新型コロナにうんざり だが!2020年03月04日 09:31

 世界中で急速に拡大している新型肺炎(COVID-19)の流行は、インフルエンザのように春になれば終息するのだろうか。多くの専門家は予測するのは時期尚早とみている。

 コロナウイルスには多くの種類があるが、人間に感染するのは7種だけだ。そのうち4種が、軽い風邪症状を引き起こすことで知られている。目下流行中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含め、残りは新しいものとされ、致死率が高く、コウモリやラクダなどの動物から人間へ感染したと考えられている。

 夏になれば流行も収まるだろう、と考えたくなるのは理解できる。2月、米国のトランプ大統領は中国のウイルス封じ込め作戦について、「特にこれから暖かい季節になれば」成果を上げるだろうとツイートした。
「季節性」とされるインフルエンザウイルスや、軽い風邪症状を引き起こすコロナウイルスであれば、確かに気温の上昇とともに終息するので、トランプ大統領のツイートにはある程度の科学的根拠はある。しかし、新型コロナウイルスも同様の反応を見せるかどうかはまだわからない。

 2月25日の時点で、感染者数は世界34の国と地域で8万人を超えた。専門家は、この先も感染拡大は続くだろうと警告している。

なぜ一部のウイルスは季節性なのか

 簡単に言うと、インフルエンザウイルスやコロナウイルスは、タンパク質と脂質の集まりだと考えられ、直接触れることで人から人へ感染するが、硬い物の表面や、感染者の飛沫のなかにもウイルスは存在する。

 だが、いったん人体の外に出たら、ウイルスは外部の力を受けて劣化する。手指の消毒用アルコールはタンパク質や脂質を分解するため、ウイルスは不安定になり、感染力が弱まる。

 なぜ一部のウイルスは季節性なのか。その答えを探るために、主にインフルエンザウイルスを対象にした研究が過去に数多く行われてきた。昔からインフルエンザといえば冬と言われるように、その流行はだいたい10月に始まって翌年の3~4月まで続く。専門家は、様々な理由を挙げている。

 例えば、冬の間、人々は室内に閉じこもりがちで、人と人との接触が濃厚になるためという意見がある。また、緯度が高い地域では冬期にインフルエンザの患者数が増加する。そこで研究者たちは、異なる気温や湿度のなかでウイルスがどのように広がるのかを調べてきた。

 寒くて空気が乾燥しているとインフルエンザが広がりやすいことを、最初に実験で示した研究は2007年に学術誌「PLOS Pathogens」に発表された。

 モルモットを使ってインフルエンザウイルスが感染する様子を実験室で観察したところ、気温と湿度が高い環境で、ウイルスの感染が減速することがわかった。さらに湿度を上げると、感染は完全に止まってしまった。暖かい空気には水分が多く含まれ、ウイルスが空気に乗って遠くまで移動するのを阻害する。また、咳やくしゃみと一緒に飛び出した飛沫は、空気中の水分を引き寄せて重くなり、浮遊できなくなって地面に落ちる。

 実験室の外での調査も、似たような結果が出ている。比較的最近の研究では、気温が低く空気が乾燥していると、ウイルスは無傷のまま長く生存し、空気中を遠くまで移動できることが示唆された。
 だが一方で、熱帯地方で雨期にインフルエンザの感染者数が増加するところがある。これもまた、人々が室内に多く集まるせいだろうか。

 また、冬に起こりがちな湿度の低下が鼻水の機能を阻害するという仮説もある。鼻水は、ウイルスや細菌といった異物を捕らえて鼻の外に排出する。ところが、冷たく乾燥した空気は鼻水を乾燥させるので、ウイルスを捕らえる機能が低下する。
 また、太陽光は物の表面に付着したウイルスの分解を助けるというが、冬の間はその恵みが十分に受けられない。
 紫外線は、ウイルスの核酸を分解して、表面を殺菌する効果があります。その点では、室外の方が室内よりも清潔と言えます。

SARSを封じ込めたのは季節か予防措置か

 新型肺炎もインフルエンザも、呼吸器系の感染症ではあるが、新型コロナウイルスが同じような季節性を持っているかどうかを予測するには、まだ判断材料が少なすぎる。

 今回の流行をよりよく理解するために、科学者たちはSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)など過去の似たようなウイルスの流行にヒントを求めている。

 SARSウイルスと新型コロナウイルスの遺伝子は、90%近く同じであるという。2002年11月に始まったSARSの流行は、翌年7月まで続いた。季節性があると言えば言えなくはないが、それよりも、早期に対応したことのほうが抑制につながった可能性がある。つまり、SARSを封じ込めたのは暖かい気温だったのか、それとも予防措置の成果だったのかは定かではない。

 MERSは、2012年9月に気温の高いサウジアラビアで発生した。SARSと違って完全に封じ込められることはなく、その後も新たな発症が時折報告されている。現在、その中東でもイランやアラブ首長国連邦で新型コロナウイルスの感染が報告され始めた。

「MERSの場合、季節性を示す証拠はほぼ見られません」と、ウェストン氏は言う。

 SARSとMERSが本当に季節性だったのか、また今回のウイルスがSARSと同じようにふるまうのかはまだわからない。ウェストン氏の研究室では、治療法とワクチンの開発に向けて努力しているが、完成までには少なくとも1年はかかるだろうという。

今やるべきことは?

 米ハーバード大学公衆衛生大学院は、暖かくなってもウイルスの拡大が大幅に抑えられるとは思えないと話す。新型コロナウイルス感染症は、今や世界中で報告されている。このウイルスに、少しでも典型的なインフルエンザウイルスとの共通点があるなら、今度はこれから冬を迎える南半球で感染が拡大する恐れがある。

 英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院も同様に、予測は難しいと語る。「証拠に基づくことなく予測をすれば、もしそれが間違っていた場合、真実と取られて誤った安心感を与えてしまう恐れがあります」と、ヘイマン氏はメールで警告した。「今やるべきことは、ウイルスを封じ込めて、可能であれば消滅までもっていくことです」

 米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、症状が出ているときが最も感染力が強い。しかし、公式に発表されている数よりも実際の感染者数はずっと多いだろうと懸念する専門家もいる。感染した人が全て深刻な症状をみせるわけではないので、感染しても検査されない人は多いはずだと言う。

 多くの専門家は、新型コロナウイルスが最終的にエンデミック(ある感染症が特定の地域内で一定の割合で発生し続けること)として定着するだろうとみている。そして、他の4種のコロナウイルスと同様に軽い風邪症状を起こすか、インフルエンザのように季節的な流行を繰り返して、人々の健康を脅かすことになるだろうという。

 世界保健機関(WHO)は、どんなウイルスでも感染を防ぐために、頻繁に手を洗い、咳やくしゃみなどの症状が出ている人との濃厚接触を避け、病気になったら医療機関を受診するよう勧めている。

 はてはて、じゃんじゃん。

新型コロナ、なぜWHOはパンデミックを宣言しないのか2020年03月06日 19:42

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の存在を中国が発表してから約2カ月、今ではウイルスが世界中に広がった。WHOによると、3月3日の時点で70の国と地域から感染が報告されており、感染者数は9万人以上、死者は3100人にのぼる。

 このウイルスの感染症(COVID-19)の症例がイタリア、イラン、韓国などで急増する中、米国の株式市場は2月末、2008年の景気後退局面以来、最大の下げ幅を記録した。そして米疾病予防管理センター(CDC)は、米国でウイルスが蔓延するのは時間の問題だと発表している。

 新型コロナウイルスの世界への広がりを受け、米国の政府関係者や報道機関の間では「パンデミック(世界的な大流行)」という言葉が囁かれ始めている。

 公衆衛生の主要な関係機関はまだ、この緊急事態を正式に 「パンデミック」 と宣言するに至っていない。しかし、CDC国立予防接種・呼吸器疾患センターはパンデミックと判断できる条件が揃いつつあると指摘する。また、世界保健機関(WHO)も、世界はパンデミックの危機に直面していると述べた。

 それではパンデミックとは、具体的には何を指すのだろうか。そして、WHOのような主要な公衆衛生機関がパンデミックを宣言した場合、何が起こるのだろうか。

 現在の世界的危機をパンデミックと名付けたとしても、もちろん、現状がすぐに変わるわけではない。とはいえ、パンデミックの宣言には、市民の不安をかき立てたり、または感染の拡大を抑える方向への対策を促したりする効果がある。

定義は完全に地理的

 地球規模の健康危機は、段階的に広がる傾向がある。まず最初に起こるのが「アウトブレイク」だ。これは武漢のような地理的に狭い範囲内で、ある疾病が急増することを意味する。新型コロナウイルスが武漢から中国全土に広がったように、もしその病気が最初に急増したコミュニティの外に広がった場合、それは「エピデミック」となる。

「パンデミック」とは、一般的な定義で言えば、エピデミックが国境を越えて広がり、世界中で大勢の人々に影響を及ぼすようになったものだ。

 定義は完全に地理的なもので、重症度も、感染者数も関係なく、考慮されるのは、ウイルスが世界中に広がっているかどうかという点。

 ただしエピデミックが国境を越えて広がったとしても、それがすべてパンデミックと定義されるわけではない。たとえば季節性インフルエンザは広範囲に行きわたるが、その流行は周期的なものであり、パンデミックインフルエンザとは区別される。パンデミックインフルエンザとは、それが南北両半球全体において、季節に関係なく広がるものを指す。

 パンデミックの宣言においてはまた、どこでだれが感染しているのか、ということも考慮される。もし中国で新型コロナウイルスに感染した人が自分の国へ帰った場合、それは最終的にパンデミックを宣言するかどうかを決定する際の集計にはカウントされず、またその人からの感染者もカウントされない。

2009年のインフルエンザの教訓

 こうした条件は、2009年のH1N1型インフルエンザのパンデミックから教訓を得て設けられたもの。当時からすでに人々は世界中で盛んに行き来しており、そのためH1N1型が実際よりも速く、多くの地域に拡大したように感じられてしまった。

 エピデミックの初期においては、感染例の大半は、最初のアウトブレイクの発生源(今回の場合は中国)からやってきた旅行者にまで感染源をたどることができる。しかし、国内感染が進むにつれて、接触の追跡は崩壊する。この転換点を迎えると、ウイルスは人々に気づかれないまま広がってゆき、コントロールは極めて困難になる。

 公衆衛生の専門家の中には、こうした定義に照らし合わせると、新型コロナウイルスはすでにパンデミックの状態に達していると主張する者もいる。2月末時点で感染は6大陸で確認されており、韓国では2300人、イタリアでは650人の感染者が出ていた。多くの国では、アウトブレイクは一部地域に留まっているが、最も新しいところでは米カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州で発生が確認されている。

 2月29日、CDCは、同日にワシントン州で新型コロナウイルスによって亡くなった患者は、すでに確認されている感染者も含め、中国からの旅行者との接触が確認されなかったと述べた。一方、ホワイトハウスはイランを訪れたあらゆる外国人について、米国への入国を14日間禁止すると発表した。また国務省は、イタリアと韓国の一部地域への渡航に対し、最高レベルの警告を発した。ドナルド・トランプ大統領はさらに、南の隣国であるメキシコ国境への移動制限を検討しているとも発言している。ただし、米国で確認された感染者が88人であるのに対し、メキシコは5人だけだ。

 それでも、WHOがまだパンデミックと宣言しようとしない理由は何なのだろうか。実際のところ、これは言葉の意味に関する問題と言う。しかし、一般の人々に対してこうした問題について話をする場合、言葉の持つ意味が重要になってくる。

より重要な宣言がすでに出されている

 言葉は重要だ。2月26日の記者会見でWHO事務局長は、「パンデミック」という言葉に飛びつくことに対して注意を促した。

「パンデミックという言葉を不用意に使うと、不必要かつ不当な恐怖や汚名を増幅させ、各種のシステムを麻痺させる重大なリスクが生じます」

「パンデミック(pandemic)」という言葉の中に「パニック(panic)」を構成する文字すべてが含まれている、と指摘するのは、米ジョージタウン大学教授で、WHO協力センターの国内・ 国際保健法研究所所長、ローレンス・ゴスティン氏だ。

 2009年、WHOがH1N1型インフルエンザについてパンデミックと表現したとき、世界中の人々がパニックに陥った。だがその後、このウイルスの致死率が高くないことが判明すると、WHOは不必要に人々の不安を煽ったとして批判を浴びた。H1N1型は現在、季節性インフルエンザの1つとなり、毎年、ワクチンの接種が行われている。

 新型コロナウイルスの致死率はインフルエンザよりもはるかに高く、これがパンデミックに発展しうるという事実は、間違いなく懸念すべきこと。これを可能な限り遅らせてワクチンを作りたいがそれにはおそらく12〜18カ月かかる。

 加えて、WHOがこれをパンデミックと呼ぶことに法的な意味はない。 WHOはパンデミックを“宣言”はしないだろう。

 一方で、WHOはすでにそれよりもずっと重大な宣言を出している。それが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」だ。この宣言が出された場合、WHOは法的拘束力をもって、加盟国がエピデミックにどのように対処すべきかについての勧告を発表でき、また財政的、政治的支援を動員できる。

つまり、何が重要なのか

「パンデミック」とは、法的な意味を持たない、単なる呼称であるとも言えるが、それなりの有用性もある。パンデミックという言葉によって、もはやウイルスの拡散を阻止できないと当局が認識し、学校の閉鎖や大規模な集会の中止などの拡大防止策に移行しなければならないことが明確になる。

 これこそが、WHOなどの世界的な機関が早く決断を下すべきと一部の公衆衛生の専門家が主張する理由だ。毎年のインフルエンザに対して行っているような緩和措置へと移行する時期は、早ければ早いほどよい。

 米国ではすでにCDCが、新型コロナウイルスのパンデミックに備えて、地域社会を守るための対策を発表した。その中にはたとえば、クラスメートや同僚への感染を防ぐために学校を閉鎖したり、テレワークを推奨したりといった「社会的隔離」が含まれる。イベントや大規模な集会が延期や中止になることもある。今夏の東京オリンピックでさえ、状況があまりに危険だと判断された場合には、中止になるかもしれない。CDCは病院のベッドを確保するために、待機できるような手術の延期を勧告することもあるだろう。

 こうした社会的な隔離は、家庭、地域社会、経済に大きな影響を与えるため、医療機関が安易に勧めることではない。

「子供たちには教育が必要ですし、親は仕事に行かなければなりません。それに人には、外に出て楽しみたいという欲求があります。ですから、こうした対策はなるべくとりたくはありません。もしやるとすれば、どうしても必要な場合だけです」

 個人にもできる予防策はある。それは几帳面に手を洗い、咳やくしゃみをするときは口を覆い、いろいろな物の表面をしっかりと拭いておくことだ。

 はて、安倍の早とちりか?先見の明か?
 まさか、論文試験問題で失敗した「ベネッセ」への代償じゃあないだろうね。
 じゃんじゃん。

パンデミックとはどういうことで、何が重要なのか2020年03月14日 13:25

 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は3月11日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を「パンデミックとみなせる」とついに発表した。

 ゲブレイエスス事務局長は記者会見で同時に、「感染の拡大と深刻さの驚くべきレベルと、対策不足を深く懸念している」との見解を示した。「これからの数日、数週間のうちに、感染者、死者、そして広がった国と地域の数はさらに増えるだろう」と。

 WHOによると、3月12日の時点で感染は114の国と地域に広がり、感染者は11万8381人、死者は4292人に上った。イタリア、イラン、韓国では特に急増している。また、米国でも同様に拡大が速まっており、米国内の統計で感染者は900人以上、29人が亡くなった。

 当局がパンデミックという言葉を避けていたにもかかわらず、多くの公的機関やメディアがすでにそう表現するという状況のなか、何週間も検討した末の表明だった。

 新型コロナ、重症化しやすい基礎疾患の致死率は?

 高血圧に糖尿病、心臓病。いずれも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を引き起こしうる基礎疾患だ。大半の人の身近に、このどれかひとつを抱えている人がいるのではないだろうか。

 新型コロナウイルス感染者の80%は軽症で済んでいる。だが、初期の統計を見ると、重症化の危険があるのは体力のない高齢者だけではない。

 世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルス感染症による致死率を新たに修正した。それによると、全年齢平均の致死率は3.4%で、高齢になるほど確率は上がる。数字を見る限り、確かに高齢者だけが危ないと思ってしまいそうだ。

 しかし、全ての年齢で、新型コロナウイルスの致死率は季節性インフルエンザよりも高いことがわかっている。50歳未満の致死率はインフルエンザより6~10倍も高い。死に至らないまでも、若年層の重症患者は意外と多い。

2月28日付けの医学誌「New England Journal of Medicine」に発表された研究では、1099人のコロナウイルス感染者を年齢別に分けてみたところ、軽症者の60%が15歳から49歳だった。やはりこの年齢は重症化を免れているということだろうか。

 しかし、若い成人の重症患者の割合は、単純な統計で割り出される値よりも若干高い。実際には、163人のうち41%が若い成人で、31%が50~64歳、27%が65歳以上だった。重症患者がゼロだった年齢層は、14歳以下の子どもだけだ。

 中国疾病対策センターが2月21日に発表した臨床報告書でも、若者と高齢者の感染率はそれほど変わらないことがわかっている。こうしたことから、年齢で危険度を測るよりも、よくある基礎疾患が致死率とどう関係しているかを調べたほうが予防策を講じやすいのでは、と医師たちは考え始めている。

 新型コロナウイルスに感染してまずやられるのは肺だが、重症化の要因として最も多い基礎疾患が、心血管系の病気だ。

 新型コロナウイルスへの感染が具体的に心血管系にどう影響するのかはまだわかっていない。しかし、米国心臓病学会によると、「新型コロナウイルス感染で集中的な治療が必要となった患者を中心に、急性心外傷、不整脈、血圧低下、頻脈が報告されており、心血管の合併症も高い確率で起こっている」という。武漢で150人を対象にした調査でも、心血管疾患の患者がウイルスに感染するとかなり高い確率で死に至るという結果が出た。

 心臓と肺は、驚くほど密接につながっている。速く呼吸すれば、脈拍も自動的に速くなる。既に心臓が弱かったり動脈が詰まっていたりすると、体中に血液と酸素を送るために、健康な人よりも余計に心臓が働かなければならない。

 インフルエンザ患者が心臓発作を起こすことは、以前から知られている。インフルエンザウイルスが心臓発作の直接の原因ではないかという専門家もいる。2018年に「New England Journal of Medicine」に発表された研究では、インフルエンザと診断されてから7日間は、心臓発作を起こす確率が普段と比べて6倍になると報告されている。

基礎疾患の自覚のない人にもリスクはある

 なかには、心臓に問題があることに気付いていない人も多い。例えば、高血圧が危険因子とされるアテローム性動脈硬化症は、最も一般的な動脈硬化の形態で、血管の壁に脂肪や組織の線維が蓄積してプラークというかたまりを作る病気だ。それが破裂すると、周囲の血管が塞がれて心臓発作や脳卒中を引き起こす。
 プラークや高血圧があっても気づかない人はかなり多い。
  そこへインフルエンザやコロナなどの呼吸器ウイルスが入り込むと、免疫が過剰反応して全身に炎症が起こるサイトカインストームを引き起こす恐れがある。武漢では、流行初期に劇症型心筋炎を起こした患者がいたと報告されている。これは、心臓の筋肉がウイルスによって侵食されるまれな症候群だ。

  ぜんそく、アレルギー、喫煙など

 嚢胞(のうほう)性線維症や慢性閉塞性肺疾患、ぜんそく、アレルギーなどによる慢性的な肺疾患、そして、喫煙で肺に損傷がある人も注意が必要だ。たとえ軽い風邪やインフルエンザであっても、こうした持病のある人々では、症状が悪化して入院するケースもある。

 新型コロナウイルスの心配な特徴は、症状が出るまでの潜伏期間が2~14日と、かなり長いことだ。おまけに、米国ではCDCの技術的ミスにより検査に遅れが生じている。そのため、感染しているのに気づかないでウイルスをばらまいてしまう人がどれだけいるのかわからない。3月9日付の医学誌「Lancet」に発表された最新研究によると、新型コロナウイルスの感染者は8~37日間ウイルスを排出し続けるという。

子どもは大丈夫?

 今のところ、新型コロナウイルスに関するデータはどれも、子どもへの感染率が低く、重症化の例も少ないことを示している。2月11日までに中国CDCは4万4600人の感染確定者を記録しているが、9歳以下の子どもの感染者数はわずか400人で、死者はひとりも出ていない。子どもは感染する確率が低いということなのか、それとも重症化しないだけなのだろうか。

「後者が正解、つまり子どもは重症化しないというのが、専門家の一致した意見です」と、米ピッツバーグ大学医療センター小児感染症部長のジョン・ウィリアムズ氏は言う。

 初期の追跡調査では、子どもの感染率が大人とそれほど変わらないとされている。これまでのところ子どもの報告例が少ないのは、検査が大きな病院だけで行われているためだろうと、ウィリアムズ氏は言う。「軽症者や外来の患者、町の診療所の患者にも検査が実施されるようになれば、大人も子どもも感染者は増えると思います」

 過去のコロナウイルスや他の感染症でも、子どもが重症化するケースはまれだった。約20年前に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)でも、子どもが感染した例はあったが、ほとんどが軽症だった。水ぼうそうも、子どもよりも予防接種を受けていない大人の方が重症化する可能性が高い。

 しかし、だからといって世界中で学校が閉鎖されているのが無駄な努力だというのではない。あらゆる既知の呼吸器感染症を最も拡大させているのは、子どもたちだ。米国では毎年、20%の子どもがインフルエンザに感染するが、大人の感染率は5%にとどまっている。

 個人にもできる予防策はある。それは几帳面に手を洗い、咳やくしゃみをするときは口を覆い、いろいろな物の表面をしっかりと拭いておくことだ。

 人類がパンデミックを制御できたためしはない。ゲブレイエスス事務局長は今回の会見でそう認めたが、その一方で、中国や韓国は新たな感染を急速に減らしており、感染が及んだ国々に拡大を抑えるよう強く求めた。「大きな声で、はっきりと、そして何度もは言えないが、すべての国がこのパンデミックを抑えられる可能性はまだある」

 だそうです。じゃんじゃん。

消毒はせっけんでOK、漂白剤よりいい理由とは、新型コロナ対策2020年03月23日 21:00

 人類は5000年近くにわたり、様々な洗浄剤を発明してきた。しかし、感染症を予防するには、せっけんと水という単純な組み合わせが最も強力な手段の1つであることはずっと変わりない。

 それなのに、昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような集団感染が発生すると、人々はあらゆる種類の化学洗浄剤を買いに走る。だがその多くは、新型コロナウイルス対策には不要または無効だ。

 例えば、店頭から消えている手指消毒剤の中には、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を殺すのに必要な、アルコール濃度が60%以下の商品も多い(編注:60%以上は米疾病対策センター(CDC)の基準で、日本の厚生労働省は70%以上。なお、物の表面の消毒ではCDCも70%以上を推奨)。また、新型コロナウイルスの被害が甚大な国々では、防護服に身を包んだ作業員が、公共の通路やオフィスビル内に漂白剤の溶液を散布している。しかし、専門家に言わせれば、感染拡大の予防に必要かどうかは疑わしい。

 漂白剤の使用は「ハエを叩くのにこん棒を使うようなものです」と英ケンブリッジ大学のウイルス学者ジェーン・グレートレクス氏は話す。そのうえ、漂白剤は金属を腐食するし、吸い込み続ければ呼吸器系の健康問題につながる恐れもある。

「漂白剤を使う表面に汚れが多く付着していた場合、その汚れが漂白剤と反応し、消毒効果が失われてしまいます」と米ジョージア州立大学の環境衛生学者リサ・カサノバ氏は話す。同氏ら専門家は、物の表面を消毒するには、漂白剤ではなく、食器用洗剤のような低刺激性の洗剤を推奨している。

 公衆衛生の専門家がせっけんに立ち返る理由はなんだろうか。新型コロナウイルスが体外でどのように存在し、一般的な物の表面でどれくらい生存し続けるかについて、これまでの研究でわかっていることを知れば、十分に理解できるだろう。

コロナウイルスは脂質の膜を持つ

 新型コロナウイルスは主に、人から人への感染で広がる。感染者とハグや握手をしたり、ウイルスを含むくしゃみやせきなどの飛沫を吸い込んだりして感染する。

 しかし、こうした飛沫は重いため、通常はすぐに地面に落ちる。ウイルスは、落ちた場所に応じて、物の表面で一定期間生存できる。ウイルスが死ぬ前に手で触り、その手で鼻や口を触れば、ウイルスが運ばれて感染する可能性がある。

 すべてのウイルスは、遺伝物質と、それを包むタンパク質の殻でできている。その外側に、さらにエンベロープと呼ばれる脂質の膜を持つものもあり、エンベロープ・ウイルスという。新型コロナウイルスはその1つだ。

 エンベロープ・ウイルスは、膜のないノンエンベロープ・ウイルス(下痢や嘔吐を引き起こすノロウイルスなど)に比べ、容易に破壊できる。場合によっては物の表面で何カ月も生存可能なノンエンベロープ・ウイルスとは異なり、通常、エンベロープ・ウイルスが体外で生存できるのは数日だけだ。もろいエンベロープを壊せば分解し始めるため、最も不活性化が容易だと考えられている。

新型コロナ、物の表面での生存期間は?

 しかしながら、エンベロープ・ウイルスにもそれぞれ違いがある。そのため、新型コロナウイルスが物の表面でどのくらい生存できるかを解明しようと、世界中の科学者が懸命に研究を行っている。

 3月17日付けで学術誌「New England Journal of Medicine」に発表された研究では、様々な物の表面で、新型コロナウイルスが検出される期間の長さが調べられた。調査の目的は、医療現場に見られるどの物質の表面が、院内感染の発生源になりうるかを突き止めることだったと、論文の共著者で米プリンストン大学の進化生物学者ディラン・モリス氏は言う。

 この研究によると、SARS-CoV-2は、ボール紙の表面では24時間、ステンレス鋼の表面では2日間、ポリプロピレン(硬質プラスチックの一種)の表面では3日間生存可能なことがわかった。

 一方、細菌やウイルスを自然に分解する物質である銅の表面では、わずか4時間後には検出されなくなった。なお、2002〜2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)のウイルスであるSARS-CoV-1と今回のSARS-CoV-2は、物の表面上での生存期間がほぼ同じだった。

 つまり、人混みを避けるためにオンラインで商品を注文しても、もしかすると届いた段ボール箱にウイルスが付着しているかもしれない。ただし、CDCは、物の表面がウイルスの主な感染経路になるとは考えられないと強調している。

 日用品を過度に疑いたくはないが、一般的なアドバイスとしては、商品と自分の手をよく洗うことだと、モリス氏は言う。

 だが、同氏らの実験室での研究には限界がある。階段やバスの手すりなど、人がよく触る場所にウイルスがより多く付着していれば、感染のリスクは高くなる。また環境の条件が、ウイルスの生存期間に影響を与える可能性がある。例えば、紫外線はウイルスを分解することが知られており、湿度が高いと飛沫が空気中を飛びにくくなると考えられている。

 モリス氏は、大きな飛沫ほど感染力が強いと明言するものの、今回の研究では、新型コロナウイルスが、飛沫より粒子が小さい「エアロゾル」として最大3時間空気中を漂う可能性があることがわかった。ウイルスを含むエアロゾルは、人工呼吸などで発生する可能性があるため、そのような処置を行う臨床現場で主に懸念される。一方で、野外環境やスーパーのような公共空間で問題になる可能性は低い。
せっけんはなぜ効果的なのか

 モリス氏の研究では、衣類や農産物など、日常的に触れる機会の多い物品は検討されなかった。ただし、米食品医薬品局(FDA)によると、新型コロナウイルスが食べ物を介して感染する可能性があるという証拠はない。

 インフルエンザウイルスを対象にした研究では、衣類や木材のように、ミクロな穴を多くもつ多孔質の物にウイルスを付着させた場合、4時間を超えるとウイルスは検出されなかった。多孔質の物は、ウイルスから水分を奪い、ウイルスの分解を引き起こすからだ。

 とはいえ、何を触ったにせよ、感染につながる前に手からコロナウイルスを除去するには、せっけんと流水で洗い流すのがベストな方法だ。新型コロナウイルスが人間の皮膚を通り抜けて感染することはない。人間の皮膚は弱酸性であり、ほとんどの病原菌が体内に侵入するのを防いでいるからだとグレートレクス氏は説明する。

 せっけんは、その化学的性質により、コロナウイルスのエンベロープをこじ開けて分解を引き起こすため、とても効果的だ。そして、バラバラになったウイルスの断片は水で洗い流される。手指消毒剤も、ウイルスのエンベロープを破壊するので、同様の効果を発揮する。

 水道水から感染する心配もないと、専門家は言う。ウイルス汚染があるとすれば、廃水に由来するだろうからだ。CDCによると、新型コロナウイルスは、排泄物からは見つかっているが、実は廃水から検出されたことはない。たとえ廃水中に含まれていたとしても、米国の水道ろ過システムはコロナウイルスを十分に殺せるほど強力だと米ノートルダム大学の環境工学者カイル・ビビー氏は話す。

「水から新型コロナウイルスに感染する可能性は、理論上はありえますが、現実的には心配する必要はありません」と同氏は説明する。

「今、絶対にやってはいけないのは、水道水を恐れて、飲むのをやめたり手洗いを避けたりすることです」

と、いうこと。
 じゃんじゃん。

新型コロナ、不安がる子どもに伝えるべきことは2020年03月25日 21:11

家族で乗り切る非常事態、カギは冷静さ、正しい知識、遊び心

 学校は休校になり、大規模なイベントは中止されている。皆さんのお子さんの中には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について疑問に思ったり、心配していたりする子もいるだろう。説明は簡単ではないかもしれない。皆さん自身がさまざまな疑問や不安を抱えているだろうから、なおさらだ。

 「子どもたちを不安にさせるのではなく、安心感を与えなければなりません。そうなるようサポートすることが、私たちが大人として果たすべき最大の役割です」と、米国の医療保険団体カイザー・パーマネンテで中部大西洋岸地域を担当する家庭医ケイティ・ライダー氏は語る。

 子どもにコロナウイルスについて話すときは、次のような点を心がけるといいだろう。

まず何より、落ち着いて話すこと

 子どもには皆さんの感情が伝わるものだ。パニックになっていたり、不安になっていたりすると、子どもも同じようになる。大事なのは、子どもたちが抱えている不安を受け止め、それに理解を示すことだ。多少の不安は問題ない。「しかし、パニックになる必要はないことをわかってもらうことが重要です」とライダー氏は言う。

 そのうえで、何が起こっているのかについて落ち着いて話そう。さらに、事態を改善するために懸命に働いている人がいることを話し、安心してもらう。「子どもたちの安全を守るために、大人が力を合わせていることをわかってもらう必要があります」と、米ワシントン州ショートカ小学校のレベッカ・ゲーツェル校長は言う。

子ども一人ひとりの状況に合わせる

 小さな子どもは疑問や不安を抱かないかもしれない。その場合は、無理に話し合うことはない。しかし、答えを求めている子どもたちに対しては、今起きていることについて話すのを避けるべきではない。「正直に話すことです。しかし、怖がらせたり、不安をあおったりしてはいけません」とゲーツェル氏は言う。

 特に感染が増え続けている今は、テレビの報道やソーシャルメディアが子どもの目に入りすぎないようにすることも有効だ。こういった情報に触れすぎると、恐ろしい妄想ばかりが膨らんでしまうかもしれない。
できることを伝える

 子どもたちを落ち着かせる最も良い方法の一つは、自分自身を守ることができると同時に他の人たちも守ることができると、子供たちに感じさせることだ。健康なままでいるためのルールを守れば、その子は感染を広めることがなくなり、他の人も守ることができることを伝えよう。「子どもたちは、自分たちや他の人々の健康を守るためにすべきことはもう知っています。それを子どもたちにきちんとやってもらいましょう」とライダー氏は話す。

 つまり、手を洗う、くしゃみや咳をするときはひじなどで覆う、顔を触らないなど、感染を防ぐ方法について改めて教えれば、こういった行動が人を守ることにつながると理解させられるはずだ。「ハイタッチをする代わりにひじを軽くぶつけ合うなど、楽しくやってみましょう」とゲーツェル氏は言う。

正しい知識を伝える

 幸いなことに、コロナウイルスに感染する子どもは多くないし、感染したとしても軽い症状で済むことが多い。子どもたちには、通常の風邪など、同じような病気には誰でもかかっていることや回復していることを説明しよう。おそらく、コロナウイルスの症状も同じようなものだ。(参考記事:「新型コロナ、重症化しやすい基礎疾患の致死率は?」)

 それでも、子どもたちが他の家族について心配することもあるだろう。ここでも、感染した大人のほとんどが回復していること、そして医者や科学者が人々を守るために懸命に働いていることを伝えよう。おばあちゃんやおじいちゃんについては、「親や子どもに風邪のような症状がある場合、会いに行くのは延期することを勧めています」とライダー氏は言う。その場合は、電話やビデオチャットの回数を増やし、問題がないことを見せて安心してもらうことも有効だ。

普段の生活のリズムを守る

 人となるべく距離を取る「社会的距離の確保」を心がけている人や、子どもの学校が臨時休校になっている人もいるだろう。いずれにしても、子どもたちに生活が大幅に乱れることはないと感じてもらうことが重要だ。(医師の助言に従って)家庭で過ごす一日のリズムを決めて、ピアノの練習、就寝前の読書、一緒に料理を作る、庭で遊ぶなど、通常の活動を続けよう。

 おばあちゃんやおじいちゃんとのビデオチャット、工作など、毎日家で同じ時間に行える新しい活動を増やしてみるのもいいだろう。ダンスパーティーと称して、体を動かすのもいい。友だちと会えずに家に閉じこめられるというのは、楽しいことではない。しかし、ゲーツェル氏は、「家にいれば、子どもと家族が助け合うことができます。それが解決策の一つでもあります」と話している。

 はいはい。
今日会いましたが、うちの孫たちは無事でした。
 じゃんじゃん。