シリーズ 労働安全衛生とは その3 安全配慮義務2015年07月22日 15:35

● 労働安全衛生とは?

 まず、「労働契約」は使用者と労働者が締結するものです。
 この契約によって、労働者は労働力を使用者に提供することになります。
 一方、労働力の提供を受ける使用者には、労働者が「安全」で「衛生的」に働けるような環境をつくる「安全配慮義務」が発生します。労働者は命まで提供しないからです。
 そこで、職場の安全衛生のレベルは労働安全衛生法によって、安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会が「決める」のではなく、チェックすることになります。あくまでも職場の安全確保は使用者の責務です。

 これを正確に表現すると「使用者(雇用者)と労働者(被雇用者)の関係は、労働と賃金の関係ですが、労働契約の条件である、労働時間や賃金制度、雇用期間、職業訓練、災害補償などは「就業規則」で定めます。(労基法15条 労働条件の明示 89条就業規則)。その中に安全衛生も当然含まれます。
 労働者の労働力を使うためには、安全で衛生的な職場が保障されなければ、命をかけて働くことになり、そんな職場には今時だれも来ません。これを「安全配慮義務(労働契約法5条、労働安全衛生法71条2項)」と言います。従って、職場の労働安全と労働衛生は使用者の義務となります。」と言うことになります。

 ここでいう「使用者」とは、社長だけではありません。民法715条では「使用者等の責任」となっていますから、社長はもちろん、管理監督者の全員、そして、安全配慮義務としては、平社員であろうと、他人に指示する業務内容であれば、負うことになります。

● 安全配慮義務の構成要件
 「安全配慮義務」の概念は広がりつつあります。単に雇用契約に限らないで、病院や介護施設においても、患者・入所者とは双方向で、課せられます。
 その構成要件は、
 ①物的環境の整備(川義事件)
 ②予防・回避措置=安全衛生教育(安衛法66条)
 ③危険発生=操業停止などの措置(私傷病含む)
 ④(長時間労働等の)働かせ方(電通事件)
 とされています。
 なお、パワハラ・セクハラなどのハラスメントは「職場環境配慮義務違反」という労働安全衛生法違反(66条、仙台セクハラ事件)です。
 
 これらは法的な観点ですが、職場的には、OSHMS(労働安全衛生マネジメントシステム)やツールとしてのリスクアセスメント(RA)が有名です。
 しかし、これらは相当規模の企業(おそらく3千人以上)でなければ、具体的には労働安全衛生のセクションが明確な企業以外では、実現不可能なシステムです。
 しかし、全面導入された英国での調査でもOSHMSは労働災害の減少に有効であると認められていますから、なんとかならないかと思って取り組んだのが、労働科学研究所と労働国際財団(JILAF)の共同による「POSITIVEプログラム(労働組合が主導する労働安全衛生プログラム)で、北海道では、すでに5回実施しています。

比較的成功していると思われるOSHMSとしての共通点は、
① すぐの改善を目指す
② 自分自身や職場の経験に基づく
③ 低コスト改善に注目する
④ グループワーク(職場・仲間の話し合い)によって改善する
であると指摘されています。(労研・吉川)

 そこで、いきなりの結論(1回目)で恐縮ですが、「システムを作っても動かなければ役に立たない。要は安全衛生委員会が機能するかどうか」ということにさせていただきます。
 取り急ぎ、じゃんじゃん。

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