第3回 アスベストPT 苫小牧の教員 中皮腫が公災認定2014年08月04日 14:31

 苫小牧市立の元小学校教諭が、2005年に「中皮腫」で死亡したのは、勤務先の小学校で増改築が繰り返され、その際に校舎に使われていたアスベスト(石綿)を吸引したのが原因であると、地方公務員災害補償基金北海道支部の審査会(不服審査)で認定されました。
 増改築の工事現場は普段いた教室から少し離れていましたが、この元教員が無類の「きれい好き」で、校内に飛散した「工事のほこり」を清掃した際に、ほこりに含有していたアスベストを吸い込んだものと見られています。
 第3回アスベストPTでは、この事件の経過と要点を確認し、今後の取り組み方向についてさらに議論を重ねることとなりました。(ちょっと歯切れが悪いのは、いろいろあるからです)

 H元教諭は、2005年に「悪性胸膜中皮腫」により68才で亡くなられました。職歴は、1997年(平9年)に退職するまでの40年間、苫小牧市内の6カ所の小学校で勤務していました。退職後5年たった2002年10月に咳や胸痛、発熱が突然でたため受診したところ、右胸水が見られ、精密検査により、「悪性胸膜中皮腫」と診断されました。その後、右肺摘出や放射線治療、抗がん剤治療を受けましたが、3年後の2005年8月に死亡されました。

 この事件の特殊性は、職歴にも生活環境にも、特別にアスベストが高濃度にあったことはないことにあります。低被ばくによる中皮腫です。

 残されたご遺族は「原因を知りたい」と、5年間にわたって校舎改築の経緯などを詳しく調べ、2010年苫小牧市教育委員会に公務災害認定を求めましたが、2013年10月に「公務外」と判定されました。
 そこで今回、不服審査制度により北海道支部審査会に審査を求めたところ、今回は決定がくつがえって「公務上災害」と認定されました。

 国際的基準(ヘルシンキ・クライテリア)によると、「悪性中皮腫」の8割はアスベスト(石綿)の吸引が原因といわれていますが、アスベスト疾病に関する「業務起因性」の判断は、まず、石綿との関連が明らかな疾病であるかどうかによります。
 その「明らかな疾病」とは①石綿肺、②中皮腫、③肺がん、④良性石綿胸水、⑤びまん性胸膜肥厚の5疾患とされており、次に「石綿ばく露作業」の職歴が調査されます。
 ここでいう「石綿ばく露作業」とは、直接石綿を加工する作業や、吹き付け、保温用石綿の補修、石綿使用建築物の修理・解体、船舶や車両の製造・補修・解体など、9作業を中心に「これらの他、同程度以上に石綿粉じんのばく露を受ける作業」として、34の作業が例示されており、その中の「吹き付け石綿のある部屋・建物・倉庫等の作業」には(教員・その他)とかっこ書きで表記されています。
 厚生労働省の「アスベストによる労災認定」によると、認定の基準には、先の5疾病に関して、細く規定されています。詳しくは、以下の方法でご覧ください。

 厚生労働省>分野別の政策 雇用・労働>労働基準>重要なお知らせ「アスベスト対策」>「石綿にさらされる作業に従事していたのでは?」と心配されている方へ(関連作業)か、アスベスト情報>その他の資料>パンフレット等>石綿による疾病の認定基準

 学校教員に関するアスベスト被害では、2010年に滋賀県で小学校教諭が体育館のアスベストによる中皮腫で公災認定されたのをはじめ、今年1月には大阪府で高校の化学教諭が各種実験の石綿金網から飛ばくした中皮腫での公災認定に続き、苫小牧の小学校教諭が、いずれも公務外認定を審査会が取り消すこととなりました。これは最初の基金の認定作業が、以下にずさんであったかを物語ります。

 2005年に大きく社会問題となった「クボタショック」を契機に、道内でも学校や公民館など公共施設のアスベストの点検が行われ、除去や防曝措置が取られましたが、新聞記事で追ってみると、いまだに新たにアスベストが発見されています。また、除去や防曝処理がされているところでも、被害調査はほとんど行われていません。

 北海道におけるアスベスト被害は、新聞報道されたホテル営繕係の中皮腫や苫小牧の電気通信保線の中皮腫などがあります。
 厚生労働省が毎年公表している労災と対策法救済一覧でも、237事業所、292名が罹患し、うち76名が死亡しています。しかしこれは労災などの認定を受けた数字で、苫小牧の教員の例のように、職歴にアスベストの関連が「ない」とされたため、業務外(公務外)認定となったものの数字は把握できません。
 アスベストPTでは、これらの埋もれたアスベスト患者を発掘し、治療や補償へとつなげる方策を模索しています。特に、人口比で考えると渡島・胆振の中皮腫が多く、関係労働組合や地協と連携して取り組みを進め対と考えていますが、なにせ地元がびびってしまって、困ったものです。

 ところで、このようなアスベストばく露環境で勉強していた子どもたちはどうなったのでしょうか。
 例えば、苫小牧の元教諭がアスベスト曝露した年を昭和40年(1965年)とし、それから40年経った2005年に亡くなったと想定して、当時小学校4~5年生で10才くらいの子どもたちは、それから潜伏期の30~40年経つとして考えてみると、すでに発症して亡くなっているか、幸いにも発症せずにいま60才くらいでないかと思いますが、肺がんとなって苦しんでいるかもしれません。しかし、職歴にアスベスト関連が全く認められないとすれば、まさか学校で被ばくしたとも考えなく、喫煙が原因とされているかもしれません。
 これは、現在62才の私としても人ごとではないわけでして、考えただけで肺が痛くなってきそうです。
 まあ、その前に喫煙をやめなけりゃあなりませんけど。へへ。
 じゃんじゃん。

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