「痛み」の正体と治療2020年01月24日 13:46

 腰痛や通風などの「痛み」は、今のところ血圧計のように計測する簡易な方法はない。したがって、「痛い」人の訴えや生活への支障で評価されることになるが、いずれも客観的な評価は難しいため、正確な治療ができにくい。

 一般的には鎮痛作用のある薬剤が使用されるし、痛みを脳に伝える神経のブロックもある。しかし米国等では、鎮痛で使用されたモルヒネやオピオイドの常習化が問題になってきている。一説には米国で170万人が乱用者で毎日130人が乱用の結果として死亡しているという。
 その現実に対応するため、鎮痛薬の開発とともに、「痛み」の解明についても医学的な解明が進んでいる。

 「痛み」は、いままで何かの原因があってその症状の一つとされてきたかもしれないが、最近は、「痛み」それ自体が病気の一種と考えられるようになってきた。例えば熱いものに触ったら火傷するが、その結果痛みが脳に伝わり認識される。しかもこの経験は傷が治っても神経の過敏として無害な刺激に痛みとして感知されることがある(中枢感作)こともわかってきた。

 また、痛みには「痛い」か「痛くない」かだけではなくて、環境により快感に代わる痛みや、不安な環境では増幅することもわかってきた。

 まったく痛みを感じない「無痛症」というものもある。遺伝子の変異によって痛みを抑える神経伝達物質が分解されず、体内に充満することにより痛みが感じられない体が出来上がるわけだが、この症状の遺伝子的解明により新しいタイプの鎮痛剤が開発される可能性も出てきた。

 一方で、こういう研究もある。
 英国で50肩の300人を①骨棘(こつきょく、骨のとげ)の手術をする群、②手術をしたと思わせる群に分けてみたところ、①と②の患者は同程度の割合で肩の痛みが軽減されたと言い、いわゆる「プラセボ効果」が確認されたという。つまり痛みは相当に感覚の間違いであることが多いといえる。「期待」という良薬も痛みには有効らしい。

 また、脳深部刺激療法(DBS)というものもある。これは感情の処理に係る脳の領域に電極を埋め込み、微弱な電流を流すことで、痛み自身は変わらなくても、脳の反応が「痛み」と「痛みでない」を判別することによりQOLが改善するという。
 また、VR(バーチャルリアリティー)も痛みから注意をそらす効果があるという実験も報告されている。

 痛みについて大事なことは、睡眠などQOLへの影響をどのように抑制するかということではないだろうか。

 次回はその「睡眠」について。
 じゃんじゃん。

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