ドイツは 「アンチ・ストレス法」 の制定を目指す ― 2015年02月13日 09:46
全国センターのTさんのブログから転載します。非常に重要な提起です。
朝日新聞社の 「The Asahi Shimbun GLOBE」 2015年2月1日号は特集 「メンタルヘルス 職場のうつを考える」 です。
1面に大きく 「1 / 5 世界」 そして 『心の病』 と診断される人が増えている。本人が苦しむのはもちろん、経済への影響も心配されている。職場で家庭で、『心の病』 にどう向き合っていけばいいのか。」 とあります。
その説明です。「世界の5人に1人が心の不調を抱えている OECDは2012年、世界の15~64歳のうち、症状の重い心の病を抱えている人が5%、軽い心の不調を抱えている人が15%いると推定した。合わせると、5人に1人が心の不調を抱えていることになる。」
2面に大きく 「1 / 3」 とあります。その説明です。「うつ病と診断された時に勤め先に伝えるという人は、3人に1人 『うつ病と診断された場合、そのことを勤め先に言うか』との質問に対し、『言う』 が34%、『言わない』 が28%、『分らない』 が37%だった。欧州うつ協会が2012年、英国、フランス、ドイツなど欧州7か国で16~64歳の7065人を対象に調べた。」
イギリスとドイツの状況を報告しています。
まずイギリスです。
心の病は本人を苦しめるだけでなく、経済にも影響する。そんな議論が06年、英国で起こった。経済学者で上院議員でもあるリチャード・レイヤードが 「うつと不安障害による経済損失が年間120億ポンド (約2兆円) に上る」 との報告書を公表した。政府は、3000人を超える心理士を新たに養成するなど対策に乗り出す。
09年には、政府も出資し支援団体が主導する 「タイム・トゥ・チャレンジ」 (変わるときだ) というキャンペーンが発足。賛同する企業が相次いだ。
キャンペーンに加わった生活用品大手P&G。ロンドン郊外にある英国本社を訪ねた。出迎えてくれた人事部長のリチャード・セビルはこう強調した。「従業員のパフォーマンスを維持するために、心も体も健康であることが重要だ。そのためにはまず、心の健康についてオープンに語れる雰囲気を作りたい」
セビルによると昨年秋、社員食堂につながるガラス張りの廊下の壁面に縦80センチ、横60センチのポスター6枚を貼りだした。それぞれに大きな顔写真が印刷されていて、メッセージが添えられているという。たとえばこんな具合だ。
「15年前、私は不安障害を経験した。苦しかったが、その経験のおかげでより強い人間になることができた」
顔写真の主は、同社の幹部や従業員6人。そのうち4人は本人が過去に心の病に苦しみ、残りの2人は家族や同僚が患ったという人たちだ。人事部長のセビルは言う。「それぞれの職場で尊敬されている6人にお願いした。心の病は克服できる。だから率直に語ろう。そのメッセージを最もパワフルに伝えられるのは、同じ職場で働く顔見知りの同僚だ」
イギリスの3000人を超える心理士を新たに養成については、『朝日新聞』 が2009年11月17日から19日に連載した 「欧州の安心 心を癒す」 に 「イギリス 『心の病は国の損失』」 の見出しで紹介されました。取材した記者に講演をお願いしました。その時の講演録の抜粋です。
イギリスは、軽症も含めれば6人に1人、約1.000万人が 「うつ病」 や 「不安障害」 で悩んでいるといわれています。日本の10倍ぐらいの数です。治療を受けているのはそのうちの4人に1人です。こころの病による経済的損失は年間約120億ポンド (約1兆8千億円) といわれています。
罹患者の希望は薬より心理療法なのに、実際に心理療法を受けているのは1割未満です。しかも受けたいと思ってから受けるまで平均1年は待たなければならない状況でした。
何とかしなければならないということで、2008年秋から国の施策としてIAPT (Improving Access to Psychological Therapies 「心理療法アクセス改善」) プログラムを導入し、“すべての患者に認知行動療法を” の計画が始められました。
メインは認知行動療法を行える臨床心理士を3年間で3.600人育成することです。
3年間で約460億円の予算です。希望する90万人が新たに治療を受けられ、半数が回復すると試算しました。そうすると2万5千人が疾病手当受給から外れると試算しました。まさに経済的な発想からです。
認知行動療法とは、ものの考え方や見方「認知」を変え、それに伴った 「行動」 を取ること、心を軽くする技術を学ぶ心理療法です。
例えばうつ病の状態の時は、誰か知り合いに出会ってもそっぽを向かれてしまった場合、あの人は私のことを嫌いなんだとさらに落ち込んでしまいます。そういうものの考え方や見方、「認知」 を変え、もしかしたら気付かなかっただけかもしれない、次に会ったらこちらから挨拶してみようというように心の重荷を軽くするスキルを学ぶカウンセリング方法です。
治療の対象者は、成人の軽から中度のうつ病罹患者と不安障害患者で、1回50分のセッションを16~20回、心理療法と栄養指導などの生活支援を組み合わせて受けます。
うつ病罹患者に対するいろいろのカウンセリングや療法方法があります。
日本のカウンセリングは、大変でしたね、つらかったですねという 「傾聴型」 がメインです。しかし実は傾聴型が回復に効果があるというエビデンスはありません。唯一認知行動療法だけが効果があることが証明されています。
認知行動療法は、色々スキルも学ぶので、治った後も再発する率が小さいというエビデンスもあります。
日本ではまずこの薬を飲みましょうかから始まりますが、イギリスでは軽いうつ病罹患者や不安障害患者には最初は薬物治療を行いません。
かつては1年半待ちだったが、今は数週間待ちで治療開始です。実際に全国的に導入する前に行ったパイロット・スタディーでは約半数が回復しました。
イギリスでどうしてこの政策が実現したのか。
2人のキーパーソンがいます。幸福経済学を研究しているロンドン大学経済政治学院のリチャード・レイヤード名誉教授とロンドン・キングス大学で臨床心理士のデビット・クラーク教授です。2人が意気投合し、2005年の総選挙で労働党のマニフェストに心理療法盛り込ませることに成功し、労働党が勝利しました。
なぜ労働党を説得できたか。経済的損失、IATPの導入予算は3年間で460億円だが、1兆8千億円の経済的損失と比較したら導入予算の方が少ない、疾病手当も給付金も減る、おつりがくると説得したそうです。しかも生産性が向上すると。
もうひとつ、イギリスの医療はガイドラインがしっかりしています。2004年に、医療の方向性を定める国立の診療評価機構は 「うつ病や不安障害患者への心理療法 (認知行動療法) は、薬物療法と同じ効果あり、再発防止効果はより高い」とする指針を発行しました。国はこの指針を導入する必要性にも迫られていました。
さらにIATP治療を受ける過程で復職支援システムともリンクさせよう、そうすると職場復帰が増えるということで導入されました。
ドイツです。
心の病はドイツでも大きな問題になっている。健康保険組合によると、「バーンアウト (燃え尽き症候群)」 による病気休暇が04年には組合員1000人あたり4.5日だったが、11年は86.9日に急増した。自動車大手フォルクスワーゲンは11年末、労働組合との間で 「メール停止労使協定」 を結んだ。対象は事務職約1000人。夕方6時15分から朝7時まで、会社から貸与されているスマートフォンに電子メールが届かないようにした。
職場での健康づくりに取り組む労働健康研究書の所長、ディルク・ビンデムートは 「ストレスを減らすために情報の量を制限することは有効だ」 と評価する。
労働大臣、アンドレア・ナーレスの昨年8月、現地紙のインタビューに、労働者のストレスを取り除くことを企業に義務づける基本法 「アンチ・ストレス法」 の制定を目指す考えを表明、政府の研究機関に効果のある対策の検討を指示した。
大きく [経済的損失] 4%とあります。その説明です。「心の病による経済損失はGDPの4% スイスに本部を置く 『世界経済フォーラム』 は、2010年に心の病が全世界で与えた経済損失を2兆4930億ドル (約290兆円) と資産した。世界の国内総生産 (GDP) の4%、フランスや英国一国分のGDPに相当する。」
心の健康が、職場を中止に脅かされている――。そんな危機感が世界に広がっている。
日本では1998年から14年連続で自殺者数が3万人を超え、過労自殺が社会問題になった。うつ病や躁うつ病と診断された人は2008年に100万人を突破。ほぼ10年で2倍以上に増えた。
欧米でも職場のストレスが深刻だ。08年~09年、仏通信大手フランス・テレコムで従業員30人以上が自殺したと報道され話題になった。ドイツでは11年、「バーンアウト (燃え尽き症候群)」 が流行語になった。
産業医として30年以上のキャリアがある英通信大手ブリティッシュ・テレコムの主任医務官、ポール・リッチフィールドは 「30年前、職場の健康問題といえば、アスベストや騒音や振動による影響だった。今、働き方はガラリと変わった。09年以降の欧州経済危機の影響で、心理的なプレッシャーは激しさを増している。欧州の企業にとって最大の健康問題はメンタルヘルスだ」 と指摘する。
仕事のストレスが一因となりうる代表的な心の病が、うつ病だ。
気分が落ち込み、何をしても楽しくなくなり、夜も眠れず、死にたくなる人もいる。そんなうつ病が2030年には、世界の人々の健康を害する最大の病気になる、と世界保健機構 (WHO) は予測する。
10~20代で発症することの多い統合失調症と異なり、うつ病は働き盛りの中高年もなりやすい。経済への影響も深刻だ。
うつ病などで仕事を辞めれば、国が失業給付や障害給付を支払う。経済協力開発機構 (OECD) によると、障害給付の支出額のうち心の病の患者の分が占める割合は09年代半ばからほぼ倍増した。医療費に占める心の病の割合もフランスで6.6% (98年) から13.5% (02年) に、ドイツで4.8% (02年) から17.4% (06年) に増えた。
心の問題が原因で、欠勤したり出勤できたとしても充分に能力を発揮できなかったりすることもある。そんな人たちの数は、重い症状の心の病で職場を離れる人よりもさらに多く、障害給付や医療費などの直接的な支出以上に大きな経済損失とも言われる。
ただ、心の病については、原因や仕組みに不明な点も多く、「病気」 と 「健康」 の線引きが難しい。予防も治療も手探りの状態が続いている。
大きく 「$1.62」 とあります。その説明です。「メンタルヘルスに対する世界の人口1人あたりの年間支出 WHOの2011年の報告によると、各国の政府がメンタルヘルス政策に支出している金額は人口1人あたり年間1.63ドル。低所得国で0.20ドル、高所得国で44.84ドルと200倍以上の開きがある。」
3面以降では、フィジー共和国や、日本の状況や解説、体験談などが掲載されています。
バブル経済の崩壊の影響をうけて日本は 「心の病」 の 「先進国」 でしたがリーマンショック後、ヨーロッパでも問題になっています。「心の病」 の捉え方には共通点が見られますが対策は違っています。ヨーロッパでは社会の問題、そして経済に影響を及ぼすと捉えて対策が進められてます。
お互いの成功した取り組みを共有した取り組みが必要です。
ドイツでは、労働者のストレスを取り除くことを企業に義務づける基本法 「アンチ・ストレス法」 の制定を目指しています。
日本ではストレスチェックの掌握止まりです。日本の取り組みは本当に遅いです。 「タイム・トゥ・チャレンジ」 (変わるときだ) です。
英国とドイツの例で、メンタル不調が企業に大きなダメージを与えることが経済的に推計されています。
日本でも、厚生労働省やJILPTなどで推計が行われており、約3兆円~11兆円と相当幅がある推計となっていますが、ダメージがあることにはかわりありません。
さらに今回は触れられていませんが、日本ではびこっているのは「人事権の乱用」です。人的資源をもののように動かすことが、公務職場ではまだ大部分であり、そこにメンタル不全の発症と、せっかく復職してもすぐ再発する根っこがあります。
少し前までは、「完全終身雇用」でした。その時代は「上」の意向は絶対でしたが、いまは終身雇用の終焉とともに「上」の意向も通じなくなりました。公務の職場はそれがわかっていません。相変わらずの無責任と感情による支配がまかり通り、人的資源を無駄にし続けています。札幌市の新規採用は定員の1.5倍を取らないと、1年後には定員割れしてしまうそうです。
今日本の職場、特に公務職場に必要なマネジメントは、「その職場をうまく回すために必要な能力と経験、アイデンティティーは何か」を問う人事システムです。
じゃんじゃん。
朝日新聞社の 「The Asahi Shimbun GLOBE」 2015年2月1日号は特集 「メンタルヘルス 職場のうつを考える」 です。
1面に大きく 「1 / 5 世界」 そして 『心の病』 と診断される人が増えている。本人が苦しむのはもちろん、経済への影響も心配されている。職場で家庭で、『心の病』 にどう向き合っていけばいいのか。」 とあります。
その説明です。「世界の5人に1人が心の不調を抱えている OECDは2012年、世界の15~64歳のうち、症状の重い心の病を抱えている人が5%、軽い心の不調を抱えている人が15%いると推定した。合わせると、5人に1人が心の不調を抱えていることになる。」
2面に大きく 「1 / 3」 とあります。その説明です。「うつ病と診断された時に勤め先に伝えるという人は、3人に1人 『うつ病と診断された場合、そのことを勤め先に言うか』との質問に対し、『言う』 が34%、『言わない』 が28%、『分らない』 が37%だった。欧州うつ協会が2012年、英国、フランス、ドイツなど欧州7か国で16~64歳の7065人を対象に調べた。」
イギリスとドイツの状況を報告しています。
まずイギリスです。
心の病は本人を苦しめるだけでなく、経済にも影響する。そんな議論が06年、英国で起こった。経済学者で上院議員でもあるリチャード・レイヤードが 「うつと不安障害による経済損失が年間120億ポンド (約2兆円) に上る」 との報告書を公表した。政府は、3000人を超える心理士を新たに養成するなど対策に乗り出す。
09年には、政府も出資し支援団体が主導する 「タイム・トゥ・チャレンジ」 (変わるときだ) というキャンペーンが発足。賛同する企業が相次いだ。
キャンペーンに加わった生活用品大手P&G。ロンドン郊外にある英国本社を訪ねた。出迎えてくれた人事部長のリチャード・セビルはこう強調した。「従業員のパフォーマンスを維持するために、心も体も健康であることが重要だ。そのためにはまず、心の健康についてオープンに語れる雰囲気を作りたい」
セビルによると昨年秋、社員食堂につながるガラス張りの廊下の壁面に縦80センチ、横60センチのポスター6枚を貼りだした。それぞれに大きな顔写真が印刷されていて、メッセージが添えられているという。たとえばこんな具合だ。
「15年前、私は不安障害を経験した。苦しかったが、その経験のおかげでより強い人間になることができた」
顔写真の主は、同社の幹部や従業員6人。そのうち4人は本人が過去に心の病に苦しみ、残りの2人は家族や同僚が患ったという人たちだ。人事部長のセビルは言う。「それぞれの職場で尊敬されている6人にお願いした。心の病は克服できる。だから率直に語ろう。そのメッセージを最もパワフルに伝えられるのは、同じ職場で働く顔見知りの同僚だ」
イギリスの3000人を超える心理士を新たに養成については、『朝日新聞』 が2009年11月17日から19日に連載した 「欧州の安心 心を癒す」 に 「イギリス 『心の病は国の損失』」 の見出しで紹介されました。取材した記者に講演をお願いしました。その時の講演録の抜粋です。
イギリスは、軽症も含めれば6人に1人、約1.000万人が 「うつ病」 や 「不安障害」 で悩んでいるといわれています。日本の10倍ぐらいの数です。治療を受けているのはそのうちの4人に1人です。こころの病による経済的損失は年間約120億ポンド (約1兆8千億円) といわれています。
罹患者の希望は薬より心理療法なのに、実際に心理療法を受けているのは1割未満です。しかも受けたいと思ってから受けるまで平均1年は待たなければならない状況でした。
何とかしなければならないということで、2008年秋から国の施策としてIAPT (Improving Access to Psychological Therapies 「心理療法アクセス改善」) プログラムを導入し、“すべての患者に認知行動療法を” の計画が始められました。
メインは認知行動療法を行える臨床心理士を3年間で3.600人育成することです。
3年間で約460億円の予算です。希望する90万人が新たに治療を受けられ、半数が回復すると試算しました。そうすると2万5千人が疾病手当受給から外れると試算しました。まさに経済的な発想からです。
認知行動療法とは、ものの考え方や見方「認知」を変え、それに伴った 「行動」 を取ること、心を軽くする技術を学ぶ心理療法です。
例えばうつ病の状態の時は、誰か知り合いに出会ってもそっぽを向かれてしまった場合、あの人は私のことを嫌いなんだとさらに落ち込んでしまいます。そういうものの考え方や見方、「認知」 を変え、もしかしたら気付かなかっただけかもしれない、次に会ったらこちらから挨拶してみようというように心の重荷を軽くするスキルを学ぶカウンセリング方法です。
治療の対象者は、成人の軽から中度のうつ病罹患者と不安障害患者で、1回50分のセッションを16~20回、心理療法と栄養指導などの生活支援を組み合わせて受けます。
うつ病罹患者に対するいろいろのカウンセリングや療法方法があります。
日本のカウンセリングは、大変でしたね、つらかったですねという 「傾聴型」 がメインです。しかし実は傾聴型が回復に効果があるというエビデンスはありません。唯一認知行動療法だけが効果があることが証明されています。
認知行動療法は、色々スキルも学ぶので、治った後も再発する率が小さいというエビデンスもあります。
日本ではまずこの薬を飲みましょうかから始まりますが、イギリスでは軽いうつ病罹患者や不安障害患者には最初は薬物治療を行いません。
かつては1年半待ちだったが、今は数週間待ちで治療開始です。実際に全国的に導入する前に行ったパイロット・スタディーでは約半数が回復しました。
イギリスでどうしてこの政策が実現したのか。
2人のキーパーソンがいます。幸福経済学を研究しているロンドン大学経済政治学院のリチャード・レイヤード名誉教授とロンドン・キングス大学で臨床心理士のデビット・クラーク教授です。2人が意気投合し、2005年の総選挙で労働党のマニフェストに心理療法盛り込ませることに成功し、労働党が勝利しました。
なぜ労働党を説得できたか。経済的損失、IATPの導入予算は3年間で460億円だが、1兆8千億円の経済的損失と比較したら導入予算の方が少ない、疾病手当も給付金も減る、おつりがくると説得したそうです。しかも生産性が向上すると。
もうひとつ、イギリスの医療はガイドラインがしっかりしています。2004年に、医療の方向性を定める国立の診療評価機構は 「うつ病や不安障害患者への心理療法 (認知行動療法) は、薬物療法と同じ効果あり、再発防止効果はより高い」とする指針を発行しました。国はこの指針を導入する必要性にも迫られていました。
さらにIATP治療を受ける過程で復職支援システムともリンクさせよう、そうすると職場復帰が増えるということで導入されました。
ドイツです。
心の病はドイツでも大きな問題になっている。健康保険組合によると、「バーンアウト (燃え尽き症候群)」 による病気休暇が04年には組合員1000人あたり4.5日だったが、11年は86.9日に急増した。自動車大手フォルクスワーゲンは11年末、労働組合との間で 「メール停止労使協定」 を結んだ。対象は事務職約1000人。夕方6時15分から朝7時まで、会社から貸与されているスマートフォンに電子メールが届かないようにした。
職場での健康づくりに取り組む労働健康研究書の所長、ディルク・ビンデムートは 「ストレスを減らすために情報の量を制限することは有効だ」 と評価する。
労働大臣、アンドレア・ナーレスの昨年8月、現地紙のインタビューに、労働者のストレスを取り除くことを企業に義務づける基本法 「アンチ・ストレス法」 の制定を目指す考えを表明、政府の研究機関に効果のある対策の検討を指示した。
大きく [経済的損失] 4%とあります。その説明です。「心の病による経済損失はGDPの4% スイスに本部を置く 『世界経済フォーラム』 は、2010年に心の病が全世界で与えた経済損失を2兆4930億ドル (約290兆円) と資産した。世界の国内総生産 (GDP) の4%、フランスや英国一国分のGDPに相当する。」
心の健康が、職場を中止に脅かされている――。そんな危機感が世界に広がっている。
日本では1998年から14年連続で自殺者数が3万人を超え、過労自殺が社会問題になった。うつ病や躁うつ病と診断された人は2008年に100万人を突破。ほぼ10年で2倍以上に増えた。
欧米でも職場のストレスが深刻だ。08年~09年、仏通信大手フランス・テレコムで従業員30人以上が自殺したと報道され話題になった。ドイツでは11年、「バーンアウト (燃え尽き症候群)」 が流行語になった。
産業医として30年以上のキャリアがある英通信大手ブリティッシュ・テレコムの主任医務官、ポール・リッチフィールドは 「30年前、職場の健康問題といえば、アスベストや騒音や振動による影響だった。今、働き方はガラリと変わった。09年以降の欧州経済危機の影響で、心理的なプレッシャーは激しさを増している。欧州の企業にとって最大の健康問題はメンタルヘルスだ」 と指摘する。
仕事のストレスが一因となりうる代表的な心の病が、うつ病だ。
気分が落ち込み、何をしても楽しくなくなり、夜も眠れず、死にたくなる人もいる。そんなうつ病が2030年には、世界の人々の健康を害する最大の病気になる、と世界保健機構 (WHO) は予測する。
10~20代で発症することの多い統合失調症と異なり、うつ病は働き盛りの中高年もなりやすい。経済への影響も深刻だ。
うつ病などで仕事を辞めれば、国が失業給付や障害給付を支払う。経済協力開発機構 (OECD) によると、障害給付の支出額のうち心の病の患者の分が占める割合は09年代半ばからほぼ倍増した。医療費に占める心の病の割合もフランスで6.6% (98年) から13.5% (02年) に、ドイツで4.8% (02年) から17.4% (06年) に増えた。
心の問題が原因で、欠勤したり出勤できたとしても充分に能力を発揮できなかったりすることもある。そんな人たちの数は、重い症状の心の病で職場を離れる人よりもさらに多く、障害給付や医療費などの直接的な支出以上に大きな経済損失とも言われる。
ただ、心の病については、原因や仕組みに不明な点も多く、「病気」 と 「健康」 の線引きが難しい。予防も治療も手探りの状態が続いている。
大きく 「$1.62」 とあります。その説明です。「メンタルヘルスに対する世界の人口1人あたりの年間支出 WHOの2011年の報告によると、各国の政府がメンタルヘルス政策に支出している金額は人口1人あたり年間1.63ドル。低所得国で0.20ドル、高所得国で44.84ドルと200倍以上の開きがある。」
3面以降では、フィジー共和国や、日本の状況や解説、体験談などが掲載されています。
バブル経済の崩壊の影響をうけて日本は 「心の病」 の 「先進国」 でしたがリーマンショック後、ヨーロッパでも問題になっています。「心の病」 の捉え方には共通点が見られますが対策は違っています。ヨーロッパでは社会の問題、そして経済に影響を及ぼすと捉えて対策が進められてます。
お互いの成功した取り組みを共有した取り組みが必要です。
ドイツでは、労働者のストレスを取り除くことを企業に義務づける基本法 「アンチ・ストレス法」 の制定を目指しています。
日本ではストレスチェックの掌握止まりです。日本の取り組みは本当に遅いです。 「タイム・トゥ・チャレンジ」 (変わるときだ) です。
英国とドイツの例で、メンタル不調が企業に大きなダメージを与えることが経済的に推計されています。
日本でも、厚生労働省やJILPTなどで推計が行われており、約3兆円~11兆円と相当幅がある推計となっていますが、ダメージがあることにはかわりありません。
さらに今回は触れられていませんが、日本ではびこっているのは「人事権の乱用」です。人的資源をもののように動かすことが、公務職場ではまだ大部分であり、そこにメンタル不全の発症と、せっかく復職してもすぐ再発する根っこがあります。
少し前までは、「完全終身雇用」でした。その時代は「上」の意向は絶対でしたが、いまは終身雇用の終焉とともに「上」の意向も通じなくなりました。公務の職場はそれがわかっていません。相変わらずの無責任と感情による支配がまかり通り、人的資源を無駄にし続けています。札幌市の新規採用は定員の1.5倍を取らないと、1年後には定員割れしてしまうそうです。
今日本の職場、特に公務職場に必要なマネジメントは、「その職場をうまく回すために必要な能力と経験、アイデンティティーは何か」を問う人事システムです。
じゃんじゃん。
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