シリーズ 医療について考えた その2 サービス残業2016年02月24日 13:42

 それで、まず考えたのは、看護労働の実態をもう一度つかんでみようということでしたので、いろいろ公表されている資料に当たり、「日本看護協会」の資料を参考にしました。

なんと「時間外の常態化」と「サービス残業」がトップ!

 2008年に行った、日本看護協会「時間外労働および夜勤・交替制勤務に関する実態調査」で記載のあった自由意見2,120名分の中味別に分類した結果でいうと、「時間外の常態化」が965名,45.5%、「サービス残業」が868名,40.9%で、この2項目の該当が圧倒的に多かった。
 以下,「人員不足」の609名、「業務量と多忙」の495名、「給与改善」の494名など時間外労働の実態と合わせ看護師の基本的な労働条件項目が上位を占めていたということです。

 
 これを年齢階層別に見ると、「時間外の常態化」と「サービス残業」に関しては,全年齢階層で第1位と第2位を占めたのですが、第5位の「給与改善」の順位が年齢階層によって異なっていました。
 20歳代においては,「休日出勤,休日増の要望」と「事故リスク」の2項目がトップテン入りを果たし、「給与改善」も第3位となっていました。
 30歳代の特徴は,「両立支援,ワーク・ライフ・バランス」が第9位に位置していることで、また,「業務継続の不安,離職」が第7位と他の年齢階層における順位を上回ています。
 50歳代の特徴は,「年休未消化」が第8位,「不公平処遇」が第9位を占めました。

 自由記載の内容で大まかにまとめて見ると、

 20代では、夜勤への適応努力と生体影響,サービス残業と不公平処遇への疑問,将来設計への期待と不安,などが多くありました。

 30代では、中堅スタッフ・中間管理職としての自覚と成長,結婚・子育てに伴う二重負担によるワーク・ライフ・バランスの崩れと離職の不安,職業継続のための要求表明,など。

 40代では、中核人材として病棟,病院の活性化をめざした活動努力,ワーク・ライフ・バランスの重視とスタッフ支援の困難性,職業継続のための短時間就労やパート就労の経験,など。

 50代では、多くが中間管理職に就き,長期経験にもとづき看護業務のあるべき姿を俯瞰する目,中間管理職あるいはベテランスタッフとしての責任遂行,理想と現実のギャップ克服,などを退職期の総括として。
 ということになります。

 代表的な意見をあげると、

○ 看護職は素晴らしい仕事だが、クレームやミス等でストレスを感じる。医師からは小間使いと思われている。
○ 「ちょっと待ってて」が口ぐせになる業務ではおかしい。理想と現実の間で葛藤しつづけている。
○ 研修で残ったり院外でも熱心に勉強し,生涯学習に努める。こんなにけなげで熱心な職種はないと思うし、それがあたりまえのことだと信じているが、せめてサービス残業は「しない」「させない」でほしい。

 以上の労働環境から、現状としてまとめると、

1.労基法違反が常態化(労働時間、労働時間の管理)
2.人員不足は絶対数不足が原因
    「患者がいれば無理をせざるを得ない」
3.夜勤と「当直」
4.産業医は「管理職」
5.上司は「技術」は立派でも調整能力「ゼロ」!?
6.特殊化学物質健診は?
の6点を挙げてみました。

 医師に限らず医療労働者には、「利他的行為は尊い」ということがあります。患者がいて苦しんでいれば何とかしなければという気持ちです。
 少し前までは、医師が労働者かどうかという論争もありましたが、今や勤務医は労働者であるということが定着しています。過労死や精神疾患の問題が惹起してきたからです。

 特殊化学物質は「滅菌バッグのEOG(エチレンオキシド)」や病理検査のホルムアルデヒドやキシレンの使用がありますが、適切な局所排気はほとんどないのではないでしょうか。
 確かに作業主任者はいるかもしれませんが、作業者の健診や環境測定、緊急時の保護具、警報機などはほとんど見られないかもしれません。

 そして、一番問題であったのは、「医療職場の意見交換会(2/19)」でそれぞれの職場から出ていた、「サービス残業」問題であると思います。
 しかも、それが、あたかも「尊いこと」のようにされて、放置されているからです。
 例えば、8時の始業であっても、患者の状態を情報収集するため、7時に出勤しているのが常態化しているとか、夜勤で9時終業なのに申し送りの後も処置が終わらず、11時までかかっているとかいうことが話として出ていましたし、それは「人による」状態で、組合としては何度か注意しても、自主的に、あるいは、管理職の「当たり前感覚」によって、職場では常態化しているということです。
 確かに「命に関わる」ことが多いからかもしれませんが、それが特別なこととは感じられません。緊急時にも十分対応できる体制を常日頃から作っておくことが病院であり、管理監督者の任務だからです。病院は決して特別なことが許される職場ではないのです。労働基準法や労働時間に関する様々な限度基準を守ってこそ、「健康な人間」が「病者」をいたわることができるのです。

 いい例が、「地域調整セクション」で現れています。これは、院内外の調整をするセクションで、地域病院及びクリニックなど他の医療機関との連携がスムーズにながれるよう努力することになりますが、ここの残業時間が月100時間を超えていると「平気で」話していました。
 何度も言っているように、労基法を遵守したら、月の労働時間は174時間くらいですから、ほぼ二人分働くことになりますし、コストとしても、60時間を超えた分は50%割り増しとなるのは、結果として著しいコストアップであるわけですから、早急に人員配置をしたほうが経営的にはベターなはずですけど、これが行われないとすれば、その病院のコスト感覚が伺われますし、経営主体としては、「無能」ということになります。

 職場にはルール通りに就業し、もしそのルールを侵すものがいれば、それを防ぐのは管理監督者の第一の責務であるということが、病院職場でも、どこの職場でも確立されなければなりません。

 本当に、病院には労基法も何もあったもんじゃぁないなぁというのが感想の第一でした。

 どうでしょう。もし医療関係者がこのブログを読んで、「そんなこたぁないよ」ということでしたら、是非教えてください。
 患者の一人として知りたいからです。
 ぜひぜひ、じゃんじゃん。

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