第22回産業ストレス学会の報告 12014年12月03日 16:30

 大阪で開催された標記の学会に参加しました。
 まあ、面白かったというのが感想です。
 それより、大阪という街のエネルギーに圧倒されて、「ここは私の住むところではない」という感じで帰ってきました。
 特にどこか寄り道もせず、会議にはびっちり参加してきました。
 これから、おそらく10回くらいにわたり、報告しますが、全て私のメモによる「要約」とか「概要」、「感想」などですので、お間違えの無いように。

<「箱づくり法」から見た求職中のうつ病患者の作業特性と主観的体験内容の特徴>

{目的] メンタJレヘルス不調で休職した場合、職場に復帰する際には、業務(作業)遂行能力の回復が不可欠である。しかし、現在の復職支援では、作業遂行能力の評価や作業特性の把握について十分に検証されていない。そこで作業遂行能力検査としての「箱づくり法Jを実施し、休職中のうつ病患者の作業特性と主観的体験内容の特徴を分析した。
[対象と方法] 当研究所を利用するうつ病患者を対象として、本研究の説明を口頭及び書面にて行い、研究の同意が得られた21名(平均年齢40.1±6.8歳、男性15名・女性6名)を対象者とした。なお本検査は、本人の事前の申し込みによって無償で実施した。方法は、「箱づくり法j の実施マニュアルに沿って、個別に実施した。
[結果] 検査の全所要時間は平均41.6±6.1 (平均±SD)分。箱制作時間は平均16.2±3.3分で、あった。客観的な評価尺度の機能別遂行得点では、対人領域に比べ、課題領域の得点が低く、特に一般成人に比べると「手順段取り」が3.7点/5点。「状況対処」3.9点/5点で低かった。
 作成された箱の他者採点は、60.7±10.4点であった。主観的な評価尺度としての体験内容は、箱制作の「難しさ」や「予測判断の不全感」「不快気分」が高かった。自己採点は71.0±11.1点であった。
[考察} 本対象者の作業特性として、手順段取り力や状況対処能力が低く、箱制作時間が若干長い。実際に制作された箱の得点も一般成人に比べると低く、作業遂行能力の低下が示唆される。本人も難しさを感じており、不快気分も強く感じている。しかし、援助を求める気持ちが低く、状況を回避したい気持ちも低いため、苦手な作業を続け困難な状況が継続することが示唆された。また、疲労感を充分に感じられない(過労状態)ため、休息を取るという対処行動にもつながらないと考えられた。今回は休職中のうつ病の作業特性について、主観的に傾向を見るにとどまっている。今後は、事例数を増やし客観的に分析していく必要がある。
・検査は、別室(個室)で実施し、所要時間は約1時間
・検査者は、作業療法土

・労働者のメンタルヘルス不全、休職、職場復帰の問題は産業精神保健領域において注目される問題の1つである。
・メンタルヘルス不全は、特に気分障害の発症が多い。
・うつ病の症状には思考障害があり、そのことが業務遂行の阻害因子と考えられる。
・そのため職場復帰には業務(作業)遂行能力の回復が不可欠である。
・しかし、現在のうつ病における復職支援プログラムでは気力や認知機能(思考のとらえ方)の回復に主眼が置かれており、作業遂行能力の評価は不十分で、作業遂行特性は明らかにされていない。

<箱づくり法とは>
 実際に箱を作り、ふりかえるという一連の作業を通じて、対象者の作業遂行能力・対人関係能力などを評価する、準構造化された作業面接である。
 作業体験を共有することによって、客観的指標と主観的体験内容に基づき、具体的な援助方法を対象者とお互いに確認することが出来る。

<箱づくり法の概略手順>
l. たて、横、高さ、がそれぞれ5センチの箱を実際に組み立てる。 完成に必要な手助けや見本もあり、時間制限はないが時間を計るので『早く、きれいにつくる』。途中での休憩やトイレは申し出てとれる。
2.客観的指標-過程別遂行得点プロフィールと機能別遂行得点プロフィール(43項目の行動観察)、工程の所要時間、完成箱の他者採点。
3.主観的指標-箱づくり体験プロフィール(83項目の自己記入式質問紙法)と主観的な箱の自己採点
 結果はダイヤグラムに示され、作業過程と結果の両面から解釈する

客観的指標-機能別遂行得点のプロフィール 0~5点
<対人領域・関係能力>
1.作品交流
2.出会い
3.二者交流
4.間合い
5.役割関係
<課題領域・作業遂行能力>
6.イメージ着手
7.手順段取り
8.可逆的思考
9.課題集中
10.状況対処

<推察>
・うつ病患者の作業特性とLて、手順段取り力や状況対処能力が低く、箱制作時間が若干長いことから、作業遂行能力の低下が見受けられた。
・箱制作に対して、本人も難しさを感じており、不快気分も強く感じている。
・能力を評価されるストレスに対して、過敏に反応する傾向が伺える。
・そのストレス状況に対して、他者に援助を求める気持ちが低く、状況を回避しようと思う気持ちも低いため、苦手な作業を続け、困難な状況が継続する傾向があることが推察された。
・自己採点と他者採点の得点に10点程度差があり、自己採点が高いことから、結果に対して自己評価が甘い傾向がある。
・加えて、一般成人他者採点が73.3であることを踏まえると、対象者の65.65点の作業遂行能力は明らかに低いと言える。
・つまり、ストレスに過敏に反応する一方で、自分の作業結果に対して、これで出来ていると思う自己認識のズレ(甘さ)がある可能性が示唆された。

<まとめ>
・うつ病患者21名に作業遂行能力検査として「箱づくり法」を実施した結果、機能別遂行得点において、「手順段取り」、「状況対処」能力が低かった。
・箱制作結果に対する自己採点が、他者採点より有意に高かった。
・作業遂行能力は一般成人と比べると低いが、自分の作業結果に対して低いとの認識は薄く、自己認識にズレがある可能性が示唆された。
・一方、ストレスに対して、過敏に反応する傾向が伺えた。

(参考)
EAP研究所-精神科ショートケア 復職支援プログラム「SPICE」
・医療法人あけぼの会のメンタルヘルスサポートサービスの1つとして、精神科ショートケアの復職支援プログラム「SPICE」がある。
•「SPICE」の対象:うつ病等により休職中の方
「SPICE]の目的:他の人達との関わりや、具体的な作業活動を通して精神機能の向上、対人関係能力の改善、作業能力の改善をはかり、よりスムーズな職場復帰、職場再適応と就労継続に結び付けていくことを目的としてしる。
・実施プログラム:「個別面接」、「ワークエクササイズ、」、『グループミーティング」や、身体表現能力の回復のための体験型の「ボディーワーク」、「リラクゼーション」さらに講義形式の「認知行動療法」、「キャリアセミナー」などを行っている。

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