現代人の睡眠 1 ― 2020年01月27日 11:11
2017年のノーベル医学生理学賞を受賞した3人の科学者nの受賞は、「概日リズム」という約24時間に生物が行う活動と日照の関係が同期される仕組みの研究に対してであった。
「概日リズム」とは、地球上の生物は地球の自転によってもたらされる約24時間の明暗周期にその活動を同調させており、このような生物リズムは、概(おおむね)1日周期という意味で概日(がいじつ)リズムと呼ばれ、単細胞生物や培養細胞株あるいは各組織を構成する細胞の一つ一つが概日時計を有している。
肝臓と心臓においては、発現する全遺伝子の約10%が時計遺伝子で、これが安定的に発現振動することで、約24時間周期の睡眠/覚醒、血圧、体温、ホルモン分泌など多くの生命活動の調整が行われている。また、概日リズムの破綻や概日関連遺伝子の多型は高血圧や糖尿病、睡眠障害など多くの疾患との関連性が報告されている。
しかし現代はこの概日リズムと無関係なサイクルで生活されており、研究者は「全世界で睡眠リズムの悪影響について実験しているようなもの」という。
良い睡眠は複数の段階からなる睡眠サイクルを4~5回繰り返す。
第1・2段階は、眠りにおちながら、脳が活動をつづけ、新たに得た情報の取捨選択という編集作業を行う。
今まで睡眠時には脳が活動低下すると考えられてきたが、実際には覚醒時と違う動きをしている。
まず、概日リズムに合致する生活をしていれば、第1段階として、夜中の12時前後に「メラトニン」という睡眠ホルモンが分泌され、脳神経は睡眠に向けた統一された動きが始まり、 ある瞬間から第2段階が始まって、日常の情報集めから情報の整理に切り替わる。これは一晩の睡眠の半分程度になる。
ただし、常に賢い選択が行われるとは限らない。ゆえに、命にかかわるようなひどい経験をしたときは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に結び付けないためには、その経験後6~9時間程度起きたままにしていないと、ひどい経験が睡眠による記憶に強くとどまってしまうことになるようだ。
どんな動物、たとえ原始的な構造をもったものであっても、何らかの形で睡眠をとる。脳の半球が片方ずつ睡眠をとるとか、飛びながら眠る鳥は滑空しながら、単細胞生物にも一日にはっきりとした周期がみられる。睡眠は身体のサイズにかかわらず、どんな生物にも必要で、どんな生物でも24時間休みなしに活動することはできない。
人間はデルタ波という振幅の大きい脳波が出ているときに深い眠りをしていると考えられる。第3・4期の睡眠だが、この段階で成長ホルモンが最大に分泌される。免疫系を含め身体のすべてに生涯にわたって必要なホルモンだ。
飢餓状態の動物よりも睡眠できない動物のほうが早く死ぬとさえ言われている。
睡眠は認知症の予防にも関係している。睡眠中は脳の一部が覚醒時の60%にまで収縮し、そのできた隙間に脳の老廃物(アミロイドβなど)が排出され、体外に出るため、認知症の予防になる。睡眠によって脳が洗われると言えるだろう。
ところで、第4段階といわれるデルタ波が半分を超える深い眠りの状態は、昏睡や脳死と変わらない状態といえる。この状態は多くても30分程度らしいが、あまり長くとどまらないほうがよさそうな状態ともいえる。
人間やほかの動物は進化を通じて睡眠をいつでも中断できる能力を持った。子供の泣き声が聞こえた時や肉食動物の足音が聞こえるなど優先すべき事態があれば、睡眠のどの段階にあっても中断できる。
問題は24時間活動が続く現代では、この能力によって生命を脅かす事態でなくても睡眠が中断されやすい(目が覚めてしまう)ことだ。
「いつでも、どこでも、すぐに眠れる」と自慢する人がいるが、明らかにその人は睡眠不足である。
本日ここまで。次は「レム睡眠」について
じゃんじゃん。
「概日リズム」とは、地球上の生物は地球の自転によってもたらされる約24時間の明暗周期にその活動を同調させており、このような生物リズムは、概(おおむね)1日周期という意味で概日(がいじつ)リズムと呼ばれ、単細胞生物や培養細胞株あるいは各組織を構成する細胞の一つ一つが概日時計を有している。
肝臓と心臓においては、発現する全遺伝子の約10%が時計遺伝子で、これが安定的に発現振動することで、約24時間周期の睡眠/覚醒、血圧、体温、ホルモン分泌など多くの生命活動の調整が行われている。また、概日リズムの破綻や概日関連遺伝子の多型は高血圧や糖尿病、睡眠障害など多くの疾患との関連性が報告されている。
しかし現代はこの概日リズムと無関係なサイクルで生活されており、研究者は「全世界で睡眠リズムの悪影響について実験しているようなもの」という。
良い睡眠は複数の段階からなる睡眠サイクルを4~5回繰り返す。
第1・2段階は、眠りにおちながら、脳が活動をつづけ、新たに得た情報の取捨選択という編集作業を行う。
今まで睡眠時には脳が活動低下すると考えられてきたが、実際には覚醒時と違う動きをしている。
まず、概日リズムに合致する生活をしていれば、第1段階として、夜中の12時前後に「メラトニン」という睡眠ホルモンが分泌され、脳神経は睡眠に向けた統一された動きが始まり、 ある瞬間から第2段階が始まって、日常の情報集めから情報の整理に切り替わる。これは一晩の睡眠の半分程度になる。
ただし、常に賢い選択が行われるとは限らない。ゆえに、命にかかわるようなひどい経験をしたときは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に結び付けないためには、その経験後6~9時間程度起きたままにしていないと、ひどい経験が睡眠による記憶に強くとどまってしまうことになるようだ。
どんな動物、たとえ原始的な構造をもったものであっても、何らかの形で睡眠をとる。脳の半球が片方ずつ睡眠をとるとか、飛びながら眠る鳥は滑空しながら、単細胞生物にも一日にはっきりとした周期がみられる。睡眠は身体のサイズにかかわらず、どんな生物にも必要で、どんな生物でも24時間休みなしに活動することはできない。
人間はデルタ波という振幅の大きい脳波が出ているときに深い眠りをしていると考えられる。第3・4期の睡眠だが、この段階で成長ホルモンが最大に分泌される。免疫系を含め身体のすべてに生涯にわたって必要なホルモンだ。
飢餓状態の動物よりも睡眠できない動物のほうが早く死ぬとさえ言われている。
睡眠は認知症の予防にも関係している。睡眠中は脳の一部が覚醒時の60%にまで収縮し、そのできた隙間に脳の老廃物(アミロイドβなど)が排出され、体外に出るため、認知症の予防になる。睡眠によって脳が洗われると言えるだろう。
ところで、第4段階といわれるデルタ波が半分を超える深い眠りの状態は、昏睡や脳死と変わらない状態といえる。この状態は多くても30分程度らしいが、あまり長くとどまらないほうがよさそうな状態ともいえる。
人間やほかの動物は進化を通じて睡眠をいつでも中断できる能力を持った。子供の泣き声が聞こえた時や肉食動物の足音が聞こえるなど優先すべき事態があれば、睡眠のどの段階にあっても中断できる。
問題は24時間活動が続く現代では、この能力によって生命を脅かす事態でなくても睡眠が中断されやすい(目が覚めてしまう)ことだ。
「いつでも、どこでも、すぐに眠れる」と自慢する人がいるが、明らかにその人は睡眠不足である。
本日ここまで。次は「レム睡眠」について
じゃんじゃん。
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