認知症サポーター その42015年12月22日 09:31

 行動障害の例です。
 自分のことや周囲で起こっていることが正しく把握できなくなると、行動がちぐはぐになり、日常生活にも支障が出てきます。

 特に有名な「徘徊」は原因を考えて対応することができます。

① 図書館で数時間過ごすのが日課のAさん。ある冬の日、いつもより2時間遅く出かけたため、暗くなった帰り路、道に迷い、夜遅く疲れ果てた姿で自宅に戻ってきた。
→ 場所の見当識障害が原因です。昼間、風景が見えれば大丈夫なので明るいうちに帰れるように工夫すれば一人で活動できます。

② Bさんは、日曜日の朝、通っている教会に行こうと自宅を出たが、迷子になり、昼過ぎ、とぼとぼと家に戻った。
→ 見当識障害が進んでいますので、送り迎えをすることを考えましょう。

③ Cさんは、夕方になると、遠くの郷里に帰ると言ってたびたび家を出て行こうとするが、ある日、介護者が目を離した隙に出て行き、行方不明になり、翌日、思いがけない場所で保護された。
→ Cさんの症状は、脳の活性が徐々に下がってくる夕方に、場所や時間の見当識障害が深まることがあります。昼寝などで夕方の意識をはっきりさせ、場合によっては薬を使います。

④ Dさんは、妻と買い物の途中、行方不明に.なった。2日後に遠く離れた町で保護された。
→ 常に誰かの見守りが必要になります。介護の支援を考えましょう。

⑤ Eさんは、家の中でも外でも、じっとしていないで歩き続ける。人や物を押しのけ、突き飛ばしてとにかく歩く。
→ 常に誰かの見守りが必要で、介護の支援が必要です。薬物療法が有効な場合もあります。

 このように、徘徊を例に原因を探ってみますが、原因を考えれば対応策もでてきます。

 認知症の診断・治療はとにかく早期発見、早期受診・診断、早期治療が大事なわけですが、その後の認知症の人の生活を左右する非常に重要なことです。認知症はどうせ治らないから医療機関にかかっても仕方ないという誤った考え方は改めましょう。
 
 特に初期は専門の医療機関の受診が不可欠です。認知症の診断は初期ほどむずかしく、熟練した技術と高度な検査機器を要する検査が必要となります。
 受診の内容は、CT、MRI、脳血流検査などの画像検査、記憶・知能などに関する心理検査に加え、脳梗塞、甲状腺ホルモン異常など、認知症のような症状を引き起こす身体の病気ではないことを確認する検査を行います。
 
 早い時期に受診することのメリットは、病気が理解できる時点で受診し、少しずつ理解を深めていけば生活上の障害を軽減でき、その後のトラブルを減らすことも可能です。
 また、障害の軽いうちに障害が重くなったときの後見人を決めておく(任意後見人制度)等の準備をしておけば、認知症であっても自分が願う生き方を全うすることは可能です。

 認知症の治療

 認知症自体を元に戻すことは現在でも難しいのですが、その進行を遅らせることは十分可能です。
 アルツハイマー病は早期ほど、薬で進行を遅らせることができます。初期から使い始めると健康な時間を長くすることも可能になります。
 脳血管性認知症は、治療が可能です。薬や身体活動を高めるリハビリテーション、脳梗塞など、脳血管性認知症の原因となる病気の再発防止などにより、進行を止める可能性が、高くなります。
 また、下記のMCIは運動と頭の体操で、ほぼ完全に回復することが可能であるとある番組で見ました。一縷の希望です。

 今後の見通しを立てて備えることが必要です

 認知症の経過は個人差が大きく、進行が遅い人や進行が止まってしまう人もいます。進行すると、身体機能の低下が起こり、数年から十数年の経過で歩行ができなくなり寝たきりになります。最終的には食べ物を飲み込むことができなくなり、肺炎を繰り返すようになります。
 したがって、軽症のうちから専門家との信頼関係を築くことが必要になります。
 終末医療や介護の方針については、家族や後見人などに任せなければなりません。認知症が進行したのちの見通しを立て、自分の意思にかなった生活を送るためには、日頃から周囲の人に自分の生き方、考え方を理解してもらうよう心がけることが重要です。

 認知症の予防についての考えかた

 認知症の予防とは?認知症発症のリスクを少なくすることです。
 
 脳血管性認知症の予防は、高血圧症、高脂血症、肥満などの対策が有効です。
 アルツハイマ一病の予防は、運動・食事をはじめとする生活習慣病対策には、発症を遅らせる効果が認められています。
 老化による脳の病気の加速因子を防ぐには、脳や身体を使わないこと「廃用」は認知症の発症や進行を加速させます。廃用の背景には、うつ病やアルツハイマー病初期にみられるうつ状態が、しばしば隠れています。

 大事なことは「脳の活性化を図る」ことです。
 脳の活性化にはいろいろな方法がありますが、何をするにしても大切なのは、① ~④ を心がけ、楽しく行うことです。ただし、本人が嫌がるのに無理強いするのは、ストレスや自信喪失につながり逆効果になります。

① 快い刺激で笑顔に~心地よい刺激や、笑うことにより、意欲をもたらす脳内物質(ドーパミン)がたくさん放出されます。

② コミュ二ケーションで安心~社会との接触が失われると、認知機能の低下を促進させます。友人や家族などと楽しく過ごすことが大切です。

③ 役割・日課を持つ~人の役に立つことを日課に取り入れることが、生活を充実させ、認知機能を高めます。

④ ほめる、ほめられる~ほめても、ほめられでもドーパミンがたくさん放出されます。脳を活性化させる学習や活動をするときは、ほめて、やる気が起きるようにすることです。

 認知症の予防のために「何をしたらよいか」ではなく、どう刺激ある日常を送るかが重要です。

※ MCI (軽度認知障害)とは?

  日常生活に支障をきたす程度には至らないため認知症とは診断されないが、記憶障害と軽度の認知障害が認められ、正常とも言い切れない中間的な段階をMCI (軽度認知障害)と呼びます。
 MCIには各種認知症疾患の前駆状態が含まれています。MCIと診断された人の半数以上に、その後アルツハイマー病等への進行がみられるとのデータがあります。一方、この状態に長期間とどまったり、正常に戻る人もいます。
 この段階で脳の活性化を図ることや、運動習慣は認知症の予防に非常に重要です。

 MCIですか。ふむふむ。この段階に私はすでにいるのかもしれません。あるいは、限りなく近づいているかもしれません。昨日も、斜め向かいのうちの名字が思い出せなくて、連れ合いにも恐ろしくて聞けなくて、こそっと、町内会の名簿を見てしまいました。少し行ってるかもしれません。 実は、あなたも。
 ひひ、じゃんじゃん。