新型コロナウイルスはこうして広がっている、遺伝子技術で判明2020年04月17日 10:20

 やっと、人の命とお金のどっちが大切かという判断がつきました。
 人を救わないで、次の未来があるかという論争はもともと答えがわかっていたものでしょう。
 自民党安倍内閣は組織(会社)を守ることと人の命を天秤にかけました。経済対策という名のバラマキは、ほとんどが経営者の懐に消えるものです。
 人を救わずに未来は見出せません。

 さて。

 無償で公開されているオープンソースプロジェクト「ネクストストレイン」(Nextstrain.org)は、アウトブレイク(集団感染)を起こした病原体の博物館のようなものだ。世界各地の研究機関が、患者から採取したウイルスの遺伝子配列データをここに投稿する。ネクストストレインはそのデータを使って、感染の広がり方を示した世界地図や、ウイルスの系統樹を描き出している。

 ネクストストレインが取りこんだ新型コロナウイルスのゲノムは、3月末の時点で2000を超えた。データからは、感染の拡大とともにウイルスが平均15日ごとに変異していることが明らかになっている。

 「変異」などと聞くと恐ろしげな想像をしてしまうかもしれないが、ウイルスの有害さが増しているという意味ではない。単に変化しているというだけで、むしろ、ウイルスがどこから来たのかを迅速に知れるうえ、起源に関する妄言も否定できる。

 「これらの変異は完全に無害で、ウイルスの拡散の仕方を解明するパズルのピースとして役に立ちます」。ネクストストレインの共同設立者で、米ワシントン州シアトルにあるフレッド・ハッチンソンがん研究センターの計算生物学者トレバー・ベッドフォード氏はそう話す。

 新型コロナウイルスを追跡するこの手法は、深刻なパンデミック(世界的流行)の報道があふれる中で、ひときわ明るく輝いている。同様の手法は、過去にジカ熱やエボラ熱などの感染症が流行した際にも、重要な役割を担っていた。

 しかも、遺伝子解析のコストの低下とスピードや効率の向上により、世界各地の研究者がほんの少人数で、新型コロナウイルスの感染経路をこれまで以上に速やかに解明できるようになった。その結果は、特に検査が追いつかない場所で、感染を封じ込める戦略から感染ペースを緩和する戦略に移行するべきか否かを判断するのに役立つはずだ。

「5年前にエボラ熱が流行したときには、サンプルを採取してから、ゲノムの塩基配列を決定しデータを公開するまでに1年かかりました」とベッドフォード氏は言う。「今では2日から1週間でできるようになりました。これらの技術をリアルタイムに利用してアウトブレイク対策に生かせるようになったのは、今回が初めてです」

「知らないうちに広めうる」ことを証明

最新の#COVID19 #SARSCoV2 #HCoV19 状況レポートが日本語で利用可能になりました。 今週は、地域ごとにデータを分類しました。 翻訳してくれTakeshiSato、@tommy_nezy、@fengjun_zhang に感謝します。https://t.co/E0gXp9vVrO

The latest situation report is now available in Japanese. pic.twitter.com/fWppSk4PE9
— Nextstrain (@nextstrain) March 29, 2020

 ベッドフォード氏の研究室が新型コロナウイルスを追跡し始めたのは、2月から3月にかけてワシントン州で感染者が増えだした頃だった。公衆衛生当局は当時、患者の旅行歴を追跡し、接触した疑いのある人を突き止めることに注力していた。

 一方、ベッドフォード氏らは、20人以上の患者の鼻から採取したサンプルを分析し、遺伝子の解読を始めた。新型コロナウイルスがどこで、どのように変化したかを追跡していくと、驚くべき事実が明らかになった。シアトルで最初に感染者が見つかった1月21日以降、何週間もの間、シアトルの人々の間でウイルスがいわばひっそりと培養され続けていたのだ。最初の患者は、中国の武漢を訪れた35歳の人物だった。

 別の言い方をすると、軽症で病院にかからなかった人や、検査を受けていなかった人々が、知らないうちに新型コロナウイルスを広めうることが科学的に証明された。この発見から、感染スピードを遅らせる都市封鎖、学校・職場・店舗などの閉鎖、他人と一定の「社会的距離」を保つなどの対策が、世界中で次々と打ち出されることになった。

「ゲノムデータは、ウイルス感染がどのように拡大するかについて、より多くのことを教えてくれます」とベッドフォード氏は話す。

 ネクストストレインの可視化ツールは、新型コロナウイルスについて知りたいという市民の欲求も満たしている。そう評価するのは、米カリフォルニア州にあるスクリプス研究所の計算生物学者で、西ナイルウイルスやジカウイルスなど1000種類以上のゲノムデータをネクストストレインに投稿しているクリスチャン・アンダーセン氏だ。

 「これまでウイルスの遺伝子系統樹なんて眺めているのは私のようなオタクだけだったのに、今ではツイッター上にあふれかえっています。私がネクストストレインのようなツールを気に入っているのは、こういうところです」と氏は話す。

 このサイトのオープンな姿勢も、ゲノムデータをぜひ共有したいと世界中の研究者に思わせる理由の1つになっている。アンダーセン氏の研究室にウイルスのサンプルを送りたいと言ってくる研究者や、解析の方法について助言を求めてくる研究者もいる。「画面に表示されるデータを見て、『うちにも患者がいるから遺伝子解析したい』と言うのです」

 データを可視化した図や系統樹は、パンデミックの広がりの全体像を見るには便利だ。だがアンダーセン氏は、たまたまこれらを目にした人々が、背景にある広範なデータを検討せずに何らかの結論に飛びつこうとすることに警鐘を鳴らしている。

 実際、ベッドフォード氏もその1人だった。イタリアで確認されたドイツ人感染者のサンプルと、その1カ月前に感染したミュンヘンの患者のサンプルで遺伝子配列データがよく似ていることから、ヨーロッパでのアウトブレイクはドイツから始まったことが示唆される、とする内容をツイッターに投稿したものの、氏はのちに撤回した。

 「系統樹はつながりを示唆するものではありますが、欠けているピースが非常に多く、何が起きたのかを説明する方法は複数ありえます」とアンダーセン氏は警告する。

 ベッドフォード氏は、検査や症例の監視が十分に行われていない場所では、社会的距離を保持する戦略が有効に機能しているかどうかを検証するうえで、今後も遺伝子データが手がかりになると指摘する。

「感染がどのくらい減少するかがわかり、『規制を緩めてもよいか?』という問いへの答えが得られます」と氏は言う。

2019年11月頃に動物からヒトへ飛び移った

 ウイルスの進化史を明らかにする能力はまた、「新型コロナウイルスは生物兵器として実験室で秘密裏に製造されたものである」などという陰謀論を即座に打ち砕いた。

 3月17日付けで学術誌「ネイチャー・メディシン」に発表されたアンダーセン氏らの論文は、新型コロナウイルスのゲノムの特徴を、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)を含むコロナウイルスや、コウモリやセンザンコウなどの動物から単離されたコロナウイルス株などのゲノムの特徴と比較して、陰謀論を否定した。

 そもそも、新型コロナウイルスの基本的な構造は、これまでに研究されてきたどのコロナウイルスとも異なっている。また、その遺伝子には、実験室で培養されたのではく、生きた免疫系と戦ってきたことを示唆する特徴がある。

 それだけではない。生物兵器の設計者は、最大の効果を得るために、既存のウイルスをヒントにして完璧なウイルスを作り出そうとするだろう。ところが新型コロナウイルスには、自然選択によるものと思われる小さな欠陥がいくつかある。

 例えば、細胞への感染の仕方だ。コロナウイルスが動物細胞に感染するときには、ブロッコリーの頭の部分のような形の「スパイク」と呼ばれるタンパク質を使って細胞の「出入口」にあたる受容体に結合し、細胞内に侵入する。新型コロナウイルスは、ヒト細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体に強く結合するが、この相互作用が最適なものではないことが実験によって示されている。

「人為的に完璧なウイルスを作ろうとするなら、このようにはしないでしょう」とアンダーセン氏は言う。氏らの分析結果は、新型コロナウイルスが2019年11月頃に動物からヒトへ飛び移ったことを示唆している。

 将来的には、新しいウイルスが出現した際に、感染が発生した場所や地域を拡散前に特定する上で、遺伝子解析技術がさらに重要な役割を果たすようになるだろう。

「例えば、アフリカのとあるコミュニティーで新しいウイルスが出現したとしても、今ならそのサンプルを実験室に運んで、ショットガン法という遺伝子解析を行えます」とフィル・フェッボ氏は話す。この方法は、ランダムな短い断片の塩基配列を読み取ってゲノム全体を決定できるため、当局は、感染拡大を阻止する戦略を迅速に定められる。なお氏は内科医であり、米カリフォルニア州サンディエゴに拠点を置く遺伝子解析機器の世界最大手イルミナ社の最高医療責任者(CMO)でもある。

 迅速に対応できるウイルス監視網を世界中に張り巡らせるためには、まだたくさんの仕事をしなければならない。各国政府を巻き込み、実験室を設置し、解析装置を操作して結果を解釈できるスタッフを募集し、訓練する必要がある。

「問題は、技術的制約ではありません。国際コミュニティーの覚悟なのです」とフェッボ氏は言う。

 じゃんじゃん。

過労死 防止学会設立記念大会2015年06月24日 14:41

 5月23日、明治大学駿河台キャンパスのリバティタワーの12階1123教室で、「過労死 防止学会設立記念大会」が盛大に開かれました。

 これは、昨年の過労死等防止対策推進法(過労死防止法)の成立・施行を受け、過労死の実態と防止対策についての調査研究をメインに行う民間団体として、過労死遺族や研究者、弁護士、労働安全衛生の活動家、ジャーナリストなど幅広い人々によって結成されたものです。
 総会では、代表幹事に森岡孝二さん(関西大学名誉教授)、事務局長に櫻井純理さん(立命館大学産業社会学部教授)が就任されました。

 設立記念シンポジウムは、川人博弁護士(過労死弁護団全国連絡会議幹事長)と笠木映里さん(九州大学法学部準教授)の司会で始められました。
 最初に「来賓?」として、厚労省の過労死防止対策室長?が挨拶し、「まもなく過労死防止対策推進大綱ができあがる(5月25日にできました)が、国として過労死に関する調査研究の蓄積がないため、まず労災事例で医学的分析を始めようと考えている」という、いささか頼りないものでした。

 次に、報告者は、①寺西笑子さん(全国過労死家族の会代表)「過労死のない社会の実現をめざす遺族の願いと防止法の課題」、②熊沢 誠さん(甲南大学名誉教授)「過労死・過労自殺の要因とこれからの課題」、③加藤 敏さん(自治医科大学精神医学教室教授)「ここ最近の日本における企業情勢と職場のメンタルヘルス」の3人でした。

 寺西さんは、夫を過労自殺で亡くしたご自身の体験をもとに、夫の真相解明に10年9か月かかったことや、1991年に結成された「過労死を考える家族の会」での活動から、「被災者は中高年から若年層へ過労死が拡大。大黒柱の人生が奪われ、罪もないその子供が二次被害にあっている現実を変えなければならない」と力説されました。
 熊沢先生は、聞いてて非常に難解でしたが、過労死・過労自死の重層的な要因や、欧米と異なる日本の特徴としてふつうのノンエリート労働者の働きすぎがあること。特に非正規労働者は生計のため長時間労働になりやすく、非正規の比率が上がることは、正規労働者へのムチ(イヤなら辞めろ=非正規化)に使われていること。過労死・過労自殺の根因は労働者の「自発的な主体意識」でないのは当然ではあれ、死に歪るまでの働かせすぎを受容してきた労働観を顧みる必要性はあると。
 加藤先生は「職場結合性の精神疾患にはうつ病と双極性(Ⅱ型)がある。どちらも自殺企図が高い。アルコール依存も増えている。職場結合性のうつ病は抑制型(定型)よりもパニック発作から不安・焦燥型が多く見られる。東北震災の影響によるものも見られるようになった。うつ・軽躁ともに長時間労働が背景にあることは確か」と。

 次に、
①ノース・スコットさん(大阪大学人間科学研究科教授)
②岸 玲子さん(北海道大学環境健康科学研究教育センター特任教授)
③西谷 敏さん(大阪市立大学名誉教授)
④東海林 智さん(毎日新聞記者)
が、各10分程度のコメント。
 スコット先生は「ホワイトカラーイグゼンプション(WCE)は、グループ労働の多い日本では悪用されかねない。」
 岸先生は「日本学術会議の“労働雇用環境と働く人の生活・健康・安全委員会提言”」を紹介された。http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t119-2.pdf#page=1
 西谷先生は「推進法の文中には労働時間、36条協定、労働組合の文字が全くない。WCEや裁量労働制の見直しは長時間労働を是認するもので、推進法と矛盾する。まるで“働かせ続けてドクターストップ!”みたいなもの。8時間労働制の原点に返って、36条協定の上限規制を実現すべき」と、これも力説されました。
 東海林記者は「ブラック企業の公表は就業機会の選択資料であり、社会的な監視にもつながる。WCEは20代中頃から適用される可能性があり、裁量労働の拡大とともに、労働時間の把握が困難となる」と。

 いずれも今の労働時間規制緩和には反対の意見を述べられました。

 会場からは「過労死とはなにかを法的、医学的に定義し、現行の労災認定基準でよいのかを検討することも課題だ」との指摘もありました。

 過労死防止学会HP http://www.jskr.net/

 過労死等の防止のための対策に関する大綱のポイントは以下の通り

・過労死ゼロを目指すため
(1)2020年までに労働時間週60時間以上の労働者の割合を5%以下に。
(2)20年までに有給休暇取得率を70%以上に。
(3)17年までにメンタルヘルス対策に取り組む事業所を80%以上−−にする
・過労死の実態解明のため調査研究を実施
・全都道府県で過労死シンポの開催と相談体制の整備 

 過労死防止は、まさに喫緊の課題です。長時間労働を放置するのは、明らかに管理監督マネジメント能力がないという証であり、したがって、過労死・過労自死、過重労働疾病は過失が問われます。「死ぬまでやれと入っていない」という逃げ口上は通用しません。
 36協定を青天井で結ぶような労働組合も、同罪と言われるでしょう。ましてや、サービス残業など断じて許されません。
 じゃんじゃん。

産業衛生学会の報告 その32015年06月23日 10:48

 さて、産業衛生学会の続きです。

 シンポジウム12「職場のがん対策とガン罹患就労者への支援ー産業保健の役割を考えるー」に参加しました。

 開始にあたり、座長は、「がんは退職後に発病することも多いが、早期発見が治療し治癒するためには重要であり、潜伏期間が長いので就労期間からがん検診をしなければ早期発見はおぼつかない。しかし、がん検診は定期健診の項目に含まれず、現状では保健サービスである。したがって受診率は50%くらいしかない。一方、就労中にがんを発症する場合や、治癒率の向上から罹患後に就労することも増えていることから、がん患者の就労支援は産業保健の重要課題である」との趣旨説明がありました。

 全くその通りで、今回(5月19日)の全道セイフティネットワーク集会のテーマにしたのもこの観点からで、ベテランが職場を離れるダメージがそれぞれの職場でじわじわと出ているだろうからです。

 次に登場したのは、厚労省の健康増進課です。
 がんと職場の現状について、がん罹患者のうち32万人が就労しているが、一方で罹患者全体の34%が退職している。また患者からの相談で一番多いのは、経済的なことで、次が仕事との両立であると。
 政府の政策としては、H18年にがん対策基本法ができ、基本計画は5年ごとの見直しで、H24年に第2期計画が立てられ、
<小児がん> 5年以内に、小児がん拠点病院を整備し、小児がんの中核的な機関の整備を開始する。
<がんの教育・普及啓発> 子どもに対するがん教育のあり方を検討し、健康教育の中でがん教育を推進する。
<がん患者の就労を含めた社会的な問題> 就労に関するニーズや課題を明らかにした上で、職場における理解の促進、相談支援体制の充実を通じて、がんになっても安心して働き暮らせる社会の構築を目指す。

の3点が新しく盛り込まれたこと。

 H25年から「就労継続事例集」や「両立支援モデル」などによる啓発や、ハローワークに専門相談員の配置と就労支援事業(トライアルなど)に取り組んでいるが、日常の相談からは、

① 病状を伝えにくい→「今の自分にできること」として伝える。
② 就労継続できると考えていない→両立できる。土日診療の普及も必要。
③ 私傷病である→就労と関わるのであれば、産業保健スタッフと主治医の連携も必要→就業上の配慮を求める。
 などの対策がなされているものの、相談先を知らない例が多くあり、周知活動も重要であると。

 次に大阪大学の祖父江先生が、「職域のがん検診は組織化されておらず、したがって40代・50代の受診率も不明である。がん対策基本計画の目標は「75才未満のがん死亡率20%ダウン」となっているが、そのためには、4~50才の年齢幅のがん検診受診が重要となる。市町村国保のがん検診と、職場がん検診を連携させていくべきだ。1982年から92年までは国ががん対策を行っていたが、それ以降は市町村に振り分けられた。H28年から全国のがん登録が始まるが、これに期待される。」

 また、パナソニック産業医の西田先生は、「がん検診は、対策型(住民検診)と任意型(職場などの人間ドック)があるが、今のところこの連携がなく、したがって、精度管理もできにくい現状にある。今後、職場の安定や医療費抑制を考えるのであれば、対策型検診を中心に据え、精度管理とマクロの統計は必須と考えられる。実際、企業内でがん検診をしてみても、その得られたデータがどれだけ重要であるかとか、精度に問題がないかなど判断基準がないので困っている。」

 最後に産業医大の立石先生は、「がんは「ある日突然」やってくるが、その治療は急速に進歩しており、QOLについても重視されるようになってきた。必然的に生活や就労に制限の少ない患者が増えているが、社会的なサポート体制は法的整備を含め弱い。がん検診は確かにコストが企業側にかかるが、企業としては、人材の確保や信頼の醸成という利益があるし、患者本人にとっても、パフォーマンスの低下による自分の心理的な低下をある程度軽減する効果は期待できるだろう。産業保健としては、就業上の配慮の面で、賃金の減少や休みがちになる事への周囲の目などを按配しながら、合理的配慮を進めていくことになるだろう。そのための管理者の理解や柔軟な就労を是認するルールを作る必要がある。」

 ということでした。

 このあと会場のやり取りがあったはずですが、ちょうど労働科学研究所のY先生と連絡が取れて会場近くでお会いすることになってしまい、残念ながら聞きそびれました。

 このシンポで学んだことは、当センターの「第20回全道セイフティネットワーク集会」に直接の反映はできませんでしたが、取り組み方向を確認することはできました。

 めでたし。じゃんじゃん。

産業衛生学会の報告 その22015年06月12日 10:31

 さて、日本産業衛生学会の報告です。

 次に参加したのは、シンポ10「夜勤交替勤務の新しい課題」でした。

 産業医大の推計によると、「労働者健康調査」などから、H24年度の雇用労働者の21.8%、1,200万人が深夜業に従事しており、11.6%が何らかのシフト労働に従事しているとされています。
 これから分かるのは、シフト労働でない10%も深夜労働していると言うことです。550万人になります。

 それで、このシンポは、
①労働者の高齢化に対応した夜勤交替勤務による健康障害の予防
②若年者の交替勤務への就業初期での健康影響について
③勤務形態と口腔保健状況の関連性
④夜勤交代制勤務者の健康づくり活動~現状と課題
の四つの柱でした。口腔保健がちょっと変わった柱ですね。

①労働者の高齢化に対応した夜勤交替勤務による健康障害の予防では、まず、高齢化とはということで、55才以上の労働者を産業人口の高齢と考えることにしましたが、60歳以上の高齢者の労働力人口は、平成12年は約919万人でしたが、平成25年には1,250万人に増加しており、今後とも徐々に増加すると予想されています。
 平成25年の60~64歳の労働力率(年齢階級別の人口に占める労働力人口の割合)をみると男76.0%、女47.4%となっています。65才を過ぎるとさすがに男性でも30%以下になりますが。
 この高齢労働者のうち、深夜業に関わっているのは男性20%、女性30%といってました。
 また、これに関わって、ILO178号勧告(夜業)についても触れていました。詳しくは触れませんが、昼間の労働者と同じ労働であれば夜業では短縮するべきだとか、時間外労働はさせるべきでない、休息・食事時間を確保する、交替勤務では高齢者に特別な考慮、ベテラン労働者は昼間に移すべきなどなどです。

 高齢労働者と交替勤務を考えるときには、イ)不適応、ロ)疾病の重症化の二つの視点で考えることが必要で、年代では、若年者は朝が苦手で、夜勤でも眠気が多いという特徴があり、一方高齢者は、夜が苦手で、眠気を感じなくてもミスが多くなることが、作業能力を測定するPVTという検査法で分かっているそうです。
 ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)によると、日勤から夜勤に変わるときが一番睡眠不足になり、男性で40代、女性は30~40代で睡眠不足を感じています。
 これらの結果、寝酒をするのは3交代制呪う同社が一番多く、量も多くなってくる傾向にあります。
 今後の労働社会を考えると、「ルーティンフランツの9原則(次の勤務まで10時間以上あけるなど)」を意識する必要があると言うことでした。

②若年者の交替勤務への就業初期での健康影響について、では、3年以内の就業初期において、まず睡眠と生活リズムに変調があり、次に友人や家族関係が変化する。さらに生活習慣などの疾患が増大すると言うことが分かってきているようです。
 それは、運動する機会が少なくなる、飲酒量が多くなることが原因で、体重も5%以上増加するようです。食事がコンビニ食が多くなったり、野菜不足や高カロリーになるためです。
 これらは、ストレス状態にも影響し、交代制への不適応より、職場不適応が前面に出てくるという調査結果でした。
 ただ、男女でけっこう違いが出て、男性の9%が朝方なのに、女性では33%が朝方と言うことで、交替勤務で影響を受けやすいのは、男性若年労働者と言うことでした。

③勤務形態と口腔保健状況の関連性では、歯科健診の実施率が、20%以下で、歯科の問題は個人の問題と取られがちなのが一番問題とまず指摘しました。
 40代以降は特に歯周病や歯の喪失が多くなりますが、これは、環境因子が大きく影響しており、不規則な生活やストレスという意味で、勤務形態と関連するということでした。

 特徴的には外勤者に口内炎が多く、時間外が多くなると口渇がおきるため、口腔内の清潔が保たれない。特に50代以上は、プラークがたまっており、自浄作用も弱くなるため、歯周病になりやすく、歯周病菌は全身疾患やメタボに影響するのだから歯の健診も広げるべきだというのが趣旨でした。

④夜勤交代制勤務者の健康づくり活動~現状と課題は、東芝四日市工場の保健師の話で、活動量計で、睡眠もはかれるので、活用すべきだというような、一種の宣伝でしたが、女性の交替勤務者も増えているようで、交替勤務が当たり前の環境に産業保健がどうか変わるかでは、初期教育が重要とされました。
 また、交代制を労働者が除く要因には、金銭的なものもあるようで、その兼ね合いも視点としてみなければならないといってました。

 全体として、社会の24時間化に産業保健がどうか変わるかということだけで、24時間化はしかたのないことだと言うことには、一概に賛成できません。

 どうも、その1につづいて、産業衛生学会、とるにたらんか?という気持ちになってきました。
 じゃんじゃん。

産業衛生学会の報告 その12015年06月09日 15:12

 5月に大阪で開催された標記学会に参加しました。今回から何回かにわたって報告します。

 まず、「シンポ 新しい労働時間規制と疲労対策 勤務間インターバル制度に関連して」という長い名前です。
 今回のこの学会のテーマは、「過労死」と言うことです。どこにもそのようには書いていませんでしたが、メニューを見れば明白です。

 それで、このシンポは、以下の4つが問題提起でした。
① EUの労働時間指令における勤務間インターバル
② 我が国の勤務間インターバル制の実態と課題
③ 過重労働対策の現状と課題
④ 労働者の疲労回復と勤務間インターバル

 詳しく報告したいのですが、なぜか会場内の写真撮影が禁止されていましたので、パワポを撮影記録できませんでした。ので、私のメモが頼りです。あしからず。

① EUの労働時間指令における勤務間インターバルでは、JILPTのH氏がEU労働指令について、6条は時間外を含む週の労働時間が48hまでであり、変形労働時間制でも当該期間の週×48hであること。
 5条は休日労働の禁止(7日ごとに24時間の休息)、3条は、24時間の期間ごとに継続11時間の休息(レスト・ピリオド)を例外規定無しにと言うことになっていますが、この例外規定無しはイギリスが無視しています。
 3条が実現すると、1日24hから11hのインターバルを引き、残りの13hに5条の週労働日は6日を掛けて、週の労働は78hが絶対上限となりますが、さらに6条がありますから、今のところとにかくインターバルは11hをどう実現するかと言うことになります。
 これには適用除外の業種もありますけど、EU裁判所により「同等の代償休憩時間(イエーガー判決)」が求められます。

② 我が国の勤務間インターバル制の実態と課題では、企業名はなかったのですが、いろいろな企業で、インターバル規制がすでにあることが報告されました。
(製造業・電機)メンタル休業による肩代わり長時間労働に対処するため?、インターバル7h。
(運輸業・私鉄)インターバル9hは「運転者の拘束時間規制15hまで」の裏返しとして。
(製造業・IT系)フレックス制のインターバル8hから10hにしたが、7千人のうち10人程度が該当した。そのほか、22:00以降の時間外禁止制度あり。
(ファストフード)インターバルは12h。休日も含むときは32h。アルバイトも含む。
(病院)インターバル20h。夜勤負担を軽減するため。しかしシフトをつくる中間管理職にしわ寄せある。
(建設・情報系)インターバル8~10hは作業者のみ。しかし、定時出勤時間過ぎても気軽にでられることはメリット。
 まとめとして、長時間・時間外・深夜などの労働が動機となっている。が、科学的な裏付けが少ない。一律に法的規制は不可能かとも思う。

③ 過重労働対策の現状と課題では、長時間労働と心臓冠動脈疾患の関係は明確であり、うつ病も時間外が月60h超えると2倍以上になる。労災の認定も時間外の時間に比例している。しかし、多くは心身ともに問題なく働いている。さすがに月100hを超えるとほぼ全てがコントロール悪化となるが、悪化させる要因としては、休みが取りにくいとか、抑うつ傾向が強いなどであり、仕事に意義を感じてコントロールできていれば、100以下だとそんなに問題ない。
 多くの疲労は睡眠悪化が原因となり、慢性化は仕事のパフォーマンス悪化のスパイラルとなる。

④ 労働者の疲労回復と勤務間インターバルでは、「お疲れ様」の挨拶が日常的になっていることからも、疲労が社会にたまっていることは明らかだが、その原因は様々であり、嫌な仕事だとか面白くないという心理的な側面も大きいのではないか。従来の労働時間規制はまさに規制であるが、インターバル規制は睡眠時間の確保が目的である。しかしEUの11hでは、過労死ラインに届くような規制でしかない。
 インターバルの中身も重要であり、例えば、休息中に上司がメールをよこせば、実質的な休息とはならないだろう。事実上の拘束時間だ。ドイツでは「反ストレス法」でこれらを規制している。

 会場から、イ)EU司令の評価は、ロ)疲労からの回復は重要ではないか、ハ)産業保健スタッフの介入は可能か、などの質問があり、それぞれ、
イ)緩和より規制強化の面が大きくある。ただし、救急現場の問題とか、待機時間の算定など課題は残っている。国別でも、イギリスは半数が時間規制がない状態。退勤時間の規制という方向にあるかもしれない。
ロ)疲労が労働条件として認識されてきたが、科学的解明が遅れている。ホリックを規制することには有効であるが、労働条件よりも、安全衛生面の視点が必要だろう。
ハ)ラインの不安定化や人員不足の常態化などで手をこまねいている面はある。
 などと返事がありました。

 相対的に、「こいつら何を言っているのか?」という感想ですが、産業衛生の分野から見ると、過重労働とか過労死とかは、制度よりも、心理的側面が大きいととらえているようです。
 とにかく驚いたのは、時間外が60h~80hくらいが一番働いている人たちと、産業医がしゃあしゃあと言うところは、あきれてしまいました。

 ここで再確認しておきますが、「疲労」とは本人に自覚があり、休息によって回復可能な状態であり、「過労」とは、疲労の域を超えて、本人の自覚もなく、長期の休業以外に回復しない、下手をすると命を奪うことだと言うこと。
 実は産業医や産業スタッフはあまりその辺を意識していないということがよく分かったシンポでした。
 じゃんじゃん。