北海道の公務職場パワハラアンケート まとまる2012年02月15日 14:39

 ストレス・メンタルヘルス問題は、精神疾患の年間受診者数が100万人に達するほど、深刻な状況となっています。メンタル不全問題への対応は、一次予防と連鎖の防止を重点にした予防的取り組みへと変化させることが必要ですが、そのためには、ストレスの大きな原因となるパワーハラスメントなど職場における各種のハラスメントについて、対処する職場のルールや法制度の確立を早急に求めるとともに、ハラスメントの実態把握とその結果による職場環境の改善などの助言・提案する機能が求められます。
 メンタル100万人時代を迎え、政府は昨年末、長時間労働やセクハラを労災認定する「心理的負荷による精神障害の労災認定基準(業務による心理的負荷評価表)」を改訂し、また、パワハラの定義と対策を助言するため、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議(堀田力座長)」のワーキング・グループが報告をまとめました。
 それで、職場のいじめ・嫌がらせ問題(ハラスメント)の実態解明のため、2010年に実施された「自治労10万人パワハラアンケート」を参照して、北海道の公務職場における「パワーハラスメント」の実態について、以下の概要でサンプルアンケート調査を実施しました。

 今回のアンケートは、回答は2,812で、性別では男性1,648、女性1,164でした。職種別には、事務職37.8%、技術職17.2%、教育職29.1%、医療・福祉職14.0%の内訳です。職制では課長補佐級1.6%、係長級19.7%、主任級22.4%、一般56.0%でした。

<結果の特徴>

1)「パワハラ」を知っている 99%
 さすがに「パワハラ」の言葉はほぼ全員が知っていました。「言葉と内容も知っている」は男女ともに9割で、少し女性の方が関心が高いようです。ただ、いまだ定義ははっきりしておらず、政府の円卓会議でも以下の定義をワーキンググループ報告の中で提案しています。
「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」
 
2)パワハラの被害を受けた 男性27.5% 女性33.0%
 パワハラの経験は過去3年間では男性23%、女性26%が受けたと答えていますが、今までの経験(3年間に限定しない)では男性27.5%、女性33.0%が「あり」としています。どちらも「重大なと」感じたパワハラは4%でした。経験したパワハラでは、男女ともに「大声で感情的に叱る」が13%で最も多かったのですが、そのほか男性では「些細なミスをしつこく叱る」が9%、「無理難題」が7%となり、女性では「無能扱い」と「仲間はずれ」が8%、「悪口・陰口」と「些細なミス」が7%でした。そのほか「経験しなかったが見聞きした」では、「些細なミス」と「大声で叱る」が20%を越えていました。

3)パワハラを受け「不愉快で頭にきた」6割 死にたくなったも女性で6%
 3割の「パワハラを受けた」人に複数回答してもらいました。その時の感情としては、男女ともに「不愉快で頭にきた」が7割となっていますが、次に「相手を避けるようになった」男性32%、女性40%で、「辞めたくなった」と「転勤・異動希望」をあわせて男性50%、女性62%でした。「重大なパワハラを受けた」を受けた人に限ってみると、事務職の6割が治療に向かっていますが、教育職では11%、さらに「死にたくなった」がおなじ11%となったのは大きな問題です。「辞める」と転勤をあわせると、事務職で100%、教育職で8割を超えて希望しています。

4)パワハラの行為者は直属上司が7割
 複数回答で行為者は男女ともに7割が「直属の上司」でした。特に教育職では8割が上司のパワハラです。しかし「同僚」からも男性15%、女性19%と多く見られ、医療と教育では2割を超えていました。これはパワハラと言うより、モラル・ハラスメント(嫌がらせ)に近いと思われます。そのときどう対応したかでは、男女で大きく違いました。男性では「何もしなかった」が45%でしたが、女性では「職場の先輩や同僚に相談した」が43%でした。「何もしなかった」は女性でも30%ありましたが、その理由は男性が「何をしても解決にならない」が45%、女性は46%と、あきらめの気持ちが強いようです。
 しかし、自由回答からは、職場の中でコミュニケーションを大事にして、何でも話し合える雰囲気を求める声が強く聞こえてきます。つまり現状はそうでないと言うことになります。

5)相談先は「外部の専門家」が一番多い
 パワハラを受けたときの相談先については、労働組合や当局の内部窓口よりも、どちらが設置しても外部の方が信頼されやすいようです。特に労働組合が外部に設ける窓口には、6割が「相談する」となっていますが、その理由としてあげられるのは、一番心配することが個人情報(男性66%、女性71%)だからでしょう。気になるのは、相談するというなかでも「結局は解決されない」と言うあきらめが多く見られることです。

6)パワハラは人権侵害であり人間関係を悪化させる 7割
 パワハラについてどう思うか聞いたところ、重大な人権侵害と考える人が、男性で59%、女性では66%ですが、人間関係を悪化させるでは、男性が67%、女性が74%となりました。ほぼ7割が強くパワハラを否定しています。一方、職場がギスギスしたり業務上に支障が出ると心配する向きは、男女ともに40%いますが、能率を下げると感じる方が男女ともに8割になりました。

7)職場でのパワハラ防止取り組み 6割弱が必要だと
 職場全体で取り組むべきという人が男性で57%、女性で59%と6割弱になりましたが、何を取り組むかでは、「管理職研修の必要」が男女ともに8割を超え、「安心できる窓口」にも8割が期待しています。また、「厳しい処分」を求める声も6割以上となりました。

8) 総括 やはり「みんなでハラスメントを無くしましょう」が合い言葉です。
 全体としては、自治労の10万人パワハラ・アンケートと変わらない実態が見えてきます。しかし、男女合計で「パワハラを受けた」と感じた人が37.5%と、自治労アンケートと比して5%高くなっています。特に、医療現場では、4割近くがこの3年間に限ってもパワハラの経験を持っています。そのパワハラの行為者は「直属の上司」が圧倒的であり、「大声で感情的に叱る」と言う典型が見えます。
 「重大なパワハラ」を受けたと感じたのは4%ほどですが、その人たちの取った行動と気持ちは、「治療に向かった」が全道庁21.4%、全開発60.0%であり、「死にたくなった」が全道庁17.9%、北教組11.4%と際だって高くなっています。
 パワハラそのものについて、ほとんどが「人権侵害」と感じていますが、一方で、「あまり神経質にならなくても・・」や「仕事上の指示がやりにくく・・」、「受ける方にも問題が・・」などの回答が2~3割あり、そう思うのは受けたことがない人ばかりかというと、「重大な・・」や「重大かどうか・・」の回答者の中にも見られることは、「パワハラは許せないが、雰囲気の良い安心して働ける職場」を望んでいるともとれます。
 特にその希望を自由回答の中から拾うと、コミュニケーションが不足している(忙しくてできない)ことや、管理強化、不公平な評価を原因とする声が多く寄せられています。

 では、最後に、私たち労働組合としてなすべきことは何かについて考えます。
 ひとつはパワハラを見逃さないことです。継続してパワハラ行為を行う管理監督者は職場から排除する必要があります。
 二つ目には、それでも年齢等の意識ギャップからパワハラが起きてしまうことはあるのが現実ですから、被害者を徹底して守り抜く決意です。必要であれば治療に向かわせることや、公務災害としての摘発などに躊躇せず行動することです。被害者が「どうせ何も変わらない」という心理状態(学習性無力感)に陥らないようにすべきです。
 第三にそのためには、職場の「巡思」(巡視+コミュニケーション)を強化するとともに、被害者の受け皿である「外部窓口」を積極的に設置する(させる)ことです。
 最後に、アンケートを通じて、私たちの仲間である職場の組合員は、「快適な職場でいい仕事をしたい」と思っています。これを実現するのは「職場環境配慮義務」と言う安全配慮義務として管理当局の責任ではありますが、私たち労働組合が目指す姿でもあります。
 一番大事なことは、「何がパワハラで、何がパワハラでないか」を気軽に職場で職制・管理者を含め話し合えるルールを作ることと思います。

 必要であれば、人事院北海道事務所、北海道人事委員会などの関係機関にアンケート結果をもって注意喚起します。
じゃんじゃん。

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