認知症サポーター その3 (続き)2015年12月21日 14:28

 さてさて、認知症の続きをやるのを忘れていました。
 前回は風邪気味のため、途中で断念しましたが、今回は、「行動・心理症状」についてです。
 認知症は誰にも起こりうる脳の病気によるもので、85歳以上では4人にI人にその症状があるといわれています。認知症の人が記憶障害や認知障害から不安に陥り、その結果まわりの人との関係が損なわれることもしばしば見られ、家族が疲れ切って共倒れしてしまうことも少なくありません。しかし、周囲の理解と気遣いがあれば穏やかに暮らしていくことは可能なのですから、それを理解することは、とても大事なことなのです。

 それで、記憶障害などの中核症状がもとになり、本人の性格や素質、周囲の環境や人間関係などが影響して出現する症状を「行動・心理症状(BPSD)」と呼びます。
 例えば、元気がなく、引っ込み思案になることがありますが、これは、なんらかの失敗→自信喪失→動作に支障という機序になり、将来の望みを失ってうつ状態になる場合もあります。
 特徴としては、以下のことがあげられています。

○周囲が気づく前から、本人は何かおかしいと気がついています。
○これまでテキパキできた料理も手順が悪く、時聞がかかるうえに、うまくできなくなります。
→「味が違う」「おいしくない」等といわれ、自信を失います。客には出前をとり、毎日の食事も出来合いのお総菜ですますようになったりします。
○家の整理、整頓や掃除もできなくなります。
→片づけるつもりが散らかって収拾がつかなくなり、室内はごちゃごちゃ、大事なものは見つからなくなってしまうことになります。
○意欲や気力が減退したように見えますので、うつ病とよく間違えられます。周囲から身だしなみなどがだらしなくなったと思われることもあります。
○すべてが面倒になり、以前はおもしろかったことでも、興味がわかないという状態がでてきます。

 能力の低下を強く自覚し、密かに認知症に関する本で調べたりしている人もいます。
 自ら認知症を疑って将来に望みをなくし、うつ状態になることもありますので、本人に恥をかかせないよう、自信をなくすような言葉はさけ、本人の尊厳を傷つけるようなことがないようにすることが重要なサポートです。

 また、「できることをやってもらう」ことは必要ですが、できたはずのことができなくなるという体験は、本人が自信をなくす結果になって逆効果です。自分の能力が低下してしまったことを再認識させてしまっては、ますます自信を失わせますから、それとなく手助けをして成功体験に結びつける支援が重要です。

 例の2として、身の回りの動作に支障がでできます。
 認知症が進行すると、入浴、更衣、排泄、食事など、基本的な生活動作に援助を必要とします。
 特に、排泄の失敗は、本人にとっても非常にショッキングなできごとです。失敗の原因は、いろいろあることを理解しておくことが必要です。
 そのほか、以下のことが起こるようになります。

①トイレの場所がわからなくなります
 場所の見当識障害。初めは夜間だけですが、その後日中でもわからなくなりますので、トイレの場所をわかりやすく、風呂場、玄関のたたきなど、トイレと間違えやすい場所のドアを隠す。夜間は、廊下の明かりをつけておく、トイレの明かりをつけドアを開け放しておくといった対応が考えられます。

②衣類の着脱に手間取って汚してしまうことが起こります
 脳血管性認知症で運動障害がある場合や、アルツハイマー型認知症で、更衣がうまくできなくなっている場合などに起こります。脱ぎ着に時間がかからない衣服で着なれているものにします。

③尿意、便意を感じにくくなります
 排尿、排便の周期を観察して、定期的なトイレの誘導で対応できます。

 例の3として、周辺の人が疲弊する「もの盗られ妄想」があります
 しまい忘れをきっかけに、妄想が起きます。
 いつもと遣う場所に預金通帳をしまいこみ、そのことを忘れるなどの「大事なものをしまい忘れる」というのは、記憶障害の中核症状ですが、自立心が強い性格で、心ならずも家族に迷惑をかけている状況を認識している場合、人に頼らず、自立して生きていきたいという気持ちから、自分が忘れるわけなどない(忘れたことが受け入れられない)という思いが現れます。
 その思いを整理する方法として、「通帳がない! 」、「そばで世話をしてくれている人が盗んだ!」と言う「ものとられ妄想」がでます。
 なくし物が出てくればそれでおさまる妄想ですから、周囲の人はあまり深刻にならず、疑われている介護者が疲弊しないよう、心理的な支援をすることが大事です。こういう妄想は、時期が来れば自然に見られなくなります。

 ただし、もの盗られ妄想がより複雑な妄想になることもあります。
 妄想的になりやすい素質を持った人にストレスがかかったときに、単純なもの盗られ妄想から「家の財産をねらっている」とか「家を乗っ取られる」といった妄想に発展します。
 これには「妄想的になりやすい」という素質が深く関与している場合がありますので、妄想を治療する抗精神病薬が効果を上げることが少なくありません。

 単純なもの盗られ妄想にしては、訴えがオーバーだったり、執拗だったりするときは、妄想の対象となっている人を守るためにも、本人の症状を軽減するためにも、認知症をよく理解している専門医に相談することが重要です。

 これらの「行動・心理症状」は、周囲の配慮と環境の整備で補うことができます。あまり深刻にならないことと、理性のしっかりしているときにいっていたことと「病気の言わせること」とをしっかり区別して心構えを作ることが肝心でしょう。
 とりあえず、その3でした。
 じゃんじゃん。