シリーズ 睡眠について その15 ぐっすり快眠のために その22015年10月22日 09:25

◎ 安眠のための呼吸法

 寝る前に深呼吸をすることは、安眠のために有効です。息をゆっくりと吐き出すと、筋肉は自然と緩んだ状態となり、副交感神経系にスイッチが切り替わります。ゆっくりと穏かに息を吐き出すことで、心身の緊張をほぐすことができます。
 息を吐いていくにつれておなかが凹み、息を吸い込むときにはその空気がおなかが膨らむことをイメージしながら、ゆっくり大きく息を吸い込んでください。この呼吸法のことを腹式呼吸といいますが、一分に5回程度のペースで複式呼吸法を行うと、すぐに心身がリラックスして眠くなってくるでしょう。部屋を暗くして行うと、より効果が期待できます。
 他にもヨガの呼吸法も複数種類ありますので、自分が一番ラクに実践できる呼吸法をいくつか知っていると精神的にゆとりが出て、穏かな安眠を手に入れることができます。

◎ 安眠のための自律訓練法(自己催眠)

 人間はリラックスしているとき、手足が暖かく重い状態になります。疲労回復やリラックスを目的として、手足が暖かく重い状態であると意識的に自己暗示(自己睡眠)をかけることを自律訓練法といいます。
 自律訓練法はストレス解消、疲労回復、能力開発などに対して効果的であることはよく知られていて、神経症や心身症の治療として実際に利用されている方法です。また、安全・簡単で道具もいらず睡眠薬にたよる必要がないため、不眠に悩む人たちからも広く支持されています。
 自立訓練は一種の自己催眠ですから、以下にご紹介する「暗示の言葉」を使います。暗示にかかりやすい人には効果がありますが、自己暗示であるために、最初から暗示や睡眠を疑っている人には効果が出にくいようです。

それでは、実際に自律訓練法を体験してみましょう。

 声に出さなくてもいいので、以下のステップ1からステップ7まで、心の中で「暗示の言葉」を自分に言い聞かせるように繰り返します。
 ゆったりとした気分でリラックスできるようなイスやソファに深く座って、軽く目を閉じましょう。ベッドやフトンの上で仰向けに横になれれば、なお良いでしょう。

ステップ1.『気持ちがとても穏やかになってきた』
 体を軽くゆするようにしてゆったりと気持ちが落ち着いている自分をイメージしてください。
(1~2分ほど続けて、気持ちが本当に穏かになったらステップ2へ)

ステップ2.『腕と足がだんだん重くなってきた』
 右腕、左腕、右足、左足の順番に、本当に重く感じるまで練習を繰り返します。あまり強く意識してしまうとかえって力が入ってしまうので、だらんと力を抜きましょう。
 これを身につけるまでに数週間かかることもあるので、焦らずマイペースでやってください。練習を重ねれば、本当に重いと感じることができるようになります。

ステップ3.『腕と足があたたかくなってきた』
 ここでも、右腕、左腕、右足、左足の順番に本当にあたたかくなってくると暗示をかけて、実際にあたたかく感じられるようになるまで練習を繰り返します。あたたかさを実感できるようになると、血流が実際に増えてきます。

ステップ4.『鼓動が穏やかになってきた』
 心臓がおだやかに、規則正しく動いていることをイメージしましょう。

ステップ5.『呼吸がラクになってきた』
 鼻から空気が静かに入り、その空気が穏かに胸に入っていく様子をイメージしましょう。

ステップ6.『胃のあたりがあたたかくなってきた』
 手をみぞおちのあたりに当てて、体の中があたたかくなってくることをイメージしましょう。

ステップ7.『おでこが涼しくなってきた』
 足はあたたかいのに、おでこは涼しいという頭寒足熱の状態をイメージしましょう。
 静かで気持ちのいいそよ風がおでこにやさしく当たっていることをイメージしましょう。

 ひとつの言葉を本当に実感できるまでには、二週間ほどかかるので、気長にいきましょう。相手は自分自身ですから、焦りは禁物です。焦りが潜在意識に働きかけ、自然に催眠状態になることができなくなってしまいます。
 ステップ2をマスターしてしまえば、ステップ3から7までは、要領が同じですから簡単に習得できます。
 練習を続けていると、気分が良くなってきて緊張もなくなります。「眠らなくてはいけない」という緊張感や強迫観念から解放され、自律訓練法をマスターする頃には、自己暗示によってぐっすりと熟睡できるようになります。
 マスターするには、かなり時間がかかりますが、辛抱強く練習を続けてください。毎日5分でも良いので少しずつ練習を続けていると、少しずつ気分がすっきりするようになり、安眠できる頻度が高くなってくるはずです。ただし、「何がなんでも毎日続けるぞ」と気合いを入れるのではなく、肩の力を抜いてラクな気持ちで長く続けていくことがポイントです。

◎ 心配事や不安な気持ちは紙に書き出す

 今日仕事で失敗したこと、明日の試験やプレゼンテーションはうまくいくだろうか、などと気になることが頭から離れず、眠れなくなってしまった経験は誰にでもあるでしょう。こうした不安や気になることは、次から次へと頭に浮かんできて、たいていの場合は思考がマイナスの方向に向いてしまいます。そして不安が増長され、ますます眠れなくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。

 こうした状況から抜け出して、穏かな眠りに入るために有効な手段は、気になっていること、不安に感じていることを、すべて紙に書き出してしまうことです。

 実際に文字にして書き出してみると、頭の中でモヤモヤしていたものが吐き出されるため、驚くくらいにスッキリと晴れ晴れしい気持ちになります。自分が不安に思っていたのは、この項目とこの項目なのか、と自分の目で確認できるため、不安の連鎖がぐるぐると頭の中でうずまいている状況から、一歩引いたところから冷静に状況を見つめることができます。

 いざ紙に書き出してみると、「別にいま悩んでも仕方がないな」「それほどたいした問題ではないな」ということが自分で理解でき、また明日になったら考えればいいと思えるようになれます。こうして気持ちを軽くしてしまえば、自然とおだやかな眠気がやってくることでしょう。

◎ 毎晩決まった時間に寝る

 梅干を見るだけで唾液が出てくるといった生理現象を条件反射といいます。人の日常生活において、実はこうした条件反射をベースにしている部分が少なくありません。
 睡眠もそのひとつで、たとえば毎晩12時になると必ずベッドに入るとか、毎日入浴後に同じジャンルの音楽を30分聴いてから寝るといった習慣のある人は、それらの条件と睡眠の関連性を体が覚えてくれます。12時が近づくにつれて、あるいはいつもの音楽を入浴後に聴いているだけで自然と眠くなってくるようになります。

 このように、毎日なんらかの決まった行動パターンを決めてしまうと、それに対する条件反射として自然な眠りに入ることができるのです。不規則な睡眠パターンを繰り返している人は、まずは睡眠前の生活習慣を一定にすることから始めると良いでしょう。
 まずは、毎晩決まった時間に寝ることから始めてみてください。


 人間は、ごく近い昔にも、たとえば江戸時代でも、暗くなったら寝て、明るくなったら起きる生活をしていました。したがって、早寝早起きは、いうまでもなく、健康のためによいのです。

 睡眠導入に有効なリラックス法には簡易筋弛緩法もあります。
 これは、顔、腕、背中、腹、足を10秒間緊張させ、20秒間ダラッとゆるめることを3回繰り返します。
 これを寝る前に床の上ですると、効果てきめんですよ。
 じゃんじゃん。