過労死等防止対策推進法シンポ2014年11月05日 13:52

 「過労死等防止対策推進法」が11月1日に施行されることを受け、連合北海道が主催する標記シンポジウムが札幌市で開催され、NPO北海道勤労者安全衛生センターも後援しました。
 目論見では80名くらい参加で、マスコミも注目しているとのことでしたが、実際は40名もいたかなぁ。寂しいモンでした。
 担当者は「例の北星学園大学の講師問題の方が注目されていて・・・」と言い訳していましたけど。
 どうも最近は、連合北海道だけでなく、地協を見ても、動員点検がなされていません。ブツブツ言ってもしようがありませんけど。

 さて、同法は、今のところ、なんの役にも立ちそうにありません。だいたい、1978年から「過労死(Karoushi)」が世界共通語になってしまっているのに、今更、あたかも新しいことを取り組むみたいなポーズをどうして取るのでしょうか。

 まあ、いいでしょう、と思い参加しましたが、どうしても辛口になります。

 パネルでは、北海道労働局のN監督課長が、同法の目的や趣旨、11月を強化月間として労災発生事業場への重点監督や電話相談など、全国共通・北海道労働局の取り組みについて説明しました。事前の時間帯にも控え室で「まだ何も決まってませんので、質問されても困ります」だそうです。これが労働基準監督官の言葉かい!ふざけんのもいい加減にせいや!といいたくなりませんか?
 ちなみに電話相談は11月1日だけだそうでした。

 北海道経済部雇用労政課T主幹からは、労働相談ホットライン(0120-81-6105)や仕事と家庭の両立支援などを通じ、過労や過労による自殺対策の啓蒙をはかることが説明されました。まあ、道には何の権限もないから、これから厚労省が仕掛けてくるくだらないことを、そのまま市町村に垂れ流すと言うことです。

 一方、過労の撲滅を求める労働者の側として、連合北海道組織対策局のS局長は、1年間に連合北海道が受けた1千件の労働相談から、「長時間労働に関する相談は、20代は当事者から、40~50代は家族からの相談が多い」と分析し、当事者の健康状態を家族が心配する相談が多い実態から、家族を含めてワークルールの知識普及が必要であり、学校の「公民教科書」での労働基準の仕組み教育の重要さを提起しました。
 これはこれで、仲間の批判をしてもなんですから、いいとは思うのですが、特に全国の「公民教科書」を比較検討して、最低賃金制度ですら記載がないと言うことについて指摘したのは、面白い視点であると思いますが、まずその前に、人集めをきちんとしておかないと、良いこと言っても広がらないんだよね。

 ところで、私は、「疲労と過労の違いは区別できますか」と問いかけ、過労は、疲れたと感じない 休息によって軽減しないこと、起こりっぽくなったり、悲しくなったり、激しいなどの精神症状や、集中力が回復しない、腰痛や頭痛などの身体症状が慢性的にあるという特徴があること。 さらに、過労になりやすい性格(生真面目)や身体傾向(生活習慣病的体質)があることや、裁判でほぼ確定している「過労死ライン3千時間」のなかみと、過労による突然死や自殺問題に関して、最高額は2億円を超えている損害賠償等の企業リスクは大きく高まっていることにも触れました。
 また、試算を示して、同じ業務量を3人でこなすときの時間外労働割り増しを含む支払総額と、それを4人でこなしたときの方が経費としては安上がりになることを表で示し、長時間労働は企業経済的にも経費の膨張をまねき、しかも労働者の健康を害するから、法を契機にぜひ見直すべき時と提起しました。

 また、現状での過重労働のおもな防止策として、
①時間外労働の限度基準告示、
②労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準、
③過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置
をあげ、特に若年層の22.5%が年間労働時間3千時間という「過労死ライン」にいることを指摘し、労基法36条協定の当事者でもある過半数労働組合が、長時間労働の撲滅に取り組むべき責務についても訴えました。

 労働安全衛生の観点からは、長時間労働と健康リスクに関して、長時間労働は心筋梗塞のリスクを2.9倍に、糖尿病のリスクを5倍にするという研究結果があることも紹介しました。

 最後に、労働時間管理の「好事例」として、北海道人事委員会の「企業や自治体の先進事例からみた時間外勤務の縮減方策の検討」や、厚生労働省の「中小企業における長時間労働見直し支援事業」から、
①顧客を巻き込んだ業務改善により効率を向上、
②自ら決めるノー残業デーと効率向上の目標設定、
③トップダウンで業務改善推進し時間管理も適正化、
④(管理職の)人事評価制度との連動による時間外労働の抑制、
⑤業務ローテーションにより「1人何役」のスキルアップを図り業務集中対策、
⑥パート・アルバイトの能力管理と改善提案などで、厳格な労働時間管理をすべきなどを提案しました。

 今年1月のNHKの番組で「国東(くにさき)時間」というのが話題になったことがあります。大分県の国東半島のある工場が、1日10時間労働で週4日。つまり週休3日を実施したところ、売り上げも伸びたし、社員の評判もいいという内容で、大分県では、レストランや介護施設にも導入するところがあるようです。これも、労働効率の改善やワークライフバランスで業務取り組みの積極性を高めるという点で、参考になることではないでしょうか。いまや市場が縮小する時代です。長く働くことが「一生懸命」の評価にはつながらないと思います。

 ということで、北大の先生も来ていましたが、得ることはなかったと思って帰ったでしょう。
 しかし、聞くところによると、こんな取り組みをしているのは、地方連合では北海道だけだそうです。
 終わっているんでないかい?
 じゃんじゃん。

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