DVD 病の起源 心臓病〜高性能ポンプの落とし穴〜 その32015年03月06日 10:33

○ 脳の巨大化と心筋梗塞増加に謎の物質が!?

 Gcを研究してきたバルキ教授は、遺伝子の研究からGcに関する注目すべき事実を突き止めた。私たちの祖先が暮らしていた370万年前のアフリカ。この頃、人類の細胞にはほかの哺乳類と同じようにGcがあった。しかし遺伝子解析の結果、およそ270万年前頃にGcを失ったことがわかってきた。
 この頃、何が起きたのか?
 脳の大きさの変化を見ると、ちょうどGcを失った頃を境に、脳は急速に巨大化していた。実は、この脳の巨大化は、Gcを失ったことに関わっているのではいか?と考えられている。
 脳は、神経細胞から成長を促す物質が出ることでネットワークを発達させていく。しかしGcがあると、この物質が出にくくなり、脳の発達が抑制されると考えられる。人類の脳は、Gcを失ったことで逆に成長が促され、巨大化した可能性があるという。
 Gcを失い、脳が大きくなり始めた人類。高度な石器を作り、狩りを行うなど急速に知性を発達させていく。6万年前、アフリカを出て世界に進出していった人類は、以前とはまったく違う暮らしを始めた。

○ 文明社会 〜農耕や牧畜による食料生産革命により、食料を安定して得られるようになった。

 しかし、このことが270万年前に失い、異物となったGcを体内に大量にもたらした。牧畜が始まり、私たちはGcを含んだ肉をかつてないほど大量に食べるようになり、Gcが血管で炎症を起こすようになった。Gcを失った人類の進化が、皮肉にも心筋梗塞を招いていた。
 年間1人あたりの世界の肉の消費量は、年々増え続けている。肉、塩、糖、アルコール、たばこも摂り過ぎると、心臓の血管を痛めて心臓病のリスクを高める。

○ 妊婦の栄養不足が赤ちゃんの心臓に・・・ 食べな過ぎも心臓病のリスクを高める

 今、日本では心臓病などのリスクを下げるため、妊婦への栄養指導に力が入れられている。指導が行われるのは、進化の中でヒトは胎児の段階から心臓が傷みやすくなったことがわかってきたから。
 オランダ アムステルダム大学病院で行われた大規模な調査から、妊娠期に栄養不足に陥ると、子供が成人後、心臓病になり易いことが明らかになった。
 第二次世界大戦中、オランダはドイツ軍による食料封鎖を受けた。
その時、妊婦たちは深刻な食料不足に苦しめられた。
 発達・健康学 ローズブーム教授は、当時生まれた人たちを追跡調査した。
 調査の結果、飢餓を経験した母親の子供は、心臓病になる割合が2倍も高かった。母親の栄養状態が悪いと生まれた赤ちゃんは、その後健康的な食生活を送っても心臓病になりやすいことがわかった。生まれる前から病気のリスクを負ってしまう。

※ 「飢餓の冬」参照 http://zoumatsu.asablo.jp/blog/2015/02/18/7573676

 胎児期の栄養不足が、どのような仕組みで心臓病のリスクを高めるのか?
 オレゴン健康科学大学 発生生理学 ソーンバーグ教授は、妊娠した羊を使って子供の心臓への影響を調べている。実験の結果、栄養不足の状態で育った心臓は、正常では見られない丸まった細胞がある。これは、発達の途中で死んでしまった細胞。心臓の筋肉の細胞は、胎児期にだけ分裂し、その後は増えない。胎児期に細胞が死ぬと、本来より細胞の数が少ない心臓になってしまう。一生少ない細胞で働き続けなければならない心臓は、早く消耗してしまう。
 胎児期に心臓の発達が妨げられるのは、脳の進化と深く関わっていると考えられている。進化の過程で、ヒトは胎児期に脳の発達を最優先した。そのため栄養が不足すると、脳に多くの血液が送られ、心臓が犠牲になる。そして成人後、心臓病を引き起こすとことにつながってしまう。胎児期の栄養不足が心臓病を招くのは、脳の巨大化の代償だった。
進化の過程で、脳を3倍以上も巨大化させてきた人類。生まれる前から心臓は脳に翻弄されている。妊娠中の女性はしっかり栄養を摂らなければいけない。

つぎは、「じゃぁどうするの?」です。
じゃんじゃん。