DVD 「ストレスの不思議」の要約 その12015年02月16日 13:28

 DVD 「ストレスの不思議」を要約してお送りします。
 とてもわかりやすいし、重要な内容です。4回くらいに分かれます。

 私たちの心を苦しめるストレス。大きなストレスを感じると、人は不安になり夜も眠れなくなる。しかし、ストレスは害をもたらすばかりではない。ストレスには命を救う働きもある。
 サバンナで生きる動物にとってストレスとは、緊急事態が起きた時に自分の身を守るための生体反応。
 本来、命を守るための機能として備わっているはずのストレス反応は、今や私たちに災いをもたらすものへと変わってしまった。最近の研究で、ストレスが測定可能な危険因子であることがわかってきた。
 ストレスは、抽象的な概念ではない。しかも、今すぐに手を打たなければならないもの。ストレスは、私たちの体に恐ろしい影響を及ぼす。慢性的なストレスは、脳細胞を死滅させるほどの強烈なダメージを与える。ストレスは、私たちの脳を萎縮させ、肥満の原因となり、染色体にまで深刻な影響を与える。
 善と悪、両方の顔を持つストレス。その正体に迫る。

○生命維持に不可欠

 アメリカ カリフォルニア州 スタンフォード大学 神経生物学の教授 ロバート・サボルフスキーは、30年以上に亘ってストレスについての研究を進めてきた。
 彼が調べているのは、「ストレスが人体に与える影響と社会的地位がストレスの受け方にどう影響するか」。毎年、ケニアのマサイマラ国立保護区へ行き、ヒヒの群れの調査を行っている。
 ストレスと病気の関連を解明するため、人間以外の動物を観察しようと30年以上前にケニアを訪れた。この辺りには餌が豊富にあり、餌を探すのに3時間程しかかからない。その為、ヒヒには毎日9時間の自由な時間がある。彼らはその時間を仲間をいじめる事に使っている。ヒヒのストレスは、肉食動物に襲われることではなく、仲間内の社会的、精神的な摩擦によって生じる。人間社会が抱えるストレスと病気の関係を研究するのに、ピッタリのモデル。
 ストレスが身体に及ぼす影響を見るため、サボルフスキーは野生のヒヒを細胞レベルまで詳しく調査。採取した血液から、ストレス反応を起こすホルモンレベルを計測する。ストレス反応を起こす2つのホルモンから、体内の状況を知ることが出来る。一つは、アドレナリン。もう一つは糖質コルチコイド。副腎から分泌されるこの2つのホルモンが、ストレス反応の中心をなしている。
 これらのホルモンとストレス反応は、実は生命の維持に欠かせないもの。ストレスは、草食動物が肉食動物に襲われた時やその逆といった、非常に緊迫した状況で生じる。
 そうした状況では、体の基本的な機能が何より優先される。大量の酸素を取り込むために、肺は過剰に活動し、心臓がその酸素を全身に送り、筋肉の素早い反応を促す。肉食動物から逃れようと、死に物狂いで走っている時、逃げ延びるために必要のない機能は抑制される。例えば、排卵や皮膚の修復などは後回しになる。

○“適度”なストレス

 無事に逃げ切ると、ストレス反応はストップする。しかし、人間は動物と違いそのスイッチを切ることが出来ない。
 人間は精神的な事が原因で、ストレス反応を引き起こす。交通渋滞で生じたストレス反応を引きずっていると、過剰なホルモンによって、体が蝕まれる。命に関わるほどではないが、過呼吸や動悸、筋肉の緊張などの症状が表れる。あれこれ思い悩むことで、ストレス反応はストレスを引き起こした原因そのものより大きなダメージを与えるようになる。
 何か立ち向かうべき事に直面した時の、身体の対処がストレス。命に関わることもあれば、楽しい事の場合もある。適度なストレスであれば、良い刺激になる。
 大切なのは、ストレスをなくす事ではなく、適切なストレスを得る事。
 わざわざお金を払ってジェットコースターに乗り、スリルを味わうのも適度なストレスを得るため。このストレスは、一過性のもの。ジェットコースターに3週間乗り続ける人はいない。安全な環境の中で、ほんの一瞬スリルを味わって、バランスを取っている。
 しかし、普段の生活では我々人間も、野生のヒヒもストレスをコントロールすることは出来ない。喧嘩に負けたヒヒのオスは、自分よりも体が小さいオスを追いかけ、そのオスはメスに噛み付く。そしてメスは子どもを叩き、子どもは赤ちゃんを木から落とす。そういった連鎖反応が起きる。
 予測していなかった事態が起きるというのは、大きなストレスの原因になる。機嫌の悪い他者から腹立ちまぎれに、いきなりお尻をひっぱたかれるような状況が、社会的順位の低い者にとって、相当大きな精神的ストレスになる。
 サボルフスキーの大きな業績に、ヒヒの群れにおけるストレスと階層の関連を明らかにしたものがある。
 ヒヒの群れは、100頭を超えることもある。その大きくて複雑な社会で生き抜くため、彼らは人間同様、脳を大きく発達させてきた。生き残るには政治的手腕が必要。もっとも狡猾で、攻撃的なオスがトップの座に
つき、メスや食べ物を独占する上、毛づくろいをしてくれる専用のヒヒまでいる。誰が自分をいじめ、自分は誰をいじめるのか、オスは皆自分の順位を心得ている。
 22年前にサボルフスキーは、血液中のストレスホルモンを計測した調査で、ヒヒの順位はストレスホルモンのレベルを決定するということを発見した。支配的なオスはホルモンレベルが低く抑えられているが、順位が下がるにつれ数値が高まることが分かった。更に群れの中で最も順位が低いヒヒは、脈が早く、血圧も高くなっていた。
 これによって、野生の霊長類に関し、ストレスと健康の悪化の関連が初めて明らかとなった。
 群れの中でストレスを受けたヒヒは、血圧やストレスホルモンのレベルが上昇し、免疫システムもうまく働かなくなってしまう。その上、生殖機能にも変調をきたしてしまう。その時のヒヒの脳内の化学物質は、うつ状態の人間とそっくりな状態を示す。これでは健康な老後は迎えられないだろう。

つづく。じゃんじゃん。