シリーズ 睡眠について その13 睡眠薬2015年10月16日 09:17

◎ 睡眠薬の種類

 睡眠薬には多くの種類があり、それぞれ効用や副作用が異なります。どの種類がどのような作用があるのかをよく理解することが大切です。専門の医師とよく話し合い、自分に一番適した種類を処方してもらいましょう。
 睡眠薬は服用を始めるときも、服用をやめるときも医師のアドバイスに従ってください。眠れるようになってきたからと、勝手に服用をやめてしまうと、一種の禁断症状などの副作用が出て体調が崩れる場合があります。

主な睡眠薬の種類は以下です。

■ベンゾジアゼピン系
 現在処方される代表的な睡眠薬がベンゾジアゼピン系と呼ばれるものです。本来は不安感を取り除く抗不安薬でしたが、睡眠作用も強いために睡眠薬としても広く利用されるようになりました。脳の中でも感情を司る視床下部などに作用して、不安や緊張を取り除き、鎮静させることによって眠気をもたらす仕組みです。

【長所】
①不安、緊張を軽減する。自然な眠りに近い入眠を導くことから、睡眠導入剤とも呼ばれる。
②耐性が出にくく、数ヶ月同じ量を継続して服用しても効果が変わらないので、量が増えていくことがない。
③精神的、肉体的依存の症状が出にくい。
④服用を急にやめても禁断症状が非常に軽い。
⑤毒性が低いので、比較的安全で副作用もほとんどない。大量服用をしても死ぬ可能性がかなり低い。

【短所】
①筋肉を弛緩させる副作用がある。朝起きたときに脱力感が残る場合がある。
②翌朝まで薬の影響が残り、ふらつくことがあるので、車の運転をする人などは要注意。
③アルコールと同時に服用すると耐性や依存が発生する場合がある。

■バルビタール酸系
 バルビタール酸系は最も古いタイプの睡眠薬で、使い方を間違うと非常に危険なため現在はほとんど使われていません。
 服用が続くと禁断症状(脱力感、不安感、手の震え、幻覚、錯覚など)が出たり、精神的・肉体的な依存の症状が出やすくなります。アルコールと同時に服用すると、作用が強く表れるので注意が必要です。中枢神経系に作用するため、大量に摂取すると呼吸中枢を麻痺させるため死につながることがあります。

■非バルビタール酸系
 バルビタール酸系の欠点を改善したタイプ。睡眠作用が弱いですが、バルビタール酸系よりも気分を高揚させる作用が強いという特徴があります。バルビタール酸系よりも依存度が高く、禁断症状についても改善が見られないため、現在はほとんど使われなくなりました。

◎ 睡眠薬の使い方

 ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、飲んでから1~2時間程度で血中濃度が最大になるので、寝たい時間の1時間程度前に服用するとちょうどよいでしょう。
 服用によって注意力、集中力、反射神経などのレベルが下がるため、自動車の運転、重機の操作などの危険な作業に従事する人は睡眠薬を服用してはいけません。また、深夜を過ぎてからの服用は、薬の影響を翌日に持ち越すことになり、日常生活を送る上で好ましくありません。
 医師の指導の下、自分自身にとって効果のある適量を服用することが大切です。また、睡眠薬は常用するのではなく、大切な会議の前日など、どうしても寝なければならない時だけ利用するほうがいいでしょう。あくまでもたまに利用するという程度にすれば、より健全な眠りを手に入れることができます。
 飲む量は常に最低限が原則です。多く飲めばよりよく眠れるなどと考えてはいけません。

■医師と薬を信じる
 せっかく飲むのですから、睡眠薬の効果を信じることも大切です。「この薬は自分に合っている。よく効く薬だ」と信じるのです。医師や薬に対する不信感があると、出るはずの効果が出ないことがあります。逆に、極端な例ですが、医師と薬を信頼していれば、たとえその薬が睡眠薬ではなく単なるビタミン剤であったとしても、睡眠薬が効いたと信じてよく眠れたという実例があります。
 不眠症は心の病ですから、このような心の持ち方ひとつで効果はまったく違ったものになるのです。

■睡眠薬をやめるときの注意点
 ベンゾジアゼピン系は長期間服用を継続しても、耐性ができることは通常ありません。しかし、睡眠薬に頼らずに眠れるようになるに越したことはありません。ただし、服用を突然やめてしまうと禁断症状が出てしまう可能性があるので、注意が必要です。急に減らしたりやめたりするのではなく、ゆっくり時間をかけて少しずつ量を減らしていくことが大切です。
 一週間あるいは二週間ごとに一日の服用量をを徐々に減らしていきましょう。また、週末は飲まないようにする、一日おきにする、など工夫をこらし、より少ない睡眠薬でも眠れるように、少しずつ体を慣らしていくことが大切です。

◎ 睡眠薬の働き

 睡眠薬は中枢神経系や大脳の働きを低下させ、脳を眠りやすい状態に導くことによって睡眠を促します。一種の軽い麻酔にかかって眠らされている状態です。
 睡眠薬には、長時間作用型、中間作用型、短時間作用型、超短時間作用型といったように、効き目が持続する長さによって分類できます。この中で自分に合ったものを医師にすすめてもらうためには、あなたの睡眠について医師が質問することに対して正直に話すのが一番です。「眠れない日は週に何日ありますか」「夜中に目が覚めてしまう回数は?」「眠れなくなっている理由に何か心当たりはありますか」といった質問に、なるべく正直に答えましょう。

 睡眠薬による睡眠は、正常な睡眠とは別のものです。睡眠薬を使って眠ったとしても、充実した深い眠りを得ることはできません。また、朝に目が覚めた時も寝不足感や脱力感が残ってしまいます。心臓や肝臓に負担をかけるために、吐き気、めまい、頭痛などの症状が出る場合があります。
 また、睡眠薬も薬である以上、なんらかの副作用が出る危険性がゼロとは言い切れません。できればこれらの薬に頼らずに不眠症を治すことが大切です。「今夜も睡眠薬を飲まないと眠れない」と精神的に依存するようになるのが、睡眠薬を利用する上での一番大きな問題です。
 睡眠薬の中でも副作用の心配が少なく、比較的安心して使えるのが睡眠導入剤と呼ばれているものです。睡眠導入剤は、薬が体内に残らないのが特徴です。
 また、症状がより軽い人には、多くの場合は睡眠薬ではなく精神安定剤を使います。その名の通り、心を安定させて睡眠に導くというもので、軽度の不眠の方は精神安定剤で十分に睡眠が改善することがあります。

◎ 睡眠薬は危険ではない

 睡眠薬というと、あまり良いイメージが浮かばず、ついマイナスの偏見や先入観を持ってしまいがちです。かつて、睡眠薬は大量に飲んで自殺する手段として知られており、その悪いイメージが定着してしまったようです。副作用などに関する情報が誇大に解釈されて、犯罪などと関連して危険なものとしてイメージされるようになってきたのかもしれません。
 不眠症治療のメインはなんといってもやはり睡眠薬であり、不眠を改善させるためにアルコールに頼るくらいならば、睡眠薬のほうがずっと安全で有効だと言う専門家もいます。
 また、睡眠薬は飲んでいるうちに効かなくなり、だんだんと量が増えてしまう、というのは昔の話です。最近の睡眠薬は、副作用がなかったり、依存性が低いものであったり、耐性ができにくく服用を続けても量を増やさなくてもよいなど、進化してきています。良い睡眠薬をうまく利用するためには、それなりに知識が必要です。

 処方箋がなくても手に入るような睡眠薬を独断で利用したりすると、かえって逆効果になることがあります。睡眠薬は非常に多くの種類が用意されていて、効用や副作用がそれぞれ異なります。専門性の高い医師に相談すれば、自分の不眠の種類や原因がはっきりするでしょう。そうすれば最も自分に合った適当な種類の睡眠薬を処方してもらえます。自分に合った睡眠薬を見つけて適切に使用すれば、これ以上の不眠治療法はありません。

◎ 睡眠薬の副作用

 どんな薬にも、程度の違いはありますが、多少の副作用はあります。睡眠薬も薬である以上、何らかの副作用が出る場合があり、その出方には個人差があります。
 睡眠薬を服用するにあたっては、副作用について、正しい知識を持つことが大切です。

【睡眠薬の一般的な副作用】
 最も広く使われているベンゾジアゼピン系の睡眠薬の一般的な副作用は以下の通りです。

1.依存
 ベンゾジアゼピン系の場合、依存は出にくいと言われていますが、まったくないわけではありません。特に服用を長期に続ける場合は、注意が必要です。急に服用をやめたりすると、けいれん、指の震え、不安、幻覚、妄想、不眠などの禁断症状が出る場合があります。

2.肉体的症状
 動悸、不整脈、食欲不振、下痢、吐き気、便秘、無気力、皮膚の発疹、頭痛、全身の倦怠感、めまい、ぼんやりする、体重減少など

◎ 睡眠薬の絶対禁止事項

 睡眠薬は使い方によっては人間にとって非常に有益な薬ですが、使用法を間違えると非常に危険な面もあります。睡眠薬を利用するにあたって、絶対にやってはいけないことは以下の4点です。

■アルコールといっしょに飲んではいけない。
■指示された量以上に飲んではいけない。
■市販の他の薬と併用してはいけない。
■飲んだ後はクルマの運転はしてはいけない。

 また、妊婦の方は絶対に睡眠薬を飲んではいけません。胎児に与える影響が完全にゼロだと証明されている睡眠薬はありません。睡眠薬を常用していた妊婦が生んだ子どもは、生まれながらにして睡眠薬の中毒になっていた例が多く報告されています。不眠症で落ち着きがなく、手足が震えるという禁断症状が子どもに出てしまうことがあります。

 ん~ん。よく眠れるようになりたいけど、やはり薬なんだ。
 ん~ん、考えて服用しましょう。
 だけど、不眠で悩むより使った方がいいと思いますよ。
 じゃんじゃん。

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