愛がそだてる赤ちゃんの脳 その42015年09月03日 09:34

 その3で終わらなかったですね。

 1960年代半ば、共産主義の指導者ニコラエ・チャウシェスクの政権下にあったルーマニアでは、農業国から工業国への脱皮を目指して強引な人口増加政策が進められた。避妊や妊娠中絶を法律で制限し、子どものいない25歳以上の夫婦には税金が課せられた。また国営工場に労働力を送り込むため、何千もの世帯が農村部から都市への移住を強いられた。
 こうした政策はやがて数多くの孤児を生むこととなる。親に捨てられた子どもたちはリャガン(ルーマニア語で「ゆりかご」の意)と呼ばれる国営の施設に収容された。
 1989年にチャウシェスクが失脚して初めて、孤児たちの過酷な状況が外部に知られるようになった。乳児期の子どもたちはベピーベッドに寝かされたまま何時間も放置されていた。一人の養育係が15~20人の乳児の世話をしていたため、ミルクを与えるときと入浴させるときくらいしか、一人ひとりと触れ合う時間はなかったのだ。

 こうした乳児期の育児放棄(ネグレクト)が脳の発達に及ぼす影響を探るため、2001年に米国の三つの大学の研究者たちが、6カ所の施設の子ども136人を対象に調査を開始した。

 彼らは施設にいた子どもたちの異常な行動にショックを受けた。調査を始めた段階で2歳未満だった子どもたちの多くは、養育係にまったくなついておらず、動揺したときも養育係に助けを求めなかった。
 「子どもたちはまるで野生児のような行動をとりました。ただ無意味に歩き回ったり、床に頭を打ちつけたり、1カ所でぐるぐる回ったり。その場に立ちつくす子もいました」と。

 子どもたちの脳波を調べると、同年代の一般の子どもに比べて、脳の活動が弱かった。「まるで調整スイッチで、照明を暗くしたみたいに、活動が抑えられているようでした」と。
 ソーシャルワーカーの協力を得て里親を選び、子どもたちの半数を引き取ってもらった。残りの半数はそのまま施設に残った。里親には月々の養育費に加え、本やおもちゃ、おむつなどが支給され、ソーシャルワーカーの定期的な家庭訪問を受けた。

 その後数年間の追跡調査を行ったところ、二つのグループに大きな差異が表れた。2歳までに里親に引き取られた子どもたちは、8歳になった時点で、脳波のパターンが一般的な8歳児と見分けがつかなくなったが、施設に残った子どもたちの脳波は依然として弱まったままだった。

 また、どちらのグループも、同年代の一般の子どもと比べて脳の容積が小さかったが、里親に引き取られた子どもたちの脳は施設に残ったグループよりも白質が多かった。これはニューロンから伸びる軸索が多いことを示している。

 「里親の養育を受けたグループは、ニューロンの結合が増えたと考えられます」と。

 さらに、二つのグループの最も顕著な違いが4歳の段階で明らかになった。それは他者と関係を築く能力だ。「私たちが介入したグループ、とりわけ早い時期に里子になった子どもたちは、普通の子どもと同じように養育者と関係を結べるようになっていました。成長過程の早い段階であれば、脳に十分な可塑性があり、望ましくない体験を克服できるようです」
 この発見は大きな希望をもたらすと。

 乳幼児期に十分な愛情を与えられず発達が阻害された子どもでも、脳が変化しやすい「臨界期」と呼ばれる段階にあるうちに適切な養育環境に置かれれば、発達の遅れを取り戻せる可能性があるというのだ。

<終わり>

 さあ、どうでしたでしょうか。

 一つは、ルーマニアの調査で、いくら学問のためとはいえ、わざわざ里親のいないグループを作るなどという、人道に外れることをしているのは、いかにもアメリカ的であると思います。
 もう一つは、この図にあるように、5才までに脳の機能的なものが決まっていくと言うことは確かなようです。そして、それを育んでいくのは、精神医学が解明したように「お母さん」なのです。

 私の意図することがご理解いただけたら、幸いです。
 じゃんじゃん。

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