳科学研究所では、生後4カ月のドイツ人の赤ちゃんに耳慣れない言語を聞かせる実験で、こうした言語習得プロセスを裏づける結果を得た。
まず、「兄は歌えます」と「姉は歌っています」を意味するイタリア語の文を聞かせる。3分後にまた別の文をいくつか聞かせるが、そのなかには文法的に間違った文も入れてある。
赤ちゃんの頭に小さな電極をつけてイタリア語の文を聞かせたときの脳の活動を調べた。赤ちゃんの脳は、最初はどの文にも同じような反応を示す。だが何回か繰り返すうちに、文法的に間違った文には明らかに違った反応を示すようになった。
わずか15分ほどで、赤ちゃんはどの文が文法的に正しいかを理解したようだった。「文の意味はわからなくても、文法的に正しいかどうかは判別できるようでした。この段階では、構文規則ではなく、音の並びの規則性で判断するのでしょう」と。
これまでの研究で、2歳半ぐらいの子どもは人形劇の人形が文法的に間違ったせりふを言うと誤りを訂正できることがわかっている。3歳までには、大半の子どもがかなりの数の文法の規則を習得しているようだ。この頃を境に語彙が急速に増え始める。こうした言語能力の開花を支える土台となるのが、神経回路網の形成だ。それにより、耳にした文を音としてだけでなく、意味や構文などさまざまなレベルで処理できるようになる。
子どもが言語を習得するまでの脳の発達過程はまだ完全には解明されていないが、確実に言えることがある。「脳という“器”だけでは不十分で、情報のインプットが必要だということです」
つづく。じゃんじゃん。
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