シリーズ 労働安全衛生とは その2 ヒューマンエラー2015年07月21日 09:21

 さて、その2は「ヒューマンエラー」です。

○ 人は絶対にミスをする
○ 人間の認知システムはあいまい
○ うっかりミス、行為のスリップ、失念
 
 人間の認知システムがコンピューターと違って、文脈を読むことができるのですが、これは「思い込み」につながります。
 行為のスリップは、熟練にともなう副作用のことで、意図は正しいのに行為が違っている(手順が変わったことに従わない)こと。
 失念は、覚えた情報を適切なときに思い出せない=連絡の漏れや手順のやり忘れ。
 「集中せよ。さすれば何事も成し遂げられる」は、ぼやっとしている人には有効ですが、すでにめいっぱい集中(本人なりに)している人には返って能率を下げることにもなります。7:3の法則というのがあって、7は仕事に意識を向け、3は集中力や身体の管理に向けるのが正しいのです。


 例えば、上の図は、ちゃんと読めてしまいますね。意味も分かります。不思議ではありませんか?

 一方、「人間は忘れる」と言うことも忘れないでください。
 「エビングハウスの忘却曲線」というのがあって、20分後には42%忘れる、1時間後には56%忘れる、1日後には74%忘れる、となっています。だから「1度言ったことは忘れるな!」は通用しないのです。安全教育も「前に受けた・・・」ではだめです。繰り返し受けることが必要になります。

● 安全の大前提とHEの4原因
 これを整理すると、
○ 人間はミス・間違いを犯す
○ 機械・設備は故障する
○ 絶対安全は存在しない~原発事故
○ 意識の低下、意識の中断、意識の迂回、意識の混乱

 意識の低下は、温湿度、照明、騒音、粉じんなどの不快環境や、長時間労働・年齢などによる身体機能の低下でおきます。
 意識の中断は、持病や脳出血、SAS等で意識を失うことです。
 意識の迂回は、心配事・悩み・不安・不満などがあると、意識が回り道をして、見落としや聞き落としがおきやすくなることで、運転中の携帯電話などが代表的です。
 意識の混乱とは、作業の手順が通常と違う、自然の流れと異なるときに起こりやすくなります。例えば、扇風機の羽根羽根をとめるねじなど。

 「安全のABCだけでは防止できない」と言うことになります。安全のABCは「あたりまえのことを」「ぼんやりしないで」「ちゃんとやれ」ということらしいのですが、安全衛生ではこういう略語が多く、時々イラッとします。

 HE(ヒューマンエラー)を防ぐ方法として、一番有名なのは、「指差喚呼」ですね。JRの運転手が信号や停車駅などを確認する時、指差しして、「~~よし!」とかってやるやつです。
 これは年をとると、忘れっぽくなりますけど、忘れ物防止にもけっこう役に立ちます。

 同じように、「コメンタリー・ドライビング(ブツブツ運転)」だとか、「役割交換ロールプレイ」などもHEの防止に役立ちます。

 しかし、ある職場(最近民間になった)で行っている「お立ち台」は、事故があった人をみんなの前でさらし者にすることらしいのですが、HEの予防にはなんの役にも立ちません。単なるハラスメントです。
 なぜなら、「事故を起こしました。二度と起こさないように気を付けます」で済ませてしまうと、「どういう場面で、どういう原因で事故が起こったか」、「何に気を付ければ防止できるのか」が、さっぱり分かりませんし、情報の共有化もできないからです。

 ということで、じゃんじゃん。

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