シリーズ 睡眠について その9 昼寝・仮眠・居眠り2015年09月28日 10:40

◎ 昼寝は人間にとって当たり前の習慣

 昼食後に昼寝をする習慣がある人間は、全世界的に見ると約50%もいるといわれています。自然な眠りの欲求に逆らわない適度な昼寝は、疲労回復やストレス解消に大きく効果があります。シエスタ(スペイン語で昼寝の意味)の習慣があるスペインやイタリア、あるいは地中海諸国や中南米の地域の人たちは、毎日昼寝をしていないアメリカ人や日本人と比較すると、のんびりしていてストレスが非常に少ない心身ともに健全な生活を送っています。
 アフリカやアジアの一部など、熱帯・亜熱帯で生活する民族にとって、昼寝は当たり前の習慣となっています。これは一日のうちで一番暑い時間帯は、体力を消耗するのでおとなしく寝ていたほうが良い、という祖先からの知恵によるものだと考えられます。

※シエスタ 昼食後はいったん自宅に帰り、ワインを飲んで休息したり昼寝をするライフスタイルのこと。このため午後1時~4時前後は閉まっている店も多い。昼寝を終えると、4時から7時まで働くというスタイル。官公庁や学校なども例外ではなく、この習慣のもとに国全体が動いています。

 犬や猫はとてもよく眠ります。(猫は一日に15時間も眠ります)特に食事の後は横になって眠っていることが多いようです。人間も動物とまったく同じで、昼寝をするように遺伝子にプログラムされているのです。
 昼食後に眠くなる経験から、昼食の消化と午後の眠気が関係していると一般的に考えられています。しかし、朝食や夕食の後すぐに眠くなるということがないことからも、どうやら昼食とは関係がないのではないかと考えられるようになってきました。人間は従来から、昼食と関係なく午後2時~3時前後になると眠くなるようにできている、という研究者もいます。もしそれが本当だとすれば、疲れたから昼寝をする、というのは人間として生物学的にも正しい行動だと言うことができます。

 動物とまったく同じように、もともと人間も昼寝をするように体ができているのかもしれません。ただ、昼寝をすることが社会的に許されていないから無理をして起きているだけに過ぎないという見方もできるでしょう。
 バスやタクシーの運転手さんたちも、午後2時前後に強烈な眠気に襲われているという調査があります。人の命を預かっている職業の人は、上手な昼寝の方法について特に真剣に考えてほしいものです。

■昼寝好きだった歴史上の偉人たち

 大きな偉業を成し遂げた人物には、昼寝好きの人が少なくありません。3時間しか眠らなかったとして有名なナポレオンも、実際は人に見られないところで頻繁に昼寝をして元気を回復していたようです。エジソンも同様に短時間睡眠者でしたが、やはり頻繁に昼寝の時間をとっていたといいます。
 相対性理論を発表したアインシュタインも昼寝をうまく利用して、創造的思考を磨いていたと言われています。
 ケネディ、レーガン、クリントンといった歴代のアメリカ大統領も、よく昼寝をすることで有名です。

◎ 昼寝は20分がベスト

 午後の眠くなってくる時間に昼寝や仮眠を取ることは、頭をすっきりリフレッシュさせるのにも非常に有効で、集中力がアップします。では昼寝や仮眠はどのくらいの長さが良いでしょうか。5分や10分では、なかなかリフレッシュできません。いちおう仕事中ですから、1時間も2時間も寝るわけにはいきません。

 昼寝や仮眠の長さは、15~20分がベストです。30分以上眠ってしまうと、副交感神経系にスイッチが切り替わり、昼寝を通り越して熟睡になってしまいます。一度熟睡に入ってしまうとスッキリ起きることは難しくなり、無理に起こされると非常に不愉快な寝不足感を味わうとになります。

 熟睡を防ぐためのワザとして、昼寝の前にコーヒーや紅茶を飲むという方法があります。コーヒーや紅茶に含まれるカフェインの効果が出てくるのは、飲んでから約30分後です。ですから昼寝に入るまでにカフェインを取り入れておくと、起きなければいけない頃には効いてきて、スッキリと起きることができます。10分ほどコーヒーや紅茶を飲んでリラックスし、残り15~20分程度を仮眠にあてる、というのが理想的です。
 また、昼寝や仮眠は午後3時までに終わらせてください。3時を過ぎてから昼寝をすると、夜になってから眠気を感じなくなってしまうからです。
 昼寝を上手に活用すると、判断力を高めたり、作業効率がアップしたり、血圧が安定するなど多くの面で生活や仕事の質が高まります。午後に軽く昼寝をとれる環境にある人は、昼寝を毎日の習慣にしましょう。昼寝をしたりしなかったりすると体が混乱して、大切な夜の睡眠のリズムまで崩してしまうからです。週末に寝だめをするよりも、毎日少しでも継続的に昼寝の習慣をつけたほうが、健康にとってずっとプラスです。
 習慣的に昼寝をしている人は、そうでない人に比べてアルツハイマー病の発症率が著しく低いという調査結果もあります。

◎ 社員が昼寝をする会社は伸びる!

 人は、朝起きてから8時間ほどすると眠くなるものです。これは太陽がもっとも高く暑い時には、エネルギーの消費をおさえるために体を休めようとする人間の本能によるものだといわれています。多くの人が6時~7時くらいに起きると考えると、昼食後の2時か3時くらいに眠くなってくるのは自然の摂理なのです。これはひとつの生理現象なのですから、この時間すらもフルパワーで仕事をしろ、というのは本来無理があるわけです。

 何か仕事に集中していれば午後の眠気を感じませんが、単純作業をしていたり退屈な会議に出ていたりすると、午後2時~3時前後は非常に眠くなることは、経験した人が多いかと思います。そんなときに眠りに落ちるのを必死にがまんして、仕事をしているフリをするくらいなら、いっそ堂々と15分ほど居眠りをしたり仮眠をとったりして、すっきり目覚めてから仕事を再開したほうが何倍も効率的でしょう。

 上司や会社がこうした考えに賛成してくれる幸せな環境にいる人は、是非昼寝・居眠り・仮眠を毎日の習慣にしましょう。カウチのように横になれるものがあればベストですが、自分のデスクにおでこを乗せて目を閉じるだけでも十分効果的です。そうした仮眠グッズも売っていますから、自分にあったものを見つけるといいでしょう。

 仮眠や昼寝をすることが許されない職場環境の人はどうすればよいでしょうか。空いている会議室があればベストですが、最悪の場合はトイレでも、15分ほど静かに座って目を閉じるだけでも疲労回復に大きな効果があります。周りから見ればサボっているように見えますが、この短時間の仮眠や居眠りで業務効率がアップするのであれば、決して悪いことではないはずです。

 眠いのに無理して起きて仕事をするよりも、ちょっとの間だけ居眠りや仮眠をして、心身ともにリフレッシュしたほうが、判断ミスや事故が少なくなることは明らかです。会社が制度として昼寝や仮眠を推奨するような仕組みができれば、会社全体の大きな効率性アップにつながることになるでしょう。それが積み重なれば日本全体の活力アップにもつながると言ってもいいかもしれません。
 そのためには、昼寝を悪徳とする古くからの社会の考え方を少しずつ変えていくしかないでしょう。会社が変われば社会が変わりますし、社会が変われば会社は変わるはずです。

 私も昼寝をするようにしています。事務所にはそのスペースもあります。
 ここにあるように、コーヒーを飲んでから15分程度(12:45~13:00)寝ていますので、この時間の訪問や電話はご遠慮ください。
 なんちゃって、じゃんじゃん。

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