シリーズ 睡眠について その52015年09月17日 10:00

◎ 朝型人間と夜型人間

 よく言われるように、人の生活スタイルは朝方と夜型の二種類に分けることができます。
 一日の生活サイクルが平均よりも前にずれていて、早寝早起きの習慣がある人を「朝型人間」と呼び、サイクルが後ろにずれて夜更かし朝寝坊が身についている人のことを「夜型人間」といいます。

 朝型の人はすっきりと気持ちよく目覚めて、毎朝きちんと朝食も食べます。午前中から頭はフル回転、バリバリと仕事をこなすエネルギッシュなタイプです。血圧は高めで食欲もあり、何事にも積極的・行動的な性格で、あまり細かいことにこだわらない大らかな一面もあります。朝が早いために、比較的早い時間に眠くなるため、夜更かしは苦手です。

 一方、夜型の人は血圧が低めなこともあり、朝起きるのがとにかく苦手。胃腸があまり強くないので朝食を食べないことが多く、午前中はいまひとつ仕事の効率が上がりません。朝型と比べると、消極的・内向的な性格の人が多く、何事も即行動の前にまずはじっくりと考える性格です。しかし、午後からはようやくエンジンがかかり、特に夕方から夜にかけては絶好調になるため、仕事に遊びにとつい夜更かしをしてしまいがちです。また、神経質な一面もあり、心配事があるとなかなかそれが頭から離れず、夜も眠れなくなることがあります。

 短時間睡眠者と長時間睡眠者の二種類の人がいるとの同じように、もともと生まれながらの体質や生活環境などによって、朝方か夜型かが決まるといわれています。遺伝によって先天的に脳内の睡眠物質であるセロトニンの分泌量が少ないと夜型、多いと朝型になるという傾向があるようです。また、一日の中の体温変化のサイクルも朝型か夜型かを決める大きな要因となります。
 人間の一日の正常なサイクルは24時間ですが、夜型人間の人はこのサイクルが正常な人と比較して数時間うしろにズレてしまっているわけです。
 サイクルそのものは24時間と正常で、それがそっくり数時間ズレているだけであれば、それほど深刻な問題ではありません。しかし、不規則な生活や過度のストレスによって、サイクルの長さそのものが24時間でなくなっている人がいます。サイクル自体が狂ったり不規則だったりすると、疲労感がいつまでも抜けず、食欲もなく憂鬱な気分が続くなど、さまざまな障害が出てきます。
 夜型人間は不規則な睡眠時間の変化にうまく対応する力があり、時差ぼけにも強いという特徴があります。朝型の人は急な残業などによって生活時間帯が遅れてしまうと、寝る時間が遅くなってしまいますが、目が覚める時間はいつもと変わらないために寝不足気味になります。寝る時間が遅かったから、起きる時間も遅くする、といった自在な調整ができないのです。朝型の人はこのように自分の生活サイクルに対して非常に忠実であるために、睡眠時間の変化に対する順応力は弱いと言えます。

◎ 朝型人間になりたい!

 人生を歩んでいく中で、人はさまざまな要因で朝型から夜型へ、あるいは夜型から朝型へ、とそのライフスタイルを変更することがあります。実は朝型になりたいと思っている夜型の人は少なくないかもしれません。ずっと夜型の生活を送っている人が、一念発起して朝型に切り替えることはできるのでしょうか。
 朝型、夜型は生まれつきのもので一生変わらない、というわけではありませんから、夜型から朝型へ切り替えることは可能です。朝型から夜型への切り替えと比較すると、夜型から朝型への切り替えは、相当の努力と忍耐が必要になるでしょう。毎日少しずつ体をならしていき、ゆっくり時間をかけて自分の生活リズムを変えていくわけですが、強いモチベーションを持ち続けることが成功のカギです。つまり、たとえば「朝早く起きて、日頃できない読書をしたい」「毎朝1時間ずつ勉強して、資格試験に合格したい」「忙しかったせいでしばらく離れていた趣味を再開したい」など、自分は朝型になって何がしたいのか、という理由を明確にして自分自身を奮い立たせることが大切なポイントになるでしょう。

■朝型に切り替える秘訣は「早起き」から
 朝型に切り替えようとすると、たいていの人は「じゃあ、まず夜早く寝るところから始めよう」と考えます。しかし、もともとが夜型の人ですから、夜はどちらかというと頭が冴えてくる時間帯ですから、急に早く寝ようとしてもすぐに寝られるはずがありません。
 理想的で健康的な睡眠サイクルを取り戻し、朝型人間に切り替えるためには、早く寝ようと頑張るよりも、まずは早く起きることから始めたほうが簡単でスムーズです。いつもよりも朝早く起きることは最初は苦痛ですが、思い切って起きてしまい、窓を全開にして太陽の光をたっぷりと浴びれば、すぐにスッキリとした気分になるでしょう。また、早く起きたことで自分の時間が手に入るのもうれしい点です。
 早起きをすると、メラトニンという睡眠ホルモンの分泌がいつもよりも早く始まるので、必然的に早い時間に眠くなってきます。いきなり毎日起きる時間を早くするのが厳しいという人は、週に一度でもいいので、早起きにチャレンジしてみてください。だんだんと慣れてきて、生活サイクルが朝方に切り替われば、もはや早起きは苦痛ではなく、生活の自然な一部となるでしょう。
 このようにして、早起き⇒早寝⇒早起きというサイクルを繰り返し体に覚えさせれば、数週間で朝型人間に生まれ変わることができます。

◎ 金縛りは心霊現象ではありません

 意識はハッキリしているのに、手足を動かそうと思ってもまったく体が言うことをきかない、といういわゆる金縛りの経験がある人は決して少数派ではありません。中にはこれを心霊現象だとか幽霊のたたりや呪いだと考えて恐れる人がいますが、金縛りは決して心霊現象ではありません。
 脳の動きが活発なのに、体の筋肉は活動を休止している睡眠状態をレム睡眠といいます。このレム睡眠の時に何かのきっかけで目が覚めてしまうと、意識がハッキリしているのに思うように体が動かないことがあります。筋肉がだらっと弛緩した(ゆるんだ)状態であるために、「動け」と脳が指令を出しても筋肉には伝わらず、自分の意思ではまったく動かすことができないのです。これが金縛りの正体で、睡眠医学では睡眠麻痺と呼ばれています。時間的には長くても1~2分程度です。焦る必要はまったくないので、特に気にせず体が動くようになるのを気楽に待ちましょう。慣れてくると「ああ、また金縛りがきたな」と冷静に受け止めることができます。
 通常であれば、眠りから目が覚めて覚醒状態となれば筋肉にも自然と力が入るようになり、思ったとおりに体を動かすことができます。しかし不規則な生活や過度の肉体疲労、ストレスがたまった状態が続くと、覚醒するということと筋肉の動きがうまくかみ合わず、不整合を起こしてしまうことがあります。霊が体の上に乗っかって重くて動けない心霊現象や、たたりのしわざではなく、原因は自分自身にあるのです。
 金縛りは、眠りに落ちる直前や明け方に目覚めた時など、覚醒と睡眠のスイッチの切り替えがうまくいかなかった時に起きやすいようです。睡眠のリズムが一定でない人、徹夜が続く人、昼夜交代勤務によって寝る時間が毎日違う人は、金縛りにかかりやすいタイプだといわれています。 
金縛りには特に男女差はないようですが、生活サイクル(睡眠サイクル)が不規則になりがちな若い人に起こりやすく、睡眠不足やストレスがたまってきた時に特に発生します。思春期から青年期にかけて比較的発生しやすいようですが、中高年になってからや子どもでも経験する人もいます。昼夜交代の勤務時や海外で時差ぼけになっている時も、金縛りになる条件が整っています。規則的な睡眠をこころがけ、一定の生活サイクルを取り戻せば、自然と金縛りはなくなるはずです。

◎ 寝相でわかる性格判断

 睡眠中の動きは、その人の本能や本性が素直に表れるために、寝相のタイプによって、だいたいどのような性格の人なのかわかります。

1.あおむけ
 自分に自信のある人は、仰向けで堂々と大の字で寝る人が多いようです。大スターや成功者もこのタイプが多いと言われています。すべてのことに対して開放的、積極的に取り組むことができる人です。個性的で自信家の人が多いようです。
2.うつぶせ
 どちらかというと保守的・消極的な性格で、小さなことにこだわる神経質なところがある人が多いようです。また、時間に正確な人が多いと言われています。
3.からだを丸める
 母親のおなかの中の胎児のように、体全体を丸めて寝る人は、世間や他人に対して心を開くことができず、自己防衛本能が強いタイプです。人生をエンジョイしようという前向きな気持ちが比較的弱く、まずは自分を守るという極めて内向的な性格だと言えるでしょう。
4.横向き
 バランスのとれた性格で、非常に安定した性格の人です。世間や他人との距離のとり方が上手で、まわりの環境にうまく順応してしまうタイプです。

◎ 「羊が一匹・・・」では眠れない

 頭の中で羊を数えていると、だんだん眠くなってくるという説が昔からあります。ところが、これを真に受けて実際試してみたけれど、100匹を過ぎても眠れずかえって頭が冴えてしまった、という体験をした人もいるかと思います。実はこのやり方は、「日本語では」うまく機能しないのです。
 この方法はもともとイギリスから入ってきた入眠方法だと言われていますが、英語だからこそうまくいく仕掛けがあるのです。
 羊は英語でsheep(シープ)です。これは眠るという意味のsleepと音感が近いため、頭の中で羊を数えながら何度も何度もsheepと繰り返していると、だんだん発音があいまいになってきてsleep(眠りなさい)に近くなります。sleepと繰り返し自分に言い聞かせる状態となり、いわゆる自己催眠状態となります。
 また、はじめの頃はsheepの「p(ぷ)」の音をはっきり発音していたとしても、だんだん疲れてめんどくさくなってくると、pの音がなくなって、「シー、シー」の連続になってきます。この発音をしていると、自然と体の力が抜けてきます。こうして少しずつリラックス状態となって眠れるようになるという仕組みなのですが、これはあくまでも英語だからこそ通用する方法です。日本語の「ひつじ」を何度言っても、リラックス効果は期待できません。100匹までいっても、200匹までいっても、眠くならなかったのはこうした理由だったのです。
 もう一つ眠れない理由があるとすれば、羊という動物そのものです。犬や猫と違って、日本人にとって羊はそれほど身近な存在ではありませんから、羊の姿がすぐにハッキリとイメージできないのです。羊ってどんな形だったかな、と思い出そうとすることで、かえって脳が活性化してしまっているのかもしれません。とにかく、羊に頼るのはもうやめたほうがいいでしょう。

◎ 睡眠不足は重大な事故を引き起こす

 当たり前のことですが、睡眠不足がたまっていると、昼間に強烈な眠気に襲われることがあります。人間の睡眠・覚醒サイクルの関係で、午後2時前後に眠くなるのは誰にも起きる自然なことですが、睡眠不足の時には特に眠気が強くなります。起きていなくてはいけない、という意識とはうらはらに、眠気は容赦なく襲ってきます。このような本格的な睡魔の攻撃にあってしまうと、人間が必死に抵抗しても限界があります。ちょっとだけ目を閉じてみよう、と考えたが最後、数秒間の瞬間的な眠りが発生します。これをマイクロスリープといいます。マイクロスリープは時には1秒や2秒という非常に短い時間であるために、本人は眠っているという実感がありません。しかし、意識は確実に遠のき、集中力はゼロに近い状態になっています。思考力、判断力も著しく低下し、生産性も当然大きく落ちることになります。
 オフィスでパソコン作業をしている時にマイクロスリープが発生しても、せいぜいガクっと動いて回りに気づかれて気まずい思いをする程度で済みます。しかし、これが重機を操縦して危険な作業をしている場合や、乗客の生命を預かっているバスの運転や飛行機の操縦をしている最中であったら、取り返しのつかない致命的な事故に直結することが十分ありえます。
 マイクロスリープだけでなく、睡眠時無呼吸症候群という病気にかかっている場合も、上記のような危険な事故につながるような危険性があります。アメリカのスリーマイル島で起きた原子炉爆発事故(1979年)チェルノブイリ原子力発電所の放射能漏れ事故(1986年)、アラスカ沖巨大タンカー座礁事故(1989年)、スペースシャトルのチャレンジャー号爆発事故(1986年)などは、作業にあたった現場のスタッフが睡眠時無呼吸症候群によって睡眠不足となっていたことが原因だったと考えられています。
 こうした海外の大事故のニュースを見ても、つい自分の生活とは直接関係がないと考えてしまいがちですが、決してそんなことはありません。日本国内においても、バスやタクシーの運転手や新幹線の運転士が居眠り運転をして事故になったという事例は複数報告されていますから、自分自身がいつそうした事故の被害者にならないとも限らないのです。

これで「睡眠の基礎」が終わりました。
次は、「不眠症とは」です。じゃんじゃん。

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